子供たちは長い夏休みが始まり、楽しい夏が始まりました。しかし今年もまさかのコロナが打ち砕いています。その中で7月25日、衝撃的なニュースが飛び込みました。26日から大分こども病院の平日、土日の昼間の一般外来診療をしばらくの間休止する、との情報です。文字通り24時間365日、大分市のこどもの救急医療を支える最後の砦の大分こども病院の苦境。とても他人ごととは思えません。本当に心配しています。
そこで今月も、コロナ第7波にフォーカスを当てます。診療所のコロナ診療医の立場から最近のコロナの状況と今後どうなってゆくかを考えてみました。
今月のフォーカス 「コロナ第7波の現状と今後の展開」
1.当院の今月までのコロナ検査と陽性数の推移
4月の当シックキッズニュース、コロナ第6波の最中にも、3月31日締めの当院のコロナ検査数とコロナ抗原検査陽性数を出しました。それ以後、7月31日までの当院の週足のデータをつけて皆様方に提示いたします。4月以降も第6波の影響は続き、4月から5月までは、大体週に40件程度(1日8件程度)の検査を行い、うち5-15件の陽性確認をしていました。6月に入り、検査数も週に20件程度(1日4-5件)、陽性者数も週に数名、多くて5件程度に下がり、以上に暑い日も続いていることもあってか、「もう外のマスクはいいんじゃね」とうれしい方向に進んでいました。

ところが7月に入り、減っていた検査数も突如、週に60件と増加。7月第4週(7/18~7/23)は月曜が海の日で休日、火曜定休日の関係で3連休で、週4日しか医院を開けていませんでしたが、検査数、陽性者数ともに現時点で最高。週に110件、1日平均27件の検査を行っています。急な検査希望者の増加で電話もつながりにくい状況になり、そもそも検査キット不足の懸念があり、陰性証明のためや明らかにコロナの症状ではないのに職場や保育所・学校からの検査指示による検査希望や、保護者の方への検査などをやむを得ずお断りしなくてはならない事態になりました。もしそれまで検査していたら、もっとひどいことになっていたでしょう。検査を増やせば陽性数も上がることになり、7月は第4週に最大35件の陽性をたたき出しました。1日当たり9件弱の陽性となりました。7月にオミクロンBA.5による第7波突入、ということです。

2.こどものコロナの診断は検査前でもだいたい予想がつくようになりました
コロナは指定感染症なので、大分県ではコロナの診断は、発熱外来を行っている医院や病院でコロナ抗原定性キットを行い、陽性者をコロナと診断しています。以後、コロナ患者さんの健康管理は地域の保健所(大分市の場合は大分市保健所)が行っています。ということで、我々発熱外来を行っている施設が診断したコロナ患者がどうなっているのかの把握は、保健所が把握しており、我々診断医は基本的には関知しておりません。という事情で、私がここに述べることは、あくまでコロナ診断時の初期症状の印象を述べているにすぎないことを最初にお汲み取りください。
さすがにコロナ騒動の初期の段階から発熱外来をしていて、熱があるだけで検査をしていると、陰性者も陽性者も大量にみさせていただきました。7月30日の段階で総検査数1,134件、陽性件数261件でした。総検査数の約4件に1件がコロナ陽性、4件に3件はコロナではないようです。乳幼児の風邪症状の多くは、いまだにほかのウイルスによる方が多い、ということになります。
ウイルス感染に免疫を持たないこどもの発熱の原因の大半はウイルス感染です。マスコミなどがコロナコロナというから、一般の人たちは熱が出たら新型コロナをイメージするかもしれませんが、町の小児科医の考えはちょっと考えが違います。季節で流行するウイルスがあり、多くのウイルスに感染歴のない乳幼児の発熱の場合は、最初に季節で流行しているウイルスかもしれないと考えます。特に第6波から第7波に至る春先から初夏にかけては、毎年多数の型を持つライノウイルスやエンテロウイルス、アデノウイルス、ヒトメタニューモやパラインフルエンザウイルスなどの雑多なウイルスが混在しています(近年ではRSも)。別に感染したウイルスがどれでも、「風邪ですね」といって熱さましや風邪薬出すのは変わらないのですが、春から初夏のこの時期は、ゼコゼコ・ズビズビしたり(ライノ・エンテロ、状態悪ければヒトメタ・RS)、ケンケンのクループ様咳嗽(パラインフルエンザ)、ぶつぶつ(エコーか手足口病のコクサッキーA群かな)、口内炎(ヘルパンギーナを起こすコクサッキーかエコーかな)、扁桃炎(アデノか意外にも溶連菌とかEBウイルスとかヘルペス系???)・・・かな、とかウイルスを思い浮かべながら楽しく診療しています。これら雑多なウイルスを、乳幼児期に保育園などの集団保育で適切にもらい、うつしながら、徐々に丈夫で感染に強いこどもさんが出来上がり、小学生に入るころには小児科を卒業、となります。話は大きくずれましたが、乳幼児の発熱で、家族や保育所にコロナがおらず、ゼコゼコ・ズビズビ・ぶつぶつがある場合は、コロナではなく、ライノ、エンテロ、アデノあたりだろうなーと思いながら検査しています。ほとんど陽性であったためしはないです。
