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シックキッズニュース 11月号 No54 日本アレルギー学会の学術大会で話題になったこと 

シックキッズニュース 11月号 No54 日本アレルギー学会の学術大会で話題になったこと 

10月後半に入り、急に寒くなりましたね。最近まで流行していた手足口病やヘルパンギーナなんかの夏風邪も急に減ってきて、鼻、咳、ぜこぜこ、微熱のいわゆる秋の風邪(ライノウイルスが原因と思います)の子どもさんに替わってきた小児科の外来ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか?

さて、先月10月8日から10日に、日本アレルギー学会の70回目の学術大会が横浜で行われ、アレルギーを引っ張っている学者の先生たちが最新のアレルギー疾患の話題について議論しました。今年もコロナでオンライン講演会も行われ、私もオンラインで参加しました。その中で話題になったことについて皆様にご報告いたします。

今月のフォーカス 日本アレルギー学会の学術大会で話題になったこと

1.日本アレルギー学会学術大会について

2.アレルギー性鼻炎と花粉症に関する話題

●  アレルギー性鼻炎の変遷

●  アレルギー性鼻炎と口腔内・鼻腔内細菌叢の関係

●  スギ・ダニ舌下免疫療法の広がり

●  重症なアレルギー性鼻炎に対する生物学的製剤の劇的な効果

3.食物アレルギーの話題

●  食物アレルギー有病率の増加が止まったかも

●  クルミアレルギーの台頭

●  魚卵アレルギーやアニサキスアレルギーの話題

●  卵黄による消化管アレルギーが急に注目された

4.気管支ぜんそくの話題

●  ダニの免疫療法が喘息にもやっと推奨された

●  さまざまな生物学製剤の登場

5.アレルギー専門医のあり方とは

●  包括的アレルギー専門医をどうやって育てるか

●  専門医制度が大きく変わる

1.日本アレルギー学会学術大会について

日本アレルギー学会の学術大会は、今から70年前、1952年10月17日に第一回大会が2日間開かれました。毎年1回秋に開かれていたのですが、1989年から2014年の25年間は春に春季大会として、年2回学術大会が開かれていた時期もありました。2015年からは、相模原臨床アレルギーセミナーや日本アレルギー学会主催の総合アレルギー講習会など、他にも全国規模のアレルギー集会が毎年開かれるようになった関係からか、以前の年1回体制にもどっています。

1950年代といったら、まだスギ花粉症もあまり問題になっていなかった時期でした。今アレルギー疾患の大きな柱として知られているスギ花粉症ですが、最初にスギ花粉症の発表をしたのは、1963年の第13回日本アレルギー学会学術大会、東京医科歯科大学の斎藤洋三博士らでした。つまり1950年当時は問題になっていなかったでしょう。

アトピーという言葉が、喘息や枯草熱あたりに使われ始めたのは1920年代。皮膚炎に使われてアトピー性皮膚炎ということがが提唱されたのは1933年ですので、このあたりがアレルギー学会学術大会が始まったころには話題になっていたのかもしれません。

設立から70年経過し、時代はアレルギーの時代になりました。今年の集会のテーマは、「Patient Centered MedicineとAllergy Scienceの結晶化」とのことです。英語で書かれているけど、結局は皮膚(アトピー)、消化管(食物アレルギー)、気道(気管支ぜんそく)、鼻咽喉(アレルギー性鼻炎)、結膜(アレルギー性結膜炎)と様々な臓器にわたり苦しんでいる一人一人の患者さんに、トータルでみれる医師を目指しましょう。そして最新の免疫療法(スギやダニの皮下免疫療法や舌下免疫療法)や抗体療法(ゾレアやデュピクセント)をつかって患者さんのアレルギーをもとから治したり重症アレルギーを直して患者さんの人生を取り戻しましょう、ということだと思います。本学術集会の会長の埼玉医科大学アレルギーセンター長の永田真先生は、常日頃から「Total Allergist」(総合アレルギー診療医)と「AIT」(アレルゲン免疫療法)と口酸っぱく言われていましたので、先生の学会にふさわしいテーマと思いました。

