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シックキッズニュース 6月号 (No.49) コロナに関する最近の話題

シックキッズニュース 6月号 (No.49) コロナに関する最近の話題

今年は早くも5月中旬には九州地区は梅雨入りしました。ここのところ毎年梅雨明け前に九州は大洪水に襲われていますが、心配です。さて、コロナでめちゃめちゃになって早1年たちました。コロナ第4波も大いに猛威を振るいましたが、民に犠牲を強いる緊急事態宣言発出でようやく終息に向かってきました。ここにきて遅ればせながらですが、高齢者対象にワクチン接種が解禁され、予想通り混乱は見られますが、想定内。思ったより順調に接種が進んでいるようです。今回の第4波はこれまでと様相が大きくちがっていました。イギリス株と一般に言われている変異ウイルス(VOC202012/01)の影響といわれています。ウイルスがどんどん変異してしまうまでになんとか早く全成人への接種が進むことが強く望まれます。ということで今月は、「コロナに関する最近の話題について」フォーカスします。

 

今月のフォーカス コロナに関する最近の話題

 

1.世界のコロナワクチンランキング

2.こどものコロナはどうなのか

3.鳥取、大分>>>東京、大阪のコロナ対策状況

4.第4波の主役、変異ウイルスの脅威を世田谷区が実証

5. コロナ対策ダントツ優秀県の鳥取県の取り組み

6. 最後に今回の変異ウイルスVOC202012/01の感染性や毒性はどうなのか?

コラム・・・オリンピックはどうなるのだろうか

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1.世界のコロナワクチンランキング

コロナ制覇のため、各国が国の威信をかけてワクチン開発を行ってきました。驚嘆すべき世界のワクチン開発の成果を見る前に、わが日本の状況はどうでしょうか。残念ながら相撲で言えば、NHKBS1で昼くらいには取り組みが終わっている序二段でとっている相撲取りの状況で勝負になりませんでした。もちろん日本の研究者の力不足とは思えません・・・(文末注1につづく)

世界から数周遅れた日本をしり目に、成功失敗にかかわらず潤沢な資金を保障された世界の大国の製薬会社や研究所は1年もたたないうちに次々にワクチン開発を終わらせています。そしてコロナワクチンの第三相治験の成績をまとめた論文がNature誌の姉妹雑誌、ネイチャー・メディソンの最新5月号に発表されました。

図を見ていただきたいのですが、これは、あくまで正式に論文化された各ワクチンの第3相の治験の成績を1枚の図にまとめたものです。アメリカワクチンvsロシアワクチン、イギリスワクチンvs中国ワクチンというようにどちらが優れているかをワクチン同士直接調べたわけではありません。参加者数などの規模をはじめ、治験のやり方や抗体価の測定法などバラバラですが、まあ、それでも大まかな比較はできる、ということで、一流雑誌が論文として採択したものです。

各コロナワクチンの有効性と中和抗体価の比較。右上に行くほど優秀

すでに喧伝されている通り、ファイザー・ビオンテック社やモデルナ社のmRNAワクチンは、アデノウイルスベクターワクチンや不活化ワクチンに比して半端ない有効性が示されました。接種後の中和抗体価も、自然にウイルス感染したときよりも大量の中和抗体が産生されることが示されました。インフルエンザワクチンや乳児のワクチンでおなじみの4種混合ワクチンやヒブ・肺炎球菌、日本脳炎ワクチンなど、これまで王道として君臨していた不活化ワクチン(中国シノバック社のCorona Vac、インドのコバクシン)は50%程度の有効性で中和抗体価は自然感染に遠く及びませんでした(それでもインフルエンザワクチンなんかより良好)。スプートニク、アストラゼネカ、ジョンソンエンドジョンソンで使用されたアデノウイルスベクターワクチンの有効性が70%前後(スプートニクだけがなぜか有効性90%超えているけど・・・)で中和抗体価は自然感染程度をみると、mRNAワクチンに文句なしの勝負あり、ということになりました。それでも毎年行われているインフルエンザの不活化ワクチンの有効性が30-50%であることを考えると、現在開発済のワクチンの効果に対しては一定の評価はできます。