一方、学童以上のお子さんや成人が、いきなり季節外れのインフルエンザ様症状、つまり高熱、頭痛、咽頭痛(溶連菌やアデノのようにのどの所見はあまりなく、咽頭後壁のリンパ濾胞の拡大のみ)、目がウルウルで、きついといった症状を呈する場合は、家族や周りにコロナがいようとなかろうと、多くはコロナ陽性のようです。学童以上のお子さんは、すでに乳幼児期、保育園などで適切にいろいろなウイルスに感染してすでにキチンとライノ・エンテロ・アデノなど雑多なウイルスに対する免疫を獲得しているので、まだ免疫がないのは新型コロナくらいだからでしょう。 以上から、小学生や中学高校生が、まるで季節外れのインフルエンザのようなきつそうな症状で来院するケースは、コロナ陽性の事前確率は上がるようです。逆に乳幼児で、家族が元気で保育所にコロナのクラスター報告がない場合で、発熱以外の症状がメインのケースは、幸いにもコロナでない確率が上がるような印象を、場末の零細つぶクリ小児科医はもっています。これはあくまで印象で、きちんとしたデータに裏付けされた意見ではないことは付け加えておきます。私の意見は参考程度にとどめてください。
3.こどものコロナの自然経過や重症化例がしりたい
というわけで、コロナ当初から発熱外来をしてきたおかげで、比較的多くの患者さんをみせていただき、さすがに診断くらいならば検査前からだいたい当たるようになりました。私のような古いタイプの小児科医の多くは、論文とか教科書からではなく、実地で患者さんをたくさんみせていただくことで、患者さんからいろいろ教えてもらうことで腕をあげてきた面もあるということです。
一方、コロナは指定感染症ゆえ、診断後に直ちに発生届を保健所に提出した後は、患者さんは手を離れてしまいます。今わからないのは、こどものコロナはどのような経過をたどるのか、入院やホテル療養になるケースはどれくらいいるのか、脳症や心筋炎、肺炎など重症化したケースは?その経過などの詳細な症例報告です。以前コロナと診断されたご家族が、少しづつですが、回復して隔離期間も終了して戻ってきています。やはり2-3日は高熱できつかった模様です。私が診断した261名の患者さんですが、初診の段階で食事が全くできずに保健所報告の際に同時にこども病院に輸液目的に紹介した患者さん1名、診断後、車内で処方薬ができるのを待っている間に熱性けいれんを起こしたお子さんが1名、高熱による異常言動で脳症の可能性も否定できずに、保健所に入院観察を進言しようか迷った方1名(家庭の事情でもう少し自宅でみますといわれました、その後どうなったか不明)です。これら初診時から比較的悪いこどもさんを含め経過中、どうなったかの情報は不明です。初期の段階では入院になったケースは初期には観察目的で何人かいたようです。二次病院の先生方は、通常時にはかかりつけ患者さんが夜間休日など時間外に入院になった場合は、かかりつけ医に逆紹介していただき入院情報提供書をいただける例も多いのですが、コロナ児で逆紹介をいただいた例は今のところありません。入院例は本当にいないのか、それともいても情報提供書を作成する暇もないくらい多忙なのではないかと危惧しております。
重症例については、残念ながら大分の状況は我々末端医には回ってきません。ツイッターなどで少しずつ上がっている例では、ときどきエクモ装着例があったとか、鹿児島や静岡で死亡例があったなど、当然ながら重症化しないことはないことははっきりしました。問題は、その頻度や程度が、例えばインフルエンザやRSウイルス細気管支炎、ロタ腸炎、百日咳などの横綱級の感染症に比べてどうか、ということです。今の総理大臣ではないですが、今後も緊張感をもって注視してゆきたいところです(これって今年の流行語大賞なんじゃないかと個人的にはみています)。
4.5-11歳のこどものワクチンの効果もしりたい