それでは、今回の学術集会で私が視聴できた中で目についたものをピックアップしてみましょう。

2.アレルギー性鼻炎と花粉症に関する話題

●アレルギー性鼻炎の変遷

アレルギーは時代を映す鏡です。戦後復興期の、木材不足期にはスギ植林が増え、そのころに植林された杉が各地に大量に育ち、そして大量の花粉を飛散させるようになり、1970年からスギ花粉症が問題になりました。また、住居環境か改善され、室内気密性と室温がコントロールされるようになり、ダニの繁殖が増え、アレルギー性鼻炎で悩む人も増えました。最近30年で各10年ごとにアレルギー性鼻炎の罹患率は何と10%ずつ増え、アレルギー性鼻炎全体ではついに50%がみえるところまで、スギ花粉症は40%に届くところまで増加しました。

●アレルギー性鼻炎と口腔内・鼻腔内細菌叢の関係

この後もどんどん、アレルギー性鼻炎やスギ花粉症の日本人の罹患率が増え、将来は100%になるのか?というと、そうではないようです。福井大学の職員学生を対象にした疫学調査によれば、どうもスギ花粉症に関しては、増えてもたかだか50%で頭打ちになるのではないか、とのことでした。なぜそうなるかはわかりません。また同じ福井大学の同じ調査によれば、「納豆」「漬物」「ヨーグルト」のような発酵食品を取っている人たちは、採血検査でダニやスギの感作状態が改善している、あるいはアレルギー性鼻炎が改善、または消失している例が多かったことも紹介されました。これら発酵食品を摂取していた人たちの口腔内や鼻腔内の細菌叢をしらべてみると、明らかに細菌の分布に差があって、これら発酵食品が口腔内・鼻腔内細菌叢の性状を変化させたことが鼻アレルギー症状の改善につながった可能性があるとのことでした。ふと思ったのですが、コロナでみんなマスクを長時間するようになりました。マスクによる細菌防御については置くとして、マスクしたらどうしても口腔・鼻腔内の温度や湿度が上がりますよね。これって口腔内や鼻腔内の細菌叢の性状を変えることにならないでしょうか? アレルギーの罹患率や重症度にマスクの影響がないことを切に願います。

●スギ・ダニ舌下免疫療法の広がり

スギ花粉症やアレルギー性鼻炎の治療に関しては、まずは舌下免疫療法が今の旬でしょう。日本でスギ花粉の舌下免疫治療薬「シダトレン」が開始されたのは2014年10月。その1年後の2015年12月にダニによるアレルギー性鼻炎治療薬「ミティキュア」が発売されました。もう6-7年たち、当院でもたくさんのスギ花粉症、アレルギー性鼻炎の子どもさんたちの治療薬として利用されています。とくにスギ飛散時には肌で効果を実感されている患者さんたちも多いのではないでしょうか。実際、詳細な販売後調査で、舌下免疫療法はかなり有効であるエビデンスが多数出てきています。舌下免疫療法は年齢制限がないので小さなお子さんから開始できますし、皮下免疫療法に比べて敷居が低く気軽に、簡単に始められたりやめたりできる利便性があり、また軽症者でも重症者でも治療ガイドラインで推奨されていることもあり、今後ますますこの治療法は広がるでしょう。

●重症なアレルギー性鼻炎に対する生物学的製剤の劇的な効果

重症のスギ花粉症の方に福音です。多くのスギ花粉症の方はゴーグルやマスクでの抗原回避と、抗ヒスタミン薬を中心とした薬物療法、それに前述した舌下免疫療法でスギ花粉に耐性誘導しておくことでずいぶん症状が軽くなる人が多くなりました。しかし、一部にはこれら既存の方法でも、花粉症がよくならず、3月から4月にかけて憂鬱に過ごされている方がいます。実は、気管支ぜんそくや慢性特発性蕁麻疹でも重症すぎて既存の薬でコントロールできない人がいました。そんな中、「ゾレア」という生物学的製剤というすごく効く薬が登場してから、喘息やジンマシンが瞬く間に治り、その劇的な治療効果から、「ライフチェインジング ドラッグ(人生を変えるような薬)」という別名を博すほどとなりました。「ゾレア」はヒトのIgEというアレルギーに重要な役割を担う分子を、一言で得いえばブロックしてしまう薬です。医療が進化して、遺伝子工学の技術を使って開発された薬です。その「ゾレア」が、2019年12月から、何をしても効かない12歳以上の重症なスギ花粉症に使えるようになりました。ちょうどコロナ直前ですが、使用できるようになって2年たち、そろそろその効果や副反応を調べた市販後調査の結果が今回の学術集会でも提示されるようになりました。花粉の飛散時期の数か月間だけ月1-2回、ゾレアを皮下注射するのですが、喘息やジンマシンで恐ろしいほどの効果を示した通り、スギ花粉症でも重症者に劇的に効果があったようです。年齢制限があり、高価であること、それに免疫療法と違い体質を変えるわけではなく、毎年スギ飛散時に行わないといけないことなどが課題として挙げられますが、春の行楽の時期に、コロナも終わったのに家に引きこもらないといけない人生からは解放されそうですね。

