おしらせ
今月のアレルギー誌に「パンケーキシンドローム」の症例報告が掲載されました

今月のアレルギー誌に「パンケーキシンドローム」の症例報告が掲載されました

お好み焼きの材料の小麦粉に、繁殖したダニが混入していて、それで作ったお好み焼きを食べて、アナフィラキシーショックを起こした話、聞いたことがありませんか?去年の6月に民放でオンエアーされた、”ザ!世界仰天ニュース”でも、「一家を襲ったキケンな粉の正体」というタイトルで、「美味しそうなお好み焼きが突然命を脅かす症状に!ある一家を襲った、恐怖の出来事とは?"お好み焼きを食べると、突然呼吸困難に!"」と、この”口腔ダニアナフィラキシー”のお話をセンセーショナルに放送していました。

今回、大分こども病院在籍中に経験した同様のケースを、日本アレルギー学会の学会誌 ”アレルギー”に症例報告として投稿し、めでたく掲載されました。
アレルギー 67 巻 (2018) 3 号 p. 219-223
症例報告:診断に好塩基球活性化試験が有用であった口腔ダニアナフィラキシーの1例
神薗 愼太郎1)、藤本 保2)
1)かみぞのキッズクリニック、2)大分こども病院
DOI https://doi.org/10.15036/arerugi.67.219

アレルギー誌vol.67

夜間救急をしている医者なら、だれもが何度かこれと似た経験をするものです。しかし、なかなか確定診断が難しい。材料の粉を分析しようにもすでに使い切っていることが多いし、残っていても、ダニで汚染された粉で、確定診断のための食物経口負荷試験をすることは、倫理的にも問題です。

数年前、記録的な暖冬だった冬に、前病院で夜間診療を担当していた時に、たまたま2人の口腔ダニアナフィラキシーの患者さんを経験させていただきました。やはり2人とも材料に使用した粉は使い切っており、確定診断でつまずいたのです。しかし袋の隅にこびりついていた粉を根性でかき集めて、顕微鏡で覗いてダニを確認しました。普通はここで終わりなのですが、本当に小麦粉そのものやほかのお好み焼きの材料のアレルギーではなく、混入していたダニの成分でアナフィラキシーと起こしたかどうか、はっきりさせたい。

そこで、そのうちのおひとりの患者さんから説明と同意をいただいて血液を採取、血液中に含まれるアレルギーを起こす大事な”好塩基球”という白血球を原因の粉と試験管内で反応させたら、活性化するかどうかを調べてみました(好塩基球活性化試験)。すると、開封したばかりの小麦粉で好塩基球を刺激しても全然反応しなかったのに、今回患者さんが使用したダニ汚染の粉で好塩基球を刺激したら異常な活性状態になりました。生体で起こっていた好塩基球とダニ混入粉との反応を安全な試験管内で再現することができました。

しかしこれだけでは本当にこの粉がこの患者さんにアナフィラキシーをおこした犯人(犯物?)かは確定できません。なぜならば、今回アナフィラキシーを起こした粉には、どんな人の好塩基球を活性化できる毒のような異常な物質(非特異的な刺激物質)が混入していたのかもしれません。そこで今回、その可能性を否定するために、患者の好塩基球だけでなく、同じくらいの年齢・性別で、ダニのアレルギーのないボランティアにお願いして、その人の血液の中の好塩基球も同時に汚染した粉で刺激してみました。すると、ダニに反応しないこのボランティアの方の好塩基球は、まったく無反応でした。コントロールの検体を使用して、粉の中の非特異的な好塩基球刺激物質の混入の可能性を完全否定したところがこの論文のミソです。

内容はそんなに難しいものではなく、民放が取り上げるくらいに話題性のあるものです。興味のある方はぜひ一読ください。

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