各コロナワクチン接種後の中和抗体価の比較。自然寒村後の1の線を超える(右にシフト)ほど効果あり

mRNAワクチンにはアナフィラキシー発症は通常のワクチンより高いようですが、私もやっている食物負荷試験でおきるアナフィラキシーの発生率なんかに比べるとゴミ程度ですし、まともな医者ならばアドレナリン筋注と酸素で簡単に対応可能です。筋注で頻発する迷走神経反射ならばしばらく足を高くして寝とけば治ります。それにベクターワクチンなどの懸念される血栓症などの重大な副作用は報告されておらず、安全性は十分許容されます。それよりもアデノウイルスベクターワクチンで何より問題になりそうなのはアデノウイルスベクター自体に抗原性(免疫反応を引き起こす)があり、1回接種してしまうと、残念ながらウイルスベクターに対する免疫までも作られます。だから2シーズン(つまり次の年)以降に接種しても作られた免疫で直ちに壊されるであることが懸念されます。mRNAワクチンには抗原性はなくこの問題がありません。時間とともに免疫力が下がったり変異ウイルス用のワクチンに替わった場合も、いつでも再接種可能です。

国は5月21日、新たにモデルナ社の・・・(文末注2に続く)

 

2.こどものコロナはどうなのか

私は小児科医で、これまでPCRセンターや自院でコロナ抗原検査を行ってきましたが、こどものコロナ、あるいはコロナ陽性者をまだ一度も診ていません。そのためホントのところどうなのか実感していません。私がPCRセンターで検査した中に2名ほど陽性者がいたようですが、2名ほど家族に感染者がおり、陽性になるのはわかっているような状況でした。症状はちょっとした風邪気味でした。今年の3月の初めにあった日本小児科学会大分地方会で、各病院から短い報告がありましたが、県病や別府医療センターでの入院前のスクリーニング検査でコロナ陽性者は1例もなく、大分こども病院でのコロナ外来での検査でも1例も陽性者はいないということでした。その後に第4波になり、大分の学校でもこどものコロナ患者がぼつぼつ出てきたそうです。5月中旬には由布市の小学校で30名以上の陽性者が観測されたようですね。これまでは我々小児科クリニックはコロナに関しては蚊帳の外、的な感じでしたが、なんだかそんなことも言えなくなってきたと感じています。

5月21日、日本小児科学会がホームページに「小児における新型コロナウイルス感染症の現状と感染対策についての見解」を載せています。これによると、5月5日時点で厚労省が発表したコロナの総感染者数(PCR陽性者数)60万2,190人中、10歳未満はわずか3%の18,642人、10歳から19歳が7%の42,777人でした。総死者数9,479人と1万人に迫る勢いとなりましたが、20歳未満の死者は1例もありませんでした。

感染経路についても記載されています。5月11日時点での小児科学会の調べによれば、77%に家族の先行感染者がいたそうです。学校関係者は6%、保育園・幼稚園関係者6%、塾や家庭教師関係者は1%と、コロナ感染したこどもの8割が家庭でコロナをもらっていることになります。さらに家庭内感染のうち、両親や祖父母からもらったこどもが93%でした。今回の由布市の事例は別にして、散発的にぽつぽつ出ている学校のコロナに関してはインフルエンザとは全く違い、20歳未満のこどもが流行を広げていないことは明らかで、主に働きに出ている大人が家庭内に持ち込んで子供にうつしている実態が鮮明となりました。

最近話題になっている変異ウイルスですが、いわゆるイギリス株は第4波の中心となっています。こどもへの影響も懸念されるところではあります。やはり予想通り、他の年代層同様、こどもに対しても感染力は増加しているらしいです。ただし、幸いにも軽症、あるいは無症状者がほとんどだそうです。

以上の科学的なデータをもとに、小児科学会としては、①引き続き基本的な感染対策(3密回避、適切なマスクの着用、手洗いなど)の徹底を、変異ウイルスを念頭に強化すること、そのうえで②学校教育活動の継続を行い、地域一斉の休校措置を行うのではなく、地域の感染状況に応じて学びの継続に積極的に取り組むよう提言した文科省の「学校におけるCOVID-19への対応に関する留意事項」を支持しています。

COVID-19症例が多いアメリカのお話です。5月13日に18歳未満のコロナPCR検査陽性者の小児12,306人の後ろ向きのコフォート調査がアラバマ大学からScientificReportに発表されました。アメリカ全土のCOVID-19リサーチネットワークには全米33の医療機関から約5,850万人のCOVID-19患者がベータベース化されています。うちわずか0.02%の1万2千人余りが18歳未満でした。割合としては日本の20歳未満が10%だったのに比べ圧倒的に少ない状況です。

アメリカの小児のCOVID-19のまとめ

年齢での内訳は、乳児が1,418人(11.5%)、幼児1,018人(8.3%)、小学生1,024人(8.3%)、中学生3,273人(26.6%)高校生5,573人(45.3%)と、日本同様中学生以上70%以上を占めていました。男女差はほとんどありません。ほぼ半分の43%は南部出身者で、人種はいわゆるアフリカン・アメリカン(黒人)が6,307人(51.3%)と半分を占めています。

