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PALS(小児二次救命処置)の更新をしてきました

PALS(小児二次救命処置)の更新をしてきました

PALS(パルス)の更新を、先日京都でしてきました。

PALSとは小児二次救命処置のこと。アメリカ心臓協会(AHA)とアメリカ小児科学会(AAP)が認定している、理論とエビデンスに基づいた、重症児(小児)の救命処置講習会です。日本への導入は日本小児集中医療研究会が2002年に、最初は医師を対象に始めました。皆さんがよく耳にするBLS(一時救命処置)の日本での講習会が2003年10月なので、BLSよりも導入が早かったのです。

PALSで求められるスキルは、1.BLS(一時救命処置)スキル、2.乳児に対する心肺蘇生術(CPR)スキル、3.第一印象(PATトライアングル)評価、4.一次アセスメント(ABCDEの評価)、5.気道確保スキル、6.心リズム障害/電気的治療スキル、7.血管確保スキル、8.呼吸のケースシナリオ4つ(上気道閉塞、下気道閉塞、肺組織疾患、呼吸調節性)、9.ショックの4つのケースシナリオ(循環血液量減少性ショック、閉塞性ショック、血液分布異常性ショック、心原生ショック)、10 心臓のケースシナリオ(徐脈、心静止/無脈静電気活動PEA、心室細動VF/無脈性心室粗動VT)です。かなり多岐にわたり、重症者のモニタリングや評価だけでなく、気道、血管を確保する器具、除細動器の使用方法、循環動態を正常化する薬品の知識など、重症児を究明するためのかなり高度な知識やスキルが求められます。PALSプロバイダーコースは2日間にわたり、上記のスキルを一通り全部講習して、実技試験と筆記試験をうけ、ある一定のスキルが身についたことを確認後、2年間の期限付き認定証を発行します。

まだ天草で働いていたころの2009年8月2日、鹿児島で2日間の講習と試験をクリアして取得しました。初日の講習終了後、鹿児島の先生たちに鹿児島港の近くの奄美料理の居酒屋にのみに連れられ大量飲酒。2日目はひどい二日酔いの中で講習と試験を受けて何とか無事にPALSの試験をクリアして認定書をもらいました。PALSのテキストは5年ごとに更新されることもあり、PALSは2年で認定期間が切れてしまいます。これまで2012年10月9日、2017年3月26日と更新してきました。気が付けばもう2年です。救命を必要とするような場面にも遭遇することがないので、これまた気づけば救命法を忘れてしまっています。時間と費用が莫大にかかりますが、これでも医療に携わるものとしては、端くれだけれども最低の救命法はいつでもできないといけません。今回、たまたま京都で半日コース(普段は2日間みっちり)のリニューアルコースが、しかも休診日の火曜日にやっていることを知り、頑張って受けてきました。それでも13時から17時までかかり、京都までの日帰りは体力的にはかなりきついものがありました。

どれくらい費用がかかるかというと、PALSのテキストだけで13500円、講習のDVDが17000円。5年で更新されるので、これらは5年しか使えません。講習費が、半日コースと割引ですが21575円かかります。これに京都までの交通費がかかります。場所にもよりますが、10万円くらいかかってしまいます。でも2日のコースだと講習だけで4万円弱かかるため(これでも昔に比べたらすいぶん安くなる)、結構つらいです。しかし、それだけお金をかける価値はあるということです。

受けるコースの日時が決まれば、まずは受講前自己評価の試験を受けます。とりあえず2年前の記憶をたどり、問題を解くのですが、これがなかなか。数年たつとすっかり忘れていることが改めて分かります。84%以上が合格なのですが、この時点では78%しかとれず、落第。自分の知識レベルの確認と、弱いところを知るための試験なので別に気にしません。これをもとにテキストブックで知識の再確認を行います。