3.食物アレルギーの話題

●食物アレルギー有病率の増加が止まったかも

現代社会で一番関心が高いアレルギー。それは何といっても食物アレルギーです。相模原病院や埼玉医科大学アレルギーセンターのような規模の大きな施設では、アレルギー電話相談をしていますが、圧倒的に食物アレルギーの相談が多いそうです。「食」というのは、生きてゆくためには必要な根源です。食物アレルギーは、その食行動を脅かすもので、みんなの関心が高いというのは必然です。

電話相談は増えており、世間の関心は高いのですが、実は食物アレルギーの罹患率の伸びは止まってきたことがわかりました。2009年から5年ごとに行われている東京都の3歳児調査(家族からの申告)によれば、食物アレルギー有病率が2009年には8%弱だったものが、徐々に上がってゆき、2014年に最高の17.1%をたたき出しました。ところが最新の2019年には有病率の伸びが止まり、15%弱と答えています。

●クルミアレルギーの台頭

一方、原因食物は、驚くべき変化があることがわかりました。2001年から診療医を対象に3年ごとに行われている消費者庁(当初は厚労省)の「即時型食物アレルギー全国モニタリング調査」で、最新の2017年の調査によれば、上位3食品は、定番の鶏卵、牛乳、小麦で全体の3分の2を占めていたの関わらないのですが、クルミやアーモンド、カシュー0ナッツなどの木の実類が、ついにピーナツを追い抜いて第4位のなりました。特にクルミのアレルギーの増加率は著しく、調査初年の2001年にはクルミアレルギーはわずか0.8%だったのですが、2017年にはなんと8.2%とテンバガーとなっています。それに、各年代になって新たに生じた食物アレルギーの原因を調査すると、0歳の離乳食期には、もちろん、鶏卵、牛乳、小麦で95.1%を占めるのですが、1,2歳では鶏卵の次の第2位に魚卵類が、その次の第三位に木の実類が躍進していました。そして3歳から6歳までの幼児では、新しく出てくる食物アレルギーの原因の第一位が木の実類だったのです。以下、魚卵類、ピーナツ、果物類と続きます。7歳から17歳になると、果物類が1位となり、以下エビなどの甲殻類、木の実類、小麦、鶏卵、と続きます。18歳以上の成人では、甲殻類が第1位、続いて小麦、魚類、果物類、大豆と続きました。

クルミアレルギーが堂々の第4位に浮上した背景には、日本人の食生活の変化が大きく関わっているようです。近年の健康食品ブームで、クルミの輸入量や食材として使われる量が倍になっているそうです。クルミやアーモンド、カシューナッツなどの木の実類が環境中あふれるようになり、室内塵にクルミも含まれる確率が増え、赤ちゃんの櫃を問う志手感作が成立し、クルミアレルギー増えてきたのではないか、とのことです。

●魚卵アレルギーやアニサキスアレルギーの話題

1-2歳の第2位が魚卵類、というのも、食生活の変化で説明がつくと思います。つまり、魚卵の代表選手であるイクラなどは、以前は高級品で、接待などで高いすし屋に連れて行ってもらった時くらいじゃないと普通の人には口に入ることはなかったのに、今や、スーパーの総菜寿司やくるくるずしなどで誰でも手軽に口に入るようになりました。食卓にイクラが並ぶことにより、乳幼児の誤食が増えたとのでしょう。

回転すし、といえば、最近、成人の食物アレルギーで魚に寄生するアニサキスという虫に対するアレルギーが注目されています。特に鮮魚店や回転ずしの板前さん。コロナでアルコールでの手指消毒が流行っていますが、おかげで手湿疹をこさえる人も爆増しています。荒れた手で魚をさばいているうちに、魚の内臓に寄生するアニサキスに対する監査が成立。魚一般を食べるとアレルギーが出るというわけです。寿司職人だけではありません。気づかないうちにアニサキス感作されている大人が、回転ずしや総菜寿司で気軽に高級な生魚を食べられるようになり、初めてアニサキスアレルギーのために魚が食べれないことに気づくのでしょう。