 

こどものコロナで入院のいらない軽症者と入院が必要な重症者の各症状の出現頻度の違い

注目されるこどものコロナの症状です。やはり四分の三の74.9%は無症状だったそうです。全体の16.5%に咳などの呼吸器症状がみられ、18.8%に全身倦怠感などの微妙な症状がでたそうですが、これは想定内。意外なものとして、全体の13.9%に下痢などの胃腸炎症状、8.1%に発疹がでたそうです。つまり、最初のころ日本でやっていた、熱が4日間続くことでスクリーニングしていたら、こどものコロナ患者は見逃される可能性が高い、ということです。

入院を必要としたのは672人で全体の5.5%だけでした。しかし、日本では重症者はほとんど起きていないのに比べ、この米国の調査では入院児の5人に一人、118人がICU管理を必要で、4.1%と比較的高い割合の34人は人工換気(人工呼吸器管理)が必要でした。また白人(3.3%)に比べて黒人(6.5%)が入院率が高かったそうです。米国では一定の割合で子供の重症者が散見され、また人種的マイノリティーの子に入院リスクが高くということは、偏った医療ケアの問題、貧富の差が激しく、貧民はどうしても密集した状態で住んでいる、など、社会的要因が絡んでいるのではないか、と考察しています。

アメリカのこの調査では、子供のコロナ陽性者全体の25%程度に症状が出現していますが、その4割は発熱です。その他、リンパ節腫大、発疹、結膜充血、下痢などみられています。一見川崎病を思わせる症状を合わせて呈するこどもも少なからずいたのでしょう。日本のこどもでも数少ない重症化している例は、このような川崎病様症状(小児多系統炎症性症候群)のケースだそうです。川崎病発症者が一番多い国は日本なので、その発症が心配されましたが、その小児多型同炎症性症候群は少数(数例)で、適切な治療ですべて改善しているとことです。詳細な症例報告発表を待ちたいと思います(3月の日本川崎病学会の発生報告を参照ください)。

 

日本川崎病学会がまとめた小児多系統炎症性症候群国内例の特徴

まだ子供のコロナに関してきちんとしたガイドライン的ものがない以上、ここに紹介した小児科学会が出す情報アメリカなどで公表されているこどものコロナの調査、それに以前保育所でクラスターがでて大分で一番多くの小児のコロナ診療をされた豊後大野市で診療された先生がたに聞いたりして、自分の頭で考えて発熱者の診療をしています。小学生くらいまでの小児科患者さんに限っては、鼻や咳を伴う微熱、高熱の症状があるこどもの場合は、コロナというよりはむしろライノウイルスや、現在問題になっているRSウイルスなど、地域で小流行しているウイルスによるものが圧倒的に多いと考えています。こどもに関しては特別な場合を除き、こどもたち同士の感染しあうことはインフルエンザや夏風邪に比べたら圧倒的に少ないと感じています。一方、ご両親など同居している年長者たりが先行して発熱をしたりしていた場合は全く別です。例えこどもに症状がなくても、コロナ抗原検査を行うべきと考えています。第4波の変異ウイルスVOC202012/01が主体です。以下の章で述べますが、3割以上の人は無症状でもPCR検査をしなくても抗原検査でひっかけることが可能なくらい大量のウイルス(Ct値25以下)を保持していることも珍しくないからです。こどものコロナは軽症、あるいは無症状ばかりで保険診療の対象にならないほどなのですが、これまた後で述べますが、いわゆるこのようのスーパースプレッダーを野放しにしないように見つけるためには症状がない以上検査で見つけるしかないからです。ただし、世田谷の調べではスーパースプレッダーの8割は65歳以上の高齢者だったそうなので、こどもがこのようなスーパースプレッダーになるケースはまれだと思います。

 

3.鳥取、大分>>>東京、大阪のコロナ対策状況

今回の感染対策は都道府県が主体に行っていますので、それぞれの政策によって成果もまちまちでした。例えば大阪府と鳥取県(上図)。人口も経済規模もぜんぜん違う両県を比較するのはナンセンス、ということは合点承知の助です。でも累計PCR陽性者数10万人弱と462人、死者数2,190人と2人。人口が大阪882.3万人、鳥取56.06万人の15.7倍・・・ということは単純にいえば大阪は感染者6,930人、死者は31.4人。人口密度もある!とのツッコミが入りそうですが、じゃあ、人口2,357万人の台湾はどうなの。ああ言えばこう言うといわれそうですが、そこが感染症の怖いところ。対策がまずいと10倍返しで民は被害を受けるきつい見本となりました。