リニューアルコースは、スタンダードなコースに比べると半日の1/4の講習時間しかないので、最初から実技指導というか、試験をしながら修正するやり方です。当日は私を入れて3人でした。時間がないので、お互い自己紹介もなし。最初に効果的な蘇生チームダイナミクスのビデオを見た後に、成人に対するBLSから実技試験がいきなり始まります。心肺停止を認識したら、心拍30対呼吸1の割合で質の高いCPRをスタート。補助者(インストラクターやペアの人)がAEDを持ってくるまでつづけます。持ってきたら、補助者とCPRを代わり、AEDを傷病者に装着して、AEDの音声指示に従います。ショックが必要、となれば、ショックを1回行い直ちにCPRを再開する、というものです。成人のBLSは問題なく行えたのですが、乳児のBLSで、介助者が到着して2人法で行う時に、1人で行う時は2本指による胸骨圧迫法、2人でやるときは両手による胸郭包み込み両拇指圧迫法に替えないといけないのに、うっかり2本指で行ってしまってやり直しになりました。

次に呼吸(4パターン)、ショック(4パターン)、心臓(4パターン)のケースシナリオの練習を各自1つずつ、合計3つの練習があります。これは受講生が自由に選択でき、練習したケースに関しては試験ではあたらない、というものです。試験で出てほしくないケースを選択します。私は心臓のVF/無脈性VTを選択しました。インストラクターが、傷病者の年齢や状態をいってから、マネキンの横にいき、役割分担した受講者になにをするか指示してゆきます。練習でも試験でもテキストやポケットリファレンスカードをみながらしてもよい、いわゆるオープンリソース形式です。なので、自分が行っているケースシナリオが何かわかれば、その部分のプロトコールをみながら落ち着いてできるはずですが・・・試験では2つのケースシナリオをインストラクターが選び実際に行います。

私の一問目は、生後3か月のベビーがぐったりして救急室に運ばれた、というものです。心電図装着したら30しか脈がなく、呼吸数は1分間に数回、というもの。この時点で、ニアミス乳児突然死症候群であることはわかりました。リファレンスカードの徐脈のケースシナリオの欄を見てやればよかったのですが、頭に血が上ってしまい、酸素投与の指示は出して、それでも心拍数が上がらないので、胸骨圧迫からのCPR開始の指示は出したのですが、それでも一向に心拍数が上がってこない。ショックかなと間違って考えてしまい、血管確保の指示を出して、生理食塩水の200mLのボーラス投与という間違った指示を出してしまいました。そこでインストラクターが手を差し伸べてくれ、徐脈のケースシナリオの欄を見るようアドバイス。そこで初めて、アドレナリン0.1mgの静脈注射に気づきました。それでも合格にしてもらいました。

二問目は、10歳の喘息の既往がある女児。昨夜からせき込んで寝れない。というケースです。これは得意の喘息発作で、呼吸の下気道障害のケースシナリオとわかりましたので、サルブタノール吸入でおしまいで楽勝でした。

その後、50問の筆記試験です。これもオープンリソース形式で、試験中テキストなど持ち込み可能ですので、問題なし。しかし、ピーナツのアナフィラキシーで、呼吸のどのケースシナリオか?という問題で、肺組織疾患にしてしまい、1つ×。実際は上気道障害を選択でした。84%以上で合格なので、これは問題なくクリア。こうして無事にPALSを更新することができました。

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次の更新は2年後です。50過ぎてPALSを更新しつづけている人ってあまりいないと思いますが、町医者をしていたら、心肺停止で搬送されるケースはまずおらず、二次救命処置法を忘れてしまいます。しかし時に待合室で待っている間に呼吸障害が進行して、気づいたら心停止していたというケースを耳にしたこともあり、乳幼児はちょっとした呼吸障害が続くことにより、心停止してしまうことがまれにあります。そういうケースに突然遭遇した時にきちんと落ち着いて対応できるかどうか、2年に1回はPALS講習会に出て勉強しなおすことは、医療関係者であれば、当然の義務だと考えますので、また2年後、しんどいですが、受けなおさないといけないでしょう。それと、当院には心電計やAEDは置いてあるのですが、心電図モニターや除細動器がありません。状態が悪いお子さんが万一お見えの際に、心電図波形を評価することは、救命処置の初めの一歩。やはり購入を検討しなければならないようです。

診療内容:小児科・アレルギー科・予防接種・乳児健診
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