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シックキッズニュース 4月号 No59 こどものコロナの実態は?診療所からみたこどものコロナとは 

シックキッズニュース 4月号 No59 こどものコロナの実態は?診療所からみたこどものコロナとは 

今年の桜はいつにもましてきれいな気がします。そんな春爛漫のなか、蔓延防止措置もやっとあけました!しかし、ウクライナではロシア侵攻がすでに泥沼化の様相で、ホント一難去ってまた一難。いやになります。3回もワクチンさせられてきつい思いをしたのに、まさかの4回目!嘘やろ、って感じですが、なんか危機を煽れば支持率が上がるみたいなので、次の国政選挙まではしかたないのかな。ワクチンも今のところ、希望者はどうぞ、という感じなので、日ごろからコロナのこどもさんたちにたくさんウイルスをいただいていて免疫をつけてもらっているおかげでどうもない私は、武漢で2年前に流行したウイルス用のワクチンならば個人的にはもういいかな、と思っています

さて、またコロナの話かよ、と思われるかもしれませんが、今月もこどものコロナのお話です。今年1月後半からこどものコロナ感染が騒がれ始め、各地で園や学校でのクラスターが問題視されるようになりました。当院のような小さな町の診療所でもコロナを普通に毎日診断している状態なので、当院受診のおこさんのコロナ感染の状況を、個人が特定されないよう気をつけながら、さわりだけお話させていただきます。また最近、すっかり戦争に目を奪われているマスコミなどでも少しですが話題になった、日本小児科学会が発信したこどもコロナの熱性けいれんについて、無茶苦茶増えてるんじゃね、みたいな誤解を生じさせやすい表現で毎日新聞やヤフーで出ていましたので、その辺にも触れたいと思います

なお、今回はコロナ全体をみているわけではなく、あくまで私の小さな町の医院を訪れ、コロナ抗原検査をしたお子さん(一部保護者も)を対象にした検討です。論文で査読を受けて発表されたものでもなく、エビデンスレベルは最低であることを前提にお読みください。これでコロナのすべてを語っているわけではありませんが、それでも何かしら皆様に発信できるかも思い、当院のデータを紹介します

今月のフォーカス こどものコロナの実態は?診療所からみたこどものコロナとは

① コロナ検査件数の推移

② コロナ陽性者数の推移

③ オミクロンでは小学生以下の幼児や児童は園や学校から、中学生以上は家庭内感染が多かった

④ 診断当初はコロナの重症度は高くない、がその後は不明

⑤ オミクロンの熱性けいれん、増えていると新聞にでていたけど?

⑥ こどものコロナでは20~30人に一人くらいの割合で悪くなるかもと推定

コラム 今後のコロナ診療はどうあるべきか

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① コロナ検査件数の推移

当院は2020年秋には県の発熱児の「検査・診療機関」の指定を県から密かに受けており、比較的早期の段階から保健所の受診・相談センターで受けた発熱した方の診療を行ってコロナ抗原検査をしてきました。2020年11月14日から2022年3月末現在、17か月(約1年半)の間、当院では約350件のコロナ抗原検査を行いました。病児保育などに預けるために微熱が出るたびに何度も何度も検査をしなければならなかったかわいそうなお子さんも何人かいますが、今回は検査件数なので、そのたびにカウントしております。その検査実施状態(陽性者ではありません)を週足で示します

昨年のオリンピックのころの第5波までは熱がある人は保健所の受診相談センターの紹介、あるいは第5波くらいからトレンドになった病児保育入所のための念のため検査くらいしかありませんでしたので、検査数もかなり抑えられており、第5波でたまに週に5人超えることがあった程度でした。ところが、今年に入り、オミクロンが主流になった第6波では、こどもの発熱児の受診が急に増え、検査をする機会も大幅に増え、週に30件を超える検査をするようになりました。その傾向は現在でも続いており、最近忘れられがちになってきた気の早い専門家は鬼の首でも取ったかのように「すわ第7波だ!BA.2だ!」とみている方々もいるようです