●卵黄による消化管アレルギーが急に注目された

乳児期のアレルギーで最近急に注目され、本集会でも多くの発表があったのは、卵黄による嘔吐、いわゆる消化管アレルギーです。アレルギーとなっていますが、いわゆるアレルギー、といえば、原因の食品を食べてすぐに(おおむね20-30分以内)に症状がでて、採血検査や皮膚テストで陽性になる、というイメージがあると思いますが、今注目されている卵の黄身で吐くアレルギーは少し異なります。食べて4時間くらいかかることのほうが多く、採血でIgEというたんぱく質を証明しようとしても引っ掛かりません。狭い意味のアレルギーの特徴とは異なるので、最近名称が「食物蛋白誘発胃腸炎」と変わりました。医者どうしは食物蛋白なんとやらはたいへん言いにくいので、英語のFood Protein Induced Enterocolitis Syndromeの 頭文字、FPIES:エフパイスと呼んでいます。

多くは乳児、あるいは3歳くらいまでの幼児に多いのですが、卵、それも卵黄を食べたあと、しばらくたって、何回も嘔吐したり、腹痛、下痢(時に血便)などの消化器症状が起きます。そもそもこの食物蛋白誘発胃腸炎は、もともと人工乳の飲んだ赤ちゃんが、しばらくして吐いたり、体重減少、敗血症のように高熱が続く、いわゆる新生児乳児消化管アレルギーとして最初に知られていました。私も、大分こども病院時代に、母親が慢性持続性の感染症のために母乳哺育ができないあかちゃんが、原因不明の体重装荷不良と不明熱で入院して、この病気を疑い、きっちり入院の上、人工乳の除去・負荷試験で証明し、学会報告した経験があります。このころは、この病気はあまり多くないというイメージがありました。

それが、本当に昨年くらいから、人工乳よりも卵の黄身のほうがこの病態を起こしやすいことが報告されるようになりました。確かに気を付けてみてみると、当院に食物アレルギーで相談に来られる方も、茹で卵黄を食べさせて4時間後くらいから何回も吐く、という子が、2年くらい前から少なからずおられることに気づいていました。負荷試験の時間内では何の問題もないのですが、帰宅したあとに吐いた、と連絡があり、再受診していただいたり、大分こども病院の時間外に受診していただいたり・・・。症状が時間がたって出るようなケースは、負荷試験が3時間という時間制約のあるクリニックでの負荷試験では、判定が難しく、しかも危険なので、やはり大分こども病院のような病棟で、1日あるいは1泊入院での負荷試験を依頼するということになります。

どうして最近になって卵の黄身でのエフパイス(食物蛋白誘発胃腸炎)が増えたのか。いろいろ要因はあると思いますが、一番の要因は、赤ちゃんを持つ保護者の皆さんが、鶏卵を離乳食として積極的に使用していただけるようになったからだと考えます。以前は鶏卵を食べるとアレルギーが出るかも、と保護者だけでなく、かかりつけの小児科医も卵を食べさせるのは遅らせたほうがいい、という迷信にとらわれていました。この流れが変わったのは、2017年6月12日、日本小児アレルギー学会が出した1つの提言でした。

このシックキッズニュースでも何回か紹介していますが、国立成育医療センターで行われたコフォート研究で、皮膚の湿疹をきちんと直しながら、生後6か月から鶏卵を微量(卵黄1/4個程度)、そして10か月から卵黄1個程度のをとっていた赤ちゃんの、1歳時点の鶏卵アレルギー発症率が激減した2016年12月にでたPEPITスタディーのコフォートスタディをもとに、日本小児アレルギー学会は、「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」を行い、小児科医と一般患者の皆さんに解説文を発表しました。

つまり、湿疹や皮膚炎をきちんと治療を行い、離乳食早期から鶏卵を症状がでない微量接種を始めることで食物アレルギーの発症は抑えることができる、という提言です。この辺から、かかりつけの先生たちが、「アトピーがあり、アレルギーが出るかもしれないから、卵はまだやめておきましょう」から、「調子がいい時は卵を少しづつ試させたほうがいい」と180度違うことを言い始めたのではないでしょうか?いまだに「卵はまだやめときましょう」とか言っておられる先生たちのことはここでは一旦横におくとして、この提言が出て、かかりつけ医も保護者も以前とは比べ物にならないくらい離乳食で鶏卵を食べさせてみようか、という機運が生まれました。東京の調査で3歳児の食物アレルギーが2019年に初めて減少傾向に転じた、と前に話しましたが、2019年といえば、2016年年末にこの提言がでて2,3年経過した後です。スキンケア(湿疹治療)と離乳食早期からの微量の鶏卵摂取の重要性が浸透に寄与したこの提言の影響が、食物アレルギーの罹患率減少にやっと寄与してきたのではないかとみています。