もう一つ、個人的に情報が欲しいのは、こどもでのコロナワクチンの発症や重症化、入院予防効果はどれくらいあるのだろうか、ということです。
まず、当院で検査している患者さんのワクチン接種状況、ですが、乳幼児が多く、そもそもワクチン接種対象外です。学童以上のお子さんも、もちろん来られますが、実際にワクチンを接種している人はほとんどいないのが印象です。ワクチン接種のような、個人が特定されかねないデータを不特定多数の方がみるホームページに出すわけにはいかないので、これくらいにしておきます。全国では、5歳から11歳の学童児のワクチンの2回接種率が7月25日時点で16.7%、6人に1人はワクチンを2回すんでいるはずなのに、当院に熱で検査希望で発熱外来を受診する小学生はほとんどワクチンしていないみたいなので、もしかしたらワクチン接種している子は発症しておらず、受診していないのかもかも、と希望的になりそうです。ぬか喜びでなければいいのですが。県のホームページに12歳以上の年代別ワクチン3回接種率と罹患率のデータが出ていますが、大分県では12歳から19歳の3回目接種率は7月上旬までで30%ちょいのようです。
5歳から11歳で、たま~にワクチンを受けて発熱してコロナ陽性のお子さんがいましたが、大分ではやはりこの年代にはワクチンはほとんど接種されていないようです。医療系インフルエンサ―の専門家たちがいっているように、「ワクチンを子供に打たせないのが悪い」というつもりはございません。そもそもの話、ワクチン接種率世界ナンバーワンの日本が、現在世界最悪の感染者数を出しているから。「日本はコロナが流行っているというよりコロナ検査が流行っているからだろ」、という冗談を言う外人もいるそうで(ツイートの悪いジョークです)、他国ではコロナ検査をやめちゃったせいで見かけコロナが減っているのかも。「コロナも検査しなけりゃただの風邪」とかいう悪いジョークもありましたが、イギリスなどでは実際コロナで医療崩壊して病人の医療アクセスが悪くなっている状況もみられるそうです。フランスなんかもなくなる方も激増中とか。それでもそれを受け入れて行動制限や全数把握はしないみたいですね。6月初めまではあんなに心配されていた北朝鮮の発熱患者の異常な増加。オミクロンのせいと思いますが、あれからどうなったのか。都市封鎖を続けているとは聞かないし…本当に解熱作用のある葉っぱと行動制限だけで終息したのか。それなりに犠牲を出しながら全人民に広がり、終息したのかもしれませんね。オミクロンのような弱毒コロナだからよかったですが、デルタとかだったらと思うと背筋が凍りますね。
ワクチンの話に戻ります。コロナワクチン、デビュー時は鳴り物入りで救世主とあがめていましたが、狡猾なコロナのおかげで、いまでは巷でポンコツワクチンとうわさされるまでに落ちぶれてしまった感も。mRNAワクチンという、不気味でいわくつきであることも手伝い、こどもでのこの低い接種率もうなずけます。今の武漢コロナ用のワクチンであれば、HPVワクチンのように本人や保護者の方に強く説得してまで接種する気にはなれません。せめて取り扱いが容易で、効くかどうかはよくわからないけど副反応は低くそうな組み換えコロナワクチン(ノババックス・武田社製・18歳以上使用可能)を乳幼児から使用できるようになれば考えてもいいかも。なんでもいいけど、今年起きた第5波から7波に関してはこどもでも大量の罹患者が出たので、mRNAワクチンのいろいろな効果を解析して私たちに公開してほしいと思います。万一2度のmRNAワクチン接種でオミクロン発症予防効果や感染予防効果があれば、ワクチンが再評価されるかもしれません。繰り返しになりますが、コロナワクチンの評価はこどもの2回のワクチン接種者と非接種者での発症や感染力、それに重症化予防効果の比較のデータを待ちたいと思います。
5.こども病院を医療崩壊させたコロナ診療の問題点
今年の春以降、デルタが終わり、オミクロンに替わって、第6波、第7波が襲来し、それまで患者数激減に悩み、病院経営に頭を悩ませてきていた小児科医にもやっと出番が回ってきました。で、でてきたニュースが、7月25日、大分こども病院の医療ひっ迫による平日の一般外来停止のニュースです。7月29日のヤフーニュースに出ていた読売新聞の記事によれば、7月16~18日3連休の外来数が通常の1.8倍の360人受診した、朝9時時点の患者受付数100を超えた、待ち時間最大5時間になった、ということでした。