実際大阪と鳥取の感染対策と効果はどうなの。その疑問に、科学的にきちんと調べて47都道府県のコロナ対策状況ランキングを慶応大学商学部、浜岡豊教授のグループが答えました。各県のコロナ対策状況を、PCR陽性率や致死率などの「健康影響」、人口当たりの検査数や受け入れ病床数などの「対策」、人流などの「市民の協力」、消費支出金額や客室稼働率などの「経済の影響」の4分類10指標(3月21日まで)を数値化してランキング化。この慶応大学のランキングをわかりやすくHPで解説しているサイトがこちらです

ランキング1位は鳥取県。わが大分県もなんと4位にランキングされました。鳥取県は「対策」、つまり「累積容積患者あたり累積検査人数」と「人口当たり受け入れ確保病床数」でダントツ。そのほかの項目もまんべんなく良好な状況でした。大分県も、人流(ステイホームと行動自粛)と客室稼働率が落ちる外は60ポイントをキープして平均55ポイントと高評価でした。あとで鳥取県は第5章で述べますが、その前にわが大分県。大分県や市は、コロナ対策は本当に頑張っていると思います。医師会と連携して昨年5月からは市営のPCRステーションを城址公園に立ち上げてくれました。今年3月まで運営していただき一時は本当に助かりました。今年のゴールデンウイークからは大分駅にコロナ抗原検査センターも市が運営しているようですが、これに関しては医師会が監修しているのかはわかりません。とにかく行政主導で頑張ってやっているのでしょう。医療従事者のワクチンも3月と4月のうちにいち早く用意していただき正直驚きました。感謝、感謝です。福岡の知り合いの医者なんかやっとこの前1回目が回ってきたと怒り爆発寸前。焦りすぎてマジで犬用のコロナワクチンを買って打とうかと思ったそうです。また高齢者ワクチンもすでに4カ所の集団接種センターをすでに稼働させています。軽症者のホテル療養も潤沢に用意できており、コロナ病院の病床利用率を何とか抑えています。このような地道な努力により、第4波で大分市や由布市の各地で発生した小学校や保育所での感染の発見といち早い隔離が行われ、流行をいち早く収束させることができました。私は小児科、特にアレルギー診療を専門にやっていますが、この分野での大分の医療政策について、これまでどうも評価できない部分が目についていましたが、今回のコロナ対策に関しては素晴らしいと感じています。ランキング4位もうなずけます。

一方ダメな都道府県は、最下位47位はあの大阪府。次に東京、京都、愛知、神奈川と続きます。ドベの大阪は全体的にダメですが、特に「経済の影響」がひどく20-30ポイント。ビリから二番目ブービー賞の東京は、人流など「市民の協力」は60~70ポイントで良好でしたが、陽性率、致死率の「健康の影響」や検査数や自宅療養率の「対策」が20-30ポイントで全然ダメ。都知事や都医師会長の呼びかけに都民はきちんと答えて協力しているにもかかわらず、鳥取と違い肝心の対策が悪い。都民は報われていませんね。親族が東京に何人かいますが不幸ですよね。

大阪の知事さんといえば・・・(文末注3につつく)

 

4.第4波の主役、変異ウイルスの脅威を世田谷区が実証

今回の第4波の大波は、昨年末から今年初めにイギリスで猛威を振るった新型コロナウイルスの変異株、VOC-202012/01による影響が大きいといわれています。なにが脅威なのか。普通脅威になったということは、感染力が上がる、とか、重症する人が増える、とか、若い人も重症化してしまうとか考えますよね。しかし、自然はそんなに単純ではありません。最初は私もN501Y変異によってスパイク蛋白の構造が変化して感染力が上がったと思われていました。しかし、どうもそれだけではないようです。もっと重大なことがわかってきました。今回のVOC202012/01の変異ウイルスの大波では、ウイルスを大量に持っていても症状がない、あるいは軽いので、感染者は病識がなく動き回れるようになる、いわゆる「スーパースプレッダー」の人が多くなり、その人たちが大量のウイルスを周りに広げている、というのが本当のところのようです。

どういうことか。ここで、昨年から東京・世田谷区で昨年秋から実施中の重要な疫学調査をご紹介します。昨年の夏の第2波の後の2020年10月から、世田谷区は東大先端科学技術センターの児玉龍彦教授協力のもと、区内の介護事業所を対象に社会的検査を実践しています。つまり、検査希望事業所を募り、コロナ感染者が出ていない施設の従業員や利用者の月1回のPCR検査(定期検査)や唾液検査(スクリーニング検査)を5検体まとめてのプール法で行います。そこで陽性が出た場合、個別検査を行います。個別検査で感染者を確定した後は、検査を受けていない職員や利用者に随時PCR検査を行います。随時検査は、感染者、あるいは感染疑い者に接触した可能性が高く不安がある施設職員にも行います。