この提言であかちゃんたちは以前より積極的に鶏卵、特に栄養があり卵成分はわずかしか含まれていない茹で卵黄(黄身1個で、卵成分は40分の1個レベルしか含まれていない)を食べる機会が増えたことで、これまで隠れていたエフパイスのあかちゃんを拾い上げることになったのでしょう。事実、食物アレルギーの日本の権威の一人、相模原病院の海老澤先生によると、以前も黄身を食べたら吐く子がいることには気づかれていたそうで、保護者には「卵不耐症」と説明していたそうです。昔から一定の数は卵黄のエフパイスはいたのです。

鶏卵の白身ではエフパイスは黄身ほど起きないようですので、当院では、このようなあかちゃんには、卵の食物アレルギーはおこしやすいですが、白身の負荷試験を行っています。また、卵黄を食べて4時間ほどで嘔吐します、という主訴で来られたあかちゃんには、茹で卵黄負荷試験を、腹部エコーで腸管の動きやむくみ具合をみながら慎重に行えば、遅延型反応が起きることはある程度予想できますので、1回は当院で行い、それくらい食べたら症状がでるか、判定しています(症状出現閾値量決め、といっています)。そこまで慎重にやっても帰宅後に症状がでる場合は、大分こども病院に転院していただき、1日、あるいは1泊入院で試験していただいています。

4.気管支ぜんそくの話題

●ダニの免疫療法が喘息にもやっと推奨された

本学術集会の会長、永田真先生は、ご自身が最重症の気管支ぜんそくです。こどものころ、大学のころに何度か大発作で生死の淵をさまようほどだったそうです。それで、学生のころからアレルゲン免疫療法に大変興味があり、実際埼玉大学の呼吸器内科に入局後は、最初に喘息のアレルゲン免疫療法の研究を行ったそうです。昔は、減感作療法、といわれていたアレルゲン免疫療法ですが、日本の免疫療法はたいへん世界から遅れており、永田先生もアメリカのデータを読み漁り、標準化もされていない治療用ハウスダストエキスを使ってするしかなかったそうです。永田先生はじめ、耳鼻科の先生を中心に大変な努力があり、2015年2月に念願の標準化されたダニの治療用エキスが鳥居製薬から発売されました。そして同年12月には、鼻アレルギー治療薬として、ダニ舌下錠「ミティキュア」が発売されました。しかし、ミティキュア舌下錠は、喘息患者に治験で有効性が明らかでなかったこと、もしかしたら喘息発作を誘発するかもしれない、ということで、処方する場合は摘要欄に理由を書かないと処方できない、いわゆる処方制限がかかっていました。しかし、日本だけアルアル的なバカな話も、ようやくなくなりそうです。(ここが変だよ日本人、という巨泉やたけし、サンコンたちがやっていた番組があったけど)本学術集会初日の10月8日に発行された、最新の「喘息予防・管理ガイドライン2021」で、初めてアレルゲン免疫療法が、喘息のすべての重症度で推奨されました。

こどもの喘息のほとんどは、あかちゃんのときに乾燥肌や湿疹があり、荒れた皮膚を通して感作された埃の中の「ダニの成分によるアレルギー」、つまり、アトピー型の喘息といわれています。ダニの免疫療法は、舌下でも皮下注射法でも、おおむね5歳くらいから始められます。これまではアレルギー性鼻炎でしか大手を振ってできず、喘息のある人には、「鼻炎もあるからそれの治療です、喘息発作出現には気を付けています」と言い訳分を添えて処方、あるいは注射しなければならなかったですが、これからは大手を振ってできそうです。

●さまざまな生物学製剤の登場

気管支ぜんそくは、近年、吸入ステロイドの普及に伴い、大体は外来でコントロールができるようになりました。2017年ついにこどもの喘息死ゼロも達成しました。一方、吸入ステロイド療法や内服のステロイドを使ってもなかなか喘息をコントロールできない一部の患者さんたちはいないことはありません。近年はそのような重症喘息の人の管理・治療に関心はシフトしています。