これまでインフルエンザやロタ腸炎、RS細気管支炎などの大流行の時でさえ医療崩壊までは起きなかったこども病院。ではなぜ、今回コロナであの不死身のこども病院が医療崩壊したか。私は当事者ではなないので、本当のところはよくわかりません。想像だけしてみました。以下は私の考えたフィクション物語です。そんなこともあるかもね、と気軽にお読みください。
やはりコロナが指定感染症、つまり「新型インフルエンザ等特別措置法」でいまだに2類相当の扱いを強いていることに尽きると思います。新型コロナは、感染症法上、「新型インフルエンザ等感染症」に分類されます。最初はコロナがどんなものかよくわからなかったこともあり、世間でよく言われている「2類感染症」相当の強い規制が敷かれ、患者は原則入院とか、厳しい制限がありました。しかしコロナ対応病院の医療崩壊を受け、またワクチンが進んだ段階で軽症患者がほとんどになったという現実を受け、どんどんグダグダに改善してくれました。原則入院措置が、軽症者はホテル療養や自宅療養を可能にし、隔離期間や健康観察機関もどんどん短縮してくれており、今では我々も覚えるのをあきらめてしまうくらいです。実情に合わせて法解釈をどんどん簡素化しており、だいぶんグタグタにしてもらってきました。
とはいえ、まだまだいろんな手続きの部分で2類感染症相当の対応が必要なのです。例えばマスクなどの標準感染防止策や有熱者を分けて診療する発熱外来での診療、検査が必要で、発生時、診断した医師は「直ちに」発生届を管轄保健所に出さなければならない全数報告義務。以後、保健所は軽症者を含め、全患者の健康観察が義務化され、保健所職員は24時間365日の業務を課せられているのは周知のとおり。受付では新患患者カルテなどの作成変更に時間を取られ、診療にたどりつくまでにも時間がかかる。発熱外来では、患者家族を厚い車内で待機させ、長時間待たされた後に、診察医は宇宙服まがいのガウンを着せされ、帽子やフェースマスク、分厚い手袋何枚も重ねてのいでたちでようやく参上。そのうえ息がうまく吸えないN95マスク着用で、診療医や介助スタッフは心身ともに衰弱してしまう。そのうえ、コロナ陽性の場合はその場で発生届の作成と保健所電話連絡、FAX郵送などで、診療時間よりむしろくだらない書類書きに時間を取られる。会計では、コロナの検査が公費のせいで、また診断確定時点で公費医療切り替わるので、保険診療と公費医療でごちゃごちゃに混在し、医療費精算がとても複雑で受付業務に負担がかかる。そういうわけで患者一家は、診療が終わった後も会計や薬局などでまだ長時間の待ちとなります。帰ってからも、保健所からの一報を待ちづづける日々に入ります。このように、季節性インフルエンザや百日咳などの5類感染症に比べて、正直病気は大したことないのに(こどもでは)、やらなければならないことは5類、ではなく1人5倍くらい時間と手間を取ることになります。
そして医療崩壊のとどめのスイッチは職員の家族がコロナになった時に押されてしまいます。家族がコロナの診断を受けてしまうと、家族もろとも一緒くたに濃厚接触者にさせられ、一定期間職場出勤停止措置となります(これもグタグタに改善していただき、最近ではエッセンシャルワーカーは数日に短縮された模様です)。これでは残された戦士たちにより多くの負担がかかり、泣き出してしまう人もでるのも無理はないと拝察いたします。以上、私の想像でした。現実はもっと大変だったのかもしれません。
6.みんなに吉報!コロナ扱いがインフルエンザ並みになるかも
こどもにとっては、たぶん大方は風邪に毛が生えた感じのコロナで、なんでこんな大騒ぎになるんだろう。すべては「新型インフルエンザ等特別措置法」をいまだにグダグダに改善してくれず、いまだ2類相当のことをやるよう強いているから、発熱外来をやる医療機関の数は増えず、これまでなんとか耐えて一生懸命やってきたこども病院にどっとしわ寄せが行き、最初に医療ひっ迫を起こしたと考えます。
九州の小さな県でもこのような医療崩壊に陥ったことをようやく重く受けていただき、政府もようやく重い腰を上げてくれそうです。「新型インフルエンザ等特別措置法」をよりいそうグタグタに改良し、とりあえず「全数把握」を取りやめにすることを検討する準備に入ろうかなと丁寧に検討し始めたようです。冗談はさておき、この変化はでかいです。全数把握がなくなるだけで、全然世界が変わりますね。最初に思いつくのは、毎日昼3時ごろに「ピッピ」の音ととともにテレビ速報される東京の感染数が出なくなります。だって発熱外来からの日々の報告がなくなるから。これだけでも気分的にだいぶん変わります。