東大先端科学技術センター児玉教授の信頼性が高く地道な検証の結果、今回の第4波の猛威を解くカギがいくつか見つかりました。まず、無症状の職員や施設利用者に行った定期検査やスクリーニング検査でも一定数PCR検査陽性者がいることがわかりました。つまり、昨年10月2日から今年5月16日(執筆中の最新データ)まで、接触の心当たりのない無症状者の定期検査をのべ12,091件行い、25件(0.2%)の陽性を確認したということです。症状はないものの事業所に陽性者がでた、あるいは事業所外で陽性者との接触の心当たりがある人に行った随時検査7134件では、96件(1.3%)の陽性者が確認できました。繰り返して言いますが、これらの陽性者の人にコロナの症状はありません

これだけでも驚きですが、この世田谷区の社会的検査でさらにすごいことがわかってきました。世田谷区がこの無症状の陽性者のうち78人の陽性者慶応大学医学部の西原広史教授にPCR検査で陽転した時点でのPCR検査のサイクル数(いわゆるCt値といわれています)を解析してもらったところ、なんとCt値が25以下の人が27人と全体の3割以上を占めていたそうです。その27人のうち8割が65歳の高齢者が占めていたそうです。

BS-TBS「報道1930」2021/5/17放送から

Ct値25といえば、唾液1mL中なんと1.8x107個のウイルスを保持している計算になります。ウイルス100万個(106個)浴びれば十分ヒトは感染するといわれています。つまり、世田谷の介護事業所で従業している人の中には、わずか0.1mL、1滴の唾液量で感染させる大量のウイルスを保持しながら一見健常人、つまりスーパースプレッダーが、コロナPCR検査陽性者のうち3割以上を占めたということになります。

変異ウイルスが問題になる昨年までは、WHOをはじめ専門家たちも「症状がない人からの感染リスクは低い」としていました。この考えは「症状のない人が保持するウイルス量は微量である」ということが大前提でした。第4波の主役の変異ウイルスVOC202012/01の登場でこの考えは過去のものとなりました。変異ウイルスは大量にウイルスを保持しているにもかかわらず無症状だから動き回れる、いわゆるスーパースプレッダーを多く生み出したためにこんなに感染者を増やしたのです。ウイルスは宿主であるヒトを殺してしまったら自らも死んでしまいます。ヒトを生かさず殺さず変異した結果、このような巧妙な変異ウイルスが生み出されたのでしょう。世田谷区の社会的検査の詳細は、2021年3月26に発表された令和2年度第11回世田谷区長定例記者会見の資料をご参考ください。

 

5. コロナ対策ダントツ優秀県の鳥取県の取り組み

都道府県ランキングでも触れましたが、鳥取県は平井伸治県知事が先頭に立ってコロナ対策を頑張っているところです。その基本姿勢は、「早期検査」「早期入院」「早期治療」の三本柱。この感染症対策の王道を徹底的に実行しています。それもコロナで大騒動が始まってからではなく、2020年1月15日、神奈川で初めて日本でのコロナ感染が確認された翌日からスタートしています。1月16日には新型コロナ相談窓口を開設。21日には全県的な連絡体制を整え、1月中に対策本部と医師会の協力体制を構築しました。「熱の人はコロナかもしれないのでみません」と張り紙を出して診療拒否が問題になっている他県をしり目に、鳥取県の医療機関の9割が新型コロナの診療検査医療協力機関として検査に協力的でした。診療所従業員のコロナ感染で診療所が休診した場合の補償を県の施策で行うなど、医療機関と丁寧に話し合いを重ね具体的な施策をしたからです。スピード感のある対応の結果、①新型コロナ感染者数、全国最小、②患者受け入れ病床数(10万人当たり)全国1位、③診療・研究医療機関数(10万人当たり)全国1位、④軽症者用宿泊療育施設確保部屋数(10万人当たり)全国4位と、名実ともにナンバーワンのコロナ対策優等生となりました。

もっとも特筆すべきなのはPCR検査方針です。最初から十分な病床数を確保していたので、検査しすぎて保健所や病院機能がマヒする事態になる心配はありませんでしたので、他の都道府県がPCR検査の拡大に二の足になっていた初期の段階から、PCR検査を積極的に行ってきたそうです。結果は即日出すようにする。その中で陽性者を見つけたら、家族みんなに直ちに検査を行いました。そして陽性者の聞き取りの結果、濃厚接触者だけでなく少しでも接触の可能性のある人全員にPCR検査を行う。そうしてコロナウイルスを保持している人をどんどん手繰り寄せて早期入院、早期治療を行う。早く治療すれば早く治る。これが鳥取方式です。「雨合羽」「イソジン」「大阪ワクチン」なんかに比べれば面白くもなくなんの変哲もないけど、この地道なやり方が功を奏してコロナを十分コントロールできているのです。