さて生物学的製剤、最近マスコミなどで聞くようになった人も多いのではないでしょうか?生物学的製剤とは、私たち人間や細菌など、とにかく生物が産生する、多くは「たんぱく質」などの物質を応用して作られた薬です。一番身近な生物学的製剤は、話題のワクチン、ですね。例えばインフルエンザワクチンは、ウイルスのHAというたんぱく質を、鶏卵で大量に増やしたインフルエンザウイルスから精製して作られた「生物学的製剤」です。また、最近ではワクチンにその座を奪われましたが、抗ボツリヌス毒素製剤やノーベル賞第一号のベーリングの抗ジフテリア毒素製剤、残念ながらノーベル賞を逃した北里柴三郎の抗破傷風毒素製剤など、血清療法で使用される薬も「生物学的製剤」です。

近年では、バイオ技術の進歩で、人間の細胞が作り出している様々なたんぱく質やそれを阻害するたんぱく質を、人工的に大量に作ることができるようになりました。リウマチに、リンパ球が作るTNFという因子を阻害する、抗TNFモノクローナル抗体製剤「レミケード」が1999年アメリカで、2003年から日本でも関節リウマチの最後の切り札として使用されるようになりました。従来役である免疫抑制薬のメソトレキセートも効かない重症リウマチ患者にも優れた臨床効果を示し、「生物学的製剤おそるべし、ライフチェインジングドラッグ!」と称賛されました。このレミケードは、小児科分野でも川崎病の免疫グロブリン大量療法が無効例に使用されています。大分県立病院のような九州大学系列の病院では特に積極的に使用されていますので、もしかしたら聞いたことがあるかもしれません。

アレルギーの世界では、抗ヒトIgEモノクローナル抗体の「ゾレア」がありました。私も大分こども病院や、当院でも使用したことがありますが、重症ぜんそくで月に1-2回入院治療が必要で学校に行けなかったようなおこさんも、使用期間中は急に喘息がおらなくなってびっくりしました。また、ゾレアは重症蕁麻疹にも適応されるようになって、NHKでゾレアのこと知った重症のコリン性蕁麻疹の患者さんの保護者の方が、是非に、と希望され、ゾレアを使ってみましたが、使用している間、とくに治療開始直後は本当にびっくりするくらい効いて、くらーい感じの子どもさんでしたが、2回目からの注射の日にはニコニコ明るい顔でいろいろ話してくれ、本当にライフチェインジングが起きました。

喘息では、ゾレアだけでなく、「ヌーカラ」、「ファセンラ」、「デュピクセント」といろいろ新しい生物学的製剤が認可、使用されてきました。昨年、小児気管支ぜんそく治療・管理ガイドライン2020が改訂出版され、いつかはこどもの重症ぜんそくに対する生物学的製剤のことをシックキッズニュースでも取り上げたかったのですが・・・コロナとか感染症やワクチンのほうが注目されていて、後回しになりますが、ちかじか喘息の話もしないといけませんね。

5.アレルギー専門医のあり方とは

●包括的アレルギー専門医をどうやって育てるか

アレルギー疾患というのは、基本的に全身病です。胃潰瘍とか、肺がんとか、ネフローゼとか、ある特定臓器に病気が起きるのではなく、皮膚から始まり(アトピー)、しばらくすると消化管(食物アレルギー)、3歳で呼吸器(気管支ぜんそく)、小学生以後で耳鼻科眼科疾患(鼻炎結膜炎花粉症)、そして全世代で蕁麻疹アナフィラキシーと、1人の人間が年代や臓器を問わず突然、あるいは慢性的に悩みます。アレルギー、と一言でいっても、診療医にはたいへん広く深い知識が必要とされるのです。

アレルギー疾患の小児から成人への継続的・包括的管理」というシンポジウムが開かれました。アレルギー対策基本法に基づく国の中心拠点機関の代表「相模原病院」、大学病院の代表「埼玉医科大学アレルギーセンター」、市中の一般総合病院の代表「横浜みなと赤十字病院アレルギーセンター」、開業医院の代表「むさしのアレルギー呼吸器クリニック」の先生方がそれぞれ、包括的アレルギー診療のアプローチを、それぞれの病院の立場でお話されました。