② コロナ陽性者数の推移

それではいよいよ当院で判明したコロナ抗原検査陽性者の週足の数を示します。当院でコロナ抗原検査の陽性と診断した発熱児がでたのは、検査を始めて10か月も経過した2021年9月9日。検査を始めて65番目の検査のお子さんでした。デルタでの第5波まではコロナ陽性児は1名のみでした。結局なんやかんやで昨年12月まで94回検査をしましたが、陽性児はわずか1名。陽性率わずか1%と藪医者ぶりを発揮。このころは熱があればコロナではない別のウイルスだ、と自信をもって思える状況でした

しかし、この傾向も検査数同様、オミクロンによると思われる第6波が始まった今年から事態は一変しました。発熱で受診されるお子さんも多くなり、とりあえず検査をしてみると、週に5~10件と、結構陽性者がでてきました。1月から3月末まで249件の抗原検査を行い、陽性は60件。陽性率は24%に跳ね上がりました。陽性児の多くは、両親兄弟も発熱や感冒症状があり、要するにコロナ濃厚接触児が多くを占めています。が、それでもたまに感染ルート不明の陽性者もぽつぽつ出るようになりました

③ オミクロンでは小学生以下の幼児や児童は園や学校から、中学生以上は家庭内感染が多かった

当院で診断できたコロナのお子さんは合計60名(3月末現在)なのですが(まだ2回コロナ陽性になった人はまだいないので)、陽性者の方々は、どこで感染したのでしょうか?まず、登園、通学しているかどうか見てみましたが、下の図のように園児が24名と40%を占めています。保育園によっては大規模クラスターが出たからです。やむをえません。以下、小学生19名(31.7%)、中学生8名(12.3%)、未就園児と成人が4名(6.7%)ずつ、高校生1名(1.7%)でした。当院は小児科医院ですので、こどもが多くを占めているのは当然です

次に推定される感染ルートですが、家庭内感染と思われる方が22名(36.7%)、園や学校で感染が推測されるお子さんが31名(園17名、小学校13名、中学校1名)で51.7%、感染ルート不明の方が7名(11.7%)でした

では最も多かった園児で推定される感染ルートですが、園児24名中、園で感染したもの17名(70.8%)、家族内感染が5名(20.8%)、不明が2人(0.83%)と、大半は流行中からの園で感染していることが推定されました。小学生19名では、小学校での感染推定者が13名(68.4%)、家庭内感染5名(26.3%)、不明1名(5.2%)と、小学生でも学校での感染が多いことが示唆されました。一方、中学生8名では、家族内感染が5名(62.5%)、不明3名(37.5%)、中学校1名(1.3%)と、学校での感染が減り、一気に家庭内や不明が増えました。高校生や成人計5名では全員が家庭内感染でした

小さいこどもさんを診ている園や小学校ではどうしても有効な感染対策を取ることは不可能で(そもそもこの年代では感染対策などしょせん無理)、オミクロンだと1人園に持ち込めば普通のライノウイルスのような風邪ウイルスのように瞬く間に園児に広がるからと思います。一方、中学生以上になると、感染対策が有効なこともありますが、年長になるにつれ学校や社会での話をしない傾向になり、感染状況を把握しづらくなることで、家庭内感染以外はルート不明となるのではないかと推定します。コロナもオミクロンになり、ようやくインフルエンザ同様、こどもが園や小学校から家庭に持ち込み感染を広げる状況になってきたようです。12歳以上のコロナワクチン2回接種率が80%に迫っており、ワクチンができない子供が園や小学校などから家庭に持ち込んでも、さほど医療には負担をかけない状況にはなっていると思われます

④ 診断当初はコロナの重症度は高くない、がその後は不明

コロナはこどもでは風邪程度、という話を聞きます。オミクロンが流行るまでは、私自身コロナの診療はホテル療養者の健康観察くらいでしたし、そもそも実際に子供のコロナを診察したのはデルタ流行期に診た1名だけでしたので、今年になってコロナが子供でもどんどん出てきて、じゃあ一体こどものコロナはどうなのか?・・・実態について大変興味を持っていました。皆さんも興味があると思います