また全数把握をしない、ということは保健所はだれがコロナかわからなくなるということで、ということはたいへんだった保健所による日々の感染者全員の健康観察が不要となるはずです。そうなれば保健所をはじめとする公的機関がコロナの呪縛からやっと解き放たれます。健康観察とか、本来はこれまでのインフルエンザやRSの時のように、最初に診た診察医がすべきだし、筋が通っていると思います。診療医もただちの全数報告義務がなくなり、診療を中断して発生届を作成して直ちにFAXする必要がないだけでだいぶん楽になり、診察速度が上がります。以後はインフルエンザや感染性胃腸炎などのように、限られた定点機関だけによる週単位の感染症発生動向調査報告だけになると思われます。この報告で必要なのには、性別、年齢別のコロナ患者発生数だけです。個人名の届け出は不要になると思われます。それに検査やコロナ診断後の加算や処方箋料、薬代、入院費用などの診療費はひきつづき公費のままになりそうです。さすがに聞くチカラ。医院にとっては会計の煩雑さは残りますが、物価高ということもあり医療費代は馬鹿になりません。とりあえずいうことないですね。
そして公的機関が全数把握しなくなることの最大のメリットは、公的機関による濃厚接触者の特定と把握がなくなることです。これまでは家庭内感染や職場内感染者発生により周囲の人々は濃厚接触者の特定が行われ、隔離待機が公的機関から要請されていましたが、これがなくなるものと思います。もちろん各職場で適切なレギュレーションはかかるでしょうが、おそらくは各職場のいろいろな状況に応じて柔軟に取り決めることができるようになると思われます。これまで濃厚接触者の隔離待機要請で企業や公的機関の社会経済活動に大きな影響を与えていました。特に沖縄中部病院や大分こども病院で起きた医療崩壊の元凶はこれだと考えられますので、各医療機関の院内感染管理の状況に応じて柔軟に決められることになるのは大きいと思います。院内感染対策はもちろん大切ですが、それだけにこだわり、通常診療ができなくなるとか、例えば救急搬送困難事例が増えるとか、がんなんかの手術を延期せざるを得ないとか、お産を取りやめるとかしたら、本末転倒ではないかと最近は思うようになったのですが、皆様方はいかがお考えでしょうか。
それに公的機関による全数把握が不要になれば、これまで発熱患者を診てこなかった町の開業医の先生方も少なくとも今よりはたくさんみるようになると思います。各地で起きている医療崩壊は、熱で具合の悪い患者は発熱外来をしているところでないとみてはいけなかったことも一因です。インフルエンザ並みの対応でよければ、多くの開業医の先生方も当たり前の診療に戻ると思いますので、コロナとかインフルエンザとか風邪とか関係なく、具合の悪い患者さんをきちんと診て、その状態に応じて適切に対応してきた3年前の医療が戻ると思います。このように当院のような小さな町のクリニックでも、二次病院でも、地域に求めれること、自分の与えられた役割をできる範囲でいいので当たり前にこなすようにする。当たり前のことを当たり前にすることで、こども病院や発熱外来をしているクリニックの負担も減り、徐々に日常を取り戻すことができるのではないでしょうか。
もしコロナの凶悪なものが出て、重症者や死者数が増えてくるようであれば、例の「新型インフルエンザ等特別措置法」は柔軟に改悪することもできるのではないかと思いますので、そうなったケースを念頭に置いて、今はやりの「プランB」を、今からでもツイッターやテレビでご活躍中の専門家の先生たちにでも考えていただければいいじゃんじゃね、と思っています。冗談はさておき、院内感染対策ももちろん大事ですが、それにとらわれて感染の恐れのある人はお断り、では、ちゃんとやっているところだけにしわ寄せがかかるのは当たり前。「コロナの重症者をみとらんな~んもしらん一町医者が、なにを偉そうなことを言う」と炎上しそうですが、一番大切なことは、救急搬送が必要な患者さん、入院が必要な患者さんをきちんと受け入れ機関(大分であればこども病院や県病小児科)がみれるようにすることじゃないかなと思います。いま大分の医療ひっ迫状態はステージ4で、いわゆる医療ひっ迫、医療崩壊状況のようですが、感染症法解釈でのコロナの位置づけが変わるのをきっかけに、昔インフルエンザの時にやってきたように、地域の開業医を含めた各医療機関が、それそれの事情に合わせて柔軟に対応して、地域から期待されている役割を淡々と遂行する。これに尽きるのではないかと考えます。