アレルギー専門医志望の若い医師を、新しい専門医制度に沿った研修をどうやって実現して包括的なアレルギー専門医(トータルアラジスト)、いわゆる本当のアレルギー専門医に育てるかにも苦心されていました。他にも全員に共通した話題として、アレルギー診療をすればするほど経営的には赤字で、病院のお荷物とされている、ということでした。本当は経営の面からやってられないのですが、それでもクリニックなどではたらいまわしにあうので、地域住民のアレルギー診療のニースが高いので、仕方なしに他の儲かる科と抱き合わせで、何とか置いていただいている状況である、とのことです。

一方、日本の特殊な問題として、とくにクリニッククラスでは、「アレルギー科」と標ぼうしていれば患者が来て儲かる、的ななんちゃって専門医が多くて困る、と特に患者会の偉い人から怒りの意見がなされました。患者さんたちが、当院のように「アレルギー科」を標榜しているところをそういう風にみるのも、当たらずとも遠からず、今の状態では無理がないかな、と私も感じます。しかし本当にアレルギーの患者が押し寄せたらどうなるか。長時間かけて丁寧に聞きとらなければならず時間は取られる(アレルギーは問診で9割は決まる)、検査などの手間がかかるなどで時間がかかり、他の患者さんを長時間お待たせしてしまう(兄弟2-3人みんなアレルギーで初診で相談されることもしばしば)、慢性疾患に入れられるので初診料は取れず診療報酬は1/4におとわれる、包括請求(乳幼児にいくら検査しても検査代は請求できない)なので検査をすればするほど赤字になる、などなどで儲かるどころか赤赤です(涙)。だからどこの小児科も「アレルギーかもね」というだけできちんとみていないのではないか、とうがった見方をしそうになるくらいです(間違っていたらすいません)。とくに「アレルギー検査希望。あとは御用ありません。他にかかりつけ医がおりますので」みたいな感じをうけると私もとてもつらいので、つい気持ちの入らない診療になってしまい、いつも反省です。大分こども病院に拾ってもらってたくさんお世話になった義理もあるし、患者さんからもたくさん感謝をされてうれしいし、そもそもどこも診ない、というわけにはいきませんし、やれる範囲で頑張って診ています。

話はそれましたが、シンポジストの皆さん、いろいろな立場で苦労されているようでしたが、私が開業医であるためか、最後のむさしのアレルギー呼吸器クリニックの先生のお話は心に響きました。クリニックレベルでできることは限られているかもしれないけど、少なくとも皮膚テスト(プリックテスト)による原因抗原の探索と皮下注射によるアレルゲン免疫療法は最低できないとアレルギー専門医ではないといわれていました。もちろん当院では日常的にしていることです。

ところで、アレルギー専門医のくせに、包括的・継続的に診療していないって!?・・・どういうことか。例えば大分の話になりますが、大分県のアレルギー専門医は、ここで検索すると41件ヒットします。内科24件、小児科2件、耳鼻咽喉科14件、皮膚科1件です。内科の先生の肩書、ですが、多くは呼吸器内科医なので診ているアレルギー疾患はぶっちゃけ喘息でしょう(間違っていたらすいません)。耳鼻咽喉科医のアレルギー専門医が取り扱っている病気はどうか。ぶっちゃけアレルギー性鼻炎と花粉症でしょう(間違っていたらすいません)。皮膚科はアトピー、蕁麻疹、薬疹、金属などの接触アレルギーでしょうか。それでも内科クリニックであまり成人アレルギーをみることはないので、成人のアレルギーの相談の多くはアレルギーの非専門の皮膚科の先生がされているのではないでしょうか(間違っていたらすいません)。じゃあ、お前たち小児科のアレルギー専門医はどうなんだ、ってなりますね。

みんな意外に思われるかもしれませんが、小児科はもともと年代やみる疾患はかなり広いのです。新生児は別に診療科になるくらい奥深いですが、私も昔ですが、今思い出しても身の毛もよだつような研修を聖マリア病院と久留米大学NICUで1年ほどやらせていただいています。あかちゃん、よちよち歩きの幼児、そして3歳くらいまでは感染症が中心、それ以上になると、喘息を多く見るようになり、小学高学年になると、頭痛や心身症のようなメンタルの患者さんも多くなります。中学生になるともう成人疾患ですよね。高血圧や糖尿病などの生活習慣病はあまり見ませんが…