PCR検査の使い方にも工夫がみられます。鳥取大学医学部ウイルス学の景山誠二教授たちは世田谷区モデルで示されたようにCt値25以下の大量にウイルスを保持しているスーパースプレッダー(症状がないので歩き回って感染させてしまう人)に注目してデータを洗い出してみると、第4波では鳥取県で陽性になった患者さんのCt値25未満(唾液1滴からミストレベルで感染力のあるスーパースプレッダー)の数が急激に増えていることがわかりました。第1波では2人だったのが、波がくるに従いその数を増やし、第4波では72人、全体の32%にも及んだそうです。その鳥取でもイギリスの変異ウイルスVOC202012/01の割合がどんどん増え、現在では100%となっています。このデータを根拠に、鳥取県ではホームページユーチューブも使った県民への変異ウイルスが感染しやすくなっているという警告をおこなっています。

鳥取県HP、景山誠二教授のユーチューブから

BS-TBS「報道1930」2021/5/24放送から

 

そしてCt値25以下で陽性と判定された感染者の周囲の人を徹底的に洗い出し、検査して隔離する、地道ですが、効率的に蔓延を防止する方法をとっています。感染対策優等国ニュージーランドや台湾と同じような方法ですが、コロナ対策に成果を出している鳥取県の対策をみると、ワクチンは行き渡るまでの感染症対策には、地味ですが、やはりこの囲い込み戦法が有効なことを証明しています。

 

6. 最後に今回の変異ウイルスVOC202012/01の感染性や毒性はどうなのか?

山中伸弥先生のブログにイギリス株の変異ウイルスの特性に関して報告されている文献を紹介しています。やはり感染力、毒力、そして子供への感染いずれも従来ウイルスよりも3割ほど上がっているようです。おまけに、先ほど世田谷や鳥取での調査をご紹介したように、大量にウイルスをひっそり持って行動しうるスーパースプレッダーの割合も増えています。そのうえ、変異ウイルスにもある程度効果を示すだろうといわれているワクチンが第4波に間に合わず、特に大都市圏で医療体制がこれまで「おざなり」(なおざりとまではいいません)にされたところでは、イタリア、ブラジル、インド顔負けの医療崩壊を起こすほどの事態となりました。大阪などは、医師のレベルは最高だと思うのですが、感染症のように急激に状況がかわる病気に対しては医師団が優秀であるだけでは対応できないようです。急激に感染者が増えれば、対策が後手に回り、自宅待機せざるを得ず、適切な観察や治療がないまま軽症者も重症化してどんどん重症者が増え目に見えて悲惨な状態になったのでしょう。鳥取のように早くから医療体制を整え、そのうえでどんどん検査して陽性者、特にスーパースプレッダーを拾い集めて、早期入院早期治療すれば、別に大阪のような超一流の医師団でなくてもここまでひどい状態にはならなかった。

オリンピック開催が国民的論争になってしまいました。オリンピック貴族たちを海外から呼んで観客を入れてやりたいのであれば、どれくらい入れたら最悪どれくらいの感染者が出るのかシュミレーションして、想定される最悪の状況ですべての感染者に隔離など適切な対応をとるには、どれくらい病床を増やさないといけないのか明示し、きちんと対応してもらいたいものです。そしてオリンピック開催が理由でも何でもいいので、なにより多くの国民に早急にワクチンを行き渡らせること。これに尽きるでしょう。そうでないと今度はインド株でまたボロボロになりかねないです。

 

ラム・・・オリンピックはどうなるのだろうか

インターネット上に出回っていた東京オリンピック招致をめぐる買収疑惑を皮肉るコラージュ画像(当然だれかのいたずら、偽物です)

