3月5日の日本アレルギー学会の英文誌「Allergology International」に、成育医療センターから、卵アレルギーの発症に関する重大な短報があり、成育医療センターからプレスリリースされました。来月のシックキッズニュースにこの話題を取り上げようと、久しぶりに燃えて原稿を書き、今ようやく書き上げました。
それは、「なぜ卵を食べたこともない赤ちゃんが、卵に感作されている(IgE抗体が作られる)のか」という長年の謎に迫るものでした。昔は、「お腹に胎児がいる時に母親が卵を食べすぎたからだ」、とか、「おっぱいに含まれている卵や牛乳がアレルギーを引き起こすから、母乳をやめるか、母親は卵や牛乳をとらないでください」とか、おかしな説がまことしやかに囁かれていた時代もありました。今は食物アレルギー診療ガイドラインに妊婦や授乳母体への食事制限は推奨しないとはっきり書かれているにも関わらず、いまだにそう言って妊婦や母乳で育てているお母さんたちに食事制限をかけている人もまだいるようで、やばいと感じていました。
しかし、しかし、また最初の疑問に戻りますが、じゃあ「なぜ卵を食べたこともない赤ちゃんが、卵に感作されている(IgE抗体が作られる)のか???」
これが、現在進行形で進められているエコチル調査のパイロットスタディ(成育コフォートスタディ)で、ようやく謎の解明に大きく迫るものが出てきました。4月号のシックキッズニュースで詳しく、できるだけわかりやすく解説していますので、お楽しみに。
「食べるから食物アレルギーになるのではありません。皮膚が弱いから食物アレルギーになるのです」。私たちアレルギー診療医は、経験からそのように感じて、赤ちゃんのスキンケアや湿疹に対するステロイド軟膏療法の重要性、離乳食を遅らせることなくバランスよく食べさせることの重要性を繰り返しお話してきましたが、今回の寝具の中の鶏卵やダニのアレルゲン調査を行ったエコチルパイロットスタディーで、食物アレルギーや遷延性の喘鳴児の予防にスキンケアの重要性が裏打ちされたことになりました。
今後、エコチル調査の解析が進むとともに、「アレルギーが出やすい食品だから、食べるのをやめましょう」、とか、「アレルギーになるから、妊婦や授乳中の母親の卵や牛乳の摂取は控えましょう」とか、「離乳食をできるだけ遅く始めましょう」などというこれまでの間違った常識がくつがえるような事実が見いだされ、赤ちゃんの頃からの保湿剤をつかったスキンケアの重要性や乳児湿疹・アトピーに対するステロイドやプロトピック軟膏療法など、科学的根拠に基づいた診療でアレルギー発症を予防できるようになるのではないかと、その成果に今から期待しています。