ともかく、小児科医はほかの科のアレルギー専門医に比べ、アレルギー疾患も日常的にたくさん機会があります。赤ちゃんはアトピーなど皮膚のアレルギー。離乳食を食べ始めると食物アレルギー。集団保育が始まり風邪ひく回数が多くなる幼児は喘息。小学生以降になると喘息だけでなく、耳鼻科疾患の花粉症やアレルギー性鼻炎。なので、多くの小児科の先生方は、アレルギー専門医でなかろうとそうであろうと関係なく、実はこどものアレルギーはたいへんよく精通されているのです。私も2015年に専門医を取りましたが、2006年から10年近くはアレルギーの非専門医で、別に研修病院で長期間臨床アレルギーの研修することもなく、ほとんど独学でアレルギーの患者さんをガイドライン参考に診ながら、じゃんじゃん負荷試験とか皮膚テストを何の抵抗もなく天草やこども病院でしていました。特殊な眼科や耳鼻科処置はできませんが、もともと小児科自体が包括的診療が求められます。アレルギーの診療スタイルに通じるところが多いので、他の科のアレルギー専門医に比べるとみんな包括的にみなきゃと、思っているのではないでしょうか。

●専門医制度が大きく変わる

近々、専門医制度の大改革が行われることをご存じですが?今までは、小児科学会とか、内科学会とか、来たこともないわけのわからない玉石混淆した学会が、勝手に小児科学会専門医、とかアレルギー専門医とか作り出して、「なんどか学会認定専門医」とか称していました。どうやらここ数年でこの専門医制度も変わりそうです。ばらばらの認定基準で専門医を造成していたものは、世界の潮流には合わない、ということか、「日本専門医機構」という組織だけが統一した認定基準で、各専門医を認定する方式に移行します。コロナで1年ほど止まってしまい、研修機関の選定が遅れ、いつ新しい機構に認定されるか不透明ですが、とにかく新しい研修医や専攻医の皆さんは、数年以内に、日本専門医機構が統一したルールをつくって研修病院を選定して、そちらで専門医研修を行うことになりそうです。今回の学術集会でもシンポジウムで話し合いが行われました。

アレルギー学会専門医は、これまでは5つのスペシャリティーの学会、つまり「日本内科学会」、「日本小児科学会」、「日本耳鼻咽喉科学会」、「日本皮膚科学会」、「日本眼科学会」が認定した専門医を持った医師で、かつ5年間以上アレルギー学会の会員できめられた研修(かなりぬるい)を行ったあとに、専門医試験受験申請が行われ、試験に合格(試験といっても合格率9割以上と、受ければたいてい通る)したら、日本アレルギー学会が認定する、という感じでした。だから現在は、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医(小児科)と長々と表記しないといけないのです。

5年ごとに更新があり、私は昨年小児科・アレルギー共に専門医を更新しましたが、小児科専門医のほうはすでに、日本専門医機構の発行した認定書がとどきました。次回は5年後の更新ですが、新しい日本専門医機構の下では、まだ何をしなければいけないのか何も決まっていないようですが、新たに日本専門医機構で専門医を取る若い先生たちは、かなり混乱されているようです。なんせ、来年4月から研修指定病院で研修することになっている計画だそうですが、その研究指定病院も決まってないのですからね。しかも、これまでは私なら小児科専門医なので、小児科分野を選択して試験を受ければよかったのですが、新しい日本専門医機構の下での認定試験では内科、小児科、耳鼻科、皮膚科、眼科、各専門医にかかわらず、すべて共通の試験を受けなければならないし、小児科医だったとしても、例えば鼻の手術の症例報告を数例は提出しなけれなならない、涙の検査手技を研修しなければならない、皮膚科や眼科の先生も負荷試験の症例報告をしなければならないなどなど、本気でアメリカのようにトータルアラージスト(包括的なアレルギー専門医)を目指す気のようです。 これは余談になりますが、アメリカは、アレルギー専門医は、基本的に包括的な診療をしている内科専門医と小児科専門医しか受験資格はありません。もし取れれば、アレルギー専門医はニースが高いので、「3億の家が買える」ほど儲かるそうです。あちらはアレルギー専門医だけでなくほかの専門医も羽振りはいいそうですが、もちろんどの専門医の取りにくさは日本の比ではないなど、あちらにはアレルギーの診療ができないなんちゃって専門医や、研究ができず論文も読めないなんちゃって医学博士などはいないことも申し加えます。それだけ参入障壁が高いから儲かるのでしょう。当然です。

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