東京オリンピックまであと2か月、というところまで来た5月24日、アメリカ国務省は、日本への渡航中止勧告を行いました。どうせオリンピック前までには解除して、日本の感染状況改善のアピールをするのでしょうが●東京2020は8年前の2013年秋のブエノスアイレスでのIOC総会で決まりました。プレゼンで滝川某の「お・も・て・な・し~Omotenasi~」とスピーチをフランス語で行うパフォーマンスも受けましたね。その年の病院忘年会で、病院就職したばかりの年だったにもかかわらず、嫌われていた私は当直を当てられ、それにもかかわらず、会の前日に病院当直メンバー共に「お・も・て・な・し~」のパフォーマンスをやらされビデオにとられ、忘年会の余興で流された苦い記憶があるのでよく覚えています。まあ与太話はおくとして、東京と開催地を争ったイスタンブールやマドリードは心から安堵していることでしょう。もともと日本にオリンピックを誘致することに対して国民は招致前から冷ややかだったと記憶しています。そりゃそうでしょ。2011年に東日本大震災で東北はボロボロになり、未曾有の原発事故を起こしてしまった福島第一原子力発電所のある福島なんか、どん底で立ち直っていない最中でしたよね●麻生大臣の発言で有名になった「呪われた五輪」・・・どうもオリンピックは40年ごとに不幸が起きてきたそうです。40年前は1980年、モスクワオリンピック。ソ連のアフガン侵攻に反発した西側諸国はオリンピック参加をボイコットしました。その40年前の1940年。東京と札幌でオリンピックが予定されていましたが、日中戦争を始めて各国がボイコットを示唆。日本はオリンピック開催を返上しました。代替都市ヘルシンキは、またもやソ連がフィンランド侵攻をして五輪は中止されました●さて因縁のモスクワ五輪から40年目の東京五輪。案の定、思いつくだけでもいろいろありました。誘致した猪瀬・舛添両知事や竹田JOC会長たちが裏金・公私混同・賄賂疑惑でつぎつぎ失脚。桜田大臣の失態。新国立競技場のザハ・ハディド案のちゃぶ台返し。エンブレムデザインの盗用問題で消えた佐野氏。まだこの辺までは笑いで済ますことができました。ところがIOCの要請でマラソンコースを東京から北海道へ変更。まさかのコロナで1年延期。森喜朗組織委員会会長の女性蔑視発言による退場。とどめはぼったくり男爵(Baron Von Ripper-off)呼ばわりされたIOC会長・・・●8年前貧乏くじを引いてしまったともいえる東京。緊急事態宣言下でも聖火リレーはひっそりと続けてられているようですが、各種世論調査でオリンピックは中止と考えている人が半分を超す異常事態。度重なる緊急事態宣言下での自粛や休業要請、またコロナ対応病院で奴隷のようにこき使われている医療従事者にすっかり疲れた国民からは「緊急事態下でお祭りなんかしてる場合か」「オリンピックだけなんで特別なんだよ」と国民の間でも分断が進んでしまいました●アスリートはこの日のために我々凡人にはわからないようなつらい鍛錬に耐えて、文字通り命がけで代表の座をつかみました。そもそもオリンピックでしかテレビ放送してくれない競技もあります。私が高校・大学でやっていた空手とか、東京が最初で最後なのに…悔しいです。ここまできたら、たとえオンライン開催での記録会になろうとも意地でもやってもらいたいものです。倉本聰の名作「北の国から 1984年夏」で東京から来たツトム君が「いずれパソコンで買い物が来る時代が来るんだ~仕事も家でできるようになるんだ~」と純と正吉に自慢していましたが、40年後には本当にそうなっちゃいました。いつかそういう時代が来るんだーもしかしたら40年後には、オリンピックはeスポーツが主流になっているかもしれませんね

 

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注1.・・・もちろん日本の研究者の力不足とは思えません。そもそも12年前くらいまではヒブワクチンも肺炎球菌ワクチンもロタウイルスワクチンもなにもなく、ポリオは生ワクチン、とか世界から見ると信じられない状況で、日本は北朝鮮やモンゴル、アフガニスタンレベルと揶揄され、ひどい状態だったです。また子宮頸がんワクチンやおたふく風邪ワクチンを見てもわかるように、副作用をマスコミや被害者支援団体があおったせいでワクチン忌避はもうどうしようもないほど国民に充満しています。それにアメリカに守られているので国防の意識が薄く生物兵器攻撃への対応が、というかそもそも念頭にない(それだけ日本はボケがつくくらい平和で幸せな国かも)などがあります。

そして決定的だったのは2001年から始まった重点的な研究支援、いわゆる「トップ30」。文科省が国公立問わず30の大学を世界最高水準に引き上げる目標をたてた、当時の目玉政策です。世界一のレベルの研究者をだす、ノーベル賞受賞者を何人出す、など、大ぶろしきな目標掲げて、生命科学研究への補助金を「選択」し「集中」する方針を取りました。猪突に出てきたこの政策変更。最初から懐疑的にみる有識者は多かったです。派手な日の当たる部門、例えばiPS細胞研究のようなものには重点的に予算が配分されるような風潮になりました。ただその結果、残念ながら日本の大学が世界の一流になったという話は聞こえてきません。イギリスのクアクアエリ・シモンズ(QS)世界大学ランキング2021年版では、日本の大学は20位以内は1校もなく、30位以内に東大だけ(24位)。100位以内に5大学です。ほかのアジアの大学にも抜かれて日本のランキングは年々低下していると聞きます。成果を出せてないだけではありません。選択・集中ということは、地味な地方大学にはお金はまわせないということです、またワクチン開発のように大事だが地味な分野の予算はカット。これでよかったのでしょうか。生命科学の分野は、幅広く多くの萌芽的研究を長期間にわたって大切に育てることが大事。まるで森を育てる林業のようにいかないとだめだといいます。とにかく、ワクチン開発競争に惨敗し、自前で用意できなかったことで国民へのワクチン接種が大幅に遅れたことで、生命のみならず、経済や文化、スポーツ界など、国民生活は多大な被害を被ったことは紛れもない事実です。

今年の3月号でコロナワクチン特集をやった時に書きましたが、今回すごいワクチンが一気に開発されたのは、30年以上前から地道な基礎研究の積み上げがあったからなのです。一朝一夕でワクチンの新技術が開発されたのではありません。それに急に開発が必要になって慌ててワクチン開発を含む感染症対策のための緊急予算はわずか609億円(案)。この金額がどれだけ少ないものか、海外のワクチン研究開発企業や研究所が国からとった額をみるとよくわかります。2021年3月までに公表されている額だけでも、モデルナ社が1社だけで日本の全体の予算の倍ちかくの1,040億円。その他も製薬会社もすごいことになっています。


Forbes Japan 2021/5/10のWEB記事から

 

注2・・・国は5月21日、新たにモデルナ社のmRNAワクチンとアストラゼネカ社のアデノウイルスベクターワクチンの2つを正式に認可しました。モデルナ社のワクチンは大規模接種センターで使用することは決めましたが、アストラゼネカ社ワクチンの使用は保留する方針を示しました。賢明な考えと思います。モデルナ社ワクチンはJCRファーマや武田製薬も国内製造の予定があり(もちろん納入先は日本政府ではなくアストラゼネカ社ですが)、ファイザー・ビオンテック社のmRNAワクチンを含め、潤沢に用意できる準備ができました。mRNAワクチンが潤沢にあるうちはこれでしのぐ。mRNAワクチンでアナフィラキシーを起こして禁忌になってしまった人やポリエチレングリコールを含む薬品にアレルギーがある集団に対して接種する。また、通常の冷蔵庫でも保存ができるなど使い勝手はいいので、そのあたりで使われるかもしれませんが、あくまでmRNAワクチンが何か問題があった時の補助的な役割がふさわしいと考えます。

危険性が指摘されているアストラゼネカワクチンをなんで承認したのか!という浅はかな意見は間違いです。今年も日本脳炎ワクチンやおたふくかぜワクチンが検定に通らない事態が発生して供給されていないことは周知の事実のように、ワクチンはいつ廃棄されることになるかわかりません。ワクチン後進国の日本でワクチンを自前でそろえるのは効率が悪いし、危機管理の意味でも2種類のワクチンを必ず用意しておく。できれば日本の製薬会社もmRNAワクチン製造のライセンスを取得する。さらに開発中の日本製のワクチン開発も地道に続けておく。いずれおきる新たな感染症再来時には、願わくは日本製ワクチンが世界を救う番になるようなれば、今回の惨敗も無駄ではないと考えます。

 

注3・・・大阪の知事さんといえば、東京を意識したか?テレビやネットに出ては、「大阪モデル」「雨合羽」「大阪ワクチン」「イソジン」「大阪コロナ重症センター」など、次々に奇妙なパフォーマンスを繰り出しだしてはこけまくり、ちょっと心配です。焦っていろいろ飛びつく知事さんもみっともないですが、取り巻きの専門家たちはいったい何を進言しているのでしょうか。東京都知事も「三蜜」「ステイホーム」「五つのコ」「東京に来ないで」「いまがこらえどころ・・・(なにを?)」などキャッチーなコピーを連発して都民に我慢を強いていますが、肝心の感染終息への有効な対策は打ち出せず、オリンピックどころではないでしょ、状態に・・・。ちなみに第三波到達直後の去年の年末、朝日新聞社が発表した世論調査、「コロナ対応、評価する政治家は?」では、1位はあの大阪府知事、2位もあの東京都知事、3位北海道知事(誰?)、そして4位5位はまさかの新旧総理大臣・・・。わずか半年前まではコロナ対策を期待された人たちでしたが、時の流れは無情ですね。せめて平井鳥取知事や広瀬知事、佐藤市長が11位から13位を占めているとを信じたいですね。

朝日新聞Digital 2020/12/30のWEBから

 

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