それで当院でみた60名のこども(数名保護者)のコロナの重症度はどうだったのか・・・実は今回の調査は、第6波が続いている(というか、第7波の始まり)の段階の3月末までで締め切ったばかりで、実はまだ詳細な検証はできておりません。ただ初診時の重症度に限れば、検証するまでのことはありませんでした。当院でみているようなこどものコロナの方は年齢が高くても中学生までなので、ワクチンはほどんど接種できていませんが、少なくとも初診の時点でこども病院や県病へ紹介が必要な方は60名のうち1名もいませんでした。つまり、初診時の症状は他の感染症と同様程度、インフルエンザやアデノなどに比べるとずいぶん軽いという印象を持っています

ところが、コロナは指定感染症なので、診断後は保健所に直ちに報告し、健康観察が保健所に丸投げとなります。当院初診で診断したコロナのお子さんがその後どうなったのか、残念ながら経過がフォローできませんし報告もありません。コロナでは最初は軽い症状から始まり、一部の方が数日過ぎたころから急に悪化する、とも聞きます。初診時に症状が軽いからといって「コロナはやっぱ風邪でしょ」とは必ずしも言えません

事実、1名、当院で診断したコロナの幼児が、その後なかなか解熱しない、と電話がかかってきました。保健所経由で病院を紹介したほうがいいか、とも思いましたが、熱さましなどでもうすこし様子を見たい、ということでした。その後は連絡がありません。またデルタ株流行時にコロナ陽性の中学生は、たまたま私がホテル療養担当医のときに、同じホテル療養されていましたことを知りました。熱がなかなか下がらず、ホテル療養での経過観察となったようです。その後、外来に他の主訴で来られた時に伺ったところによりますと、その後は後遺症など残さずに経過しているとのことで安心しました。また当院ではコロナ検査で診断しておらず、この集計には入っていないのですが、2名ほど保健所からの電話診療依頼で小児患者さんを受けました。1名の幼児は熱性けいれんをおこした、と電話診療の依頼があり、保健所へ2次病院での診療を進言しました。あと1名の方は小学生ですが、3日目になっても高熱が続いてきつい、とのことでしたので、このかたも二次病院での診療を保健所に進言しました。お二人がその後どうなったかは、そのご連絡がないので不明です

⑤ オミクロンの熱性けいれん、増えていると新聞にでていたけど?

熱性けいれんとは、生後6か月くらいから5歳くらいのこどもにみられる、発熱時に起こるひきつけのことです。日本人のこどもは熱性けいれんを起こしやすいことは知られています。乳幼児のこどもさんの100人に数名、一クラスに必ず1人以上は、1回は経験しています。熱性けいれんは多くは良性で自然とん挫するのですが、下痢を伴うけいれん時などでは繰り返し頻発することもあり(これは熱性けいれんとはいわず、軽症胃腸炎関連けいれんといいます)、また、インフルエンザや突発性発疹の時のけいれんは特に注意が必要といわれ、反復しておこしたり、20分以上重積したり、解熱後なおってから無熱性のけいれんを頻発して、脳症だった、ということをしばしば経験しています。だから、熱性けいれんを起こしたときは、時間を問わず救急搬送して2次病院で採血検査や数時間から一晩の外来・1泊入院による観察が必要です

さて、こどもでも普通に感染するオミクロンが登場してから、発熱するこどもの中に、やはり熱性けいれんを起こす例が報告されるようになりました。特に3月16日、毎日新聞のWEBサイトにでた記事は、オミクロンで多くのこどもが熱性けいれんを起こしているかにミスリードされやすい気を付けなければならない図を添付していました。日本小児科学会の資料より、と銘打たれた下の図です

3/16 毎日新聞WEBサイトから引用

このオミクロンの熱性けいれんの話は、3月15日に開催された厚労省主催の第76回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで日本小児科学会の森内浩幸・長崎大学教授から提示されたものを、おそらく新聞社が作成してたのではないかと拝察します。少なくとも森内先生の資料から同じような図は見当たりませんでした。この図は個人的には(いやおそらく多くの方も)問題ありと感じています

この図で、1歳から4歳までの熱性けいれんがオミクロンで9.4%だった、と記載されていますが、「データベースを用いた国内発症小児COVID-19症例の臨床経過に関する検討」に基づく公開情報から熱性けいれんを抽出したのではないか、考えます。この元になるデータは、コロナ初診患者を診ている当院のような場末の医院が、わざわざ登録するわけはありません。多くは全国の大学病院や有名大病院の小児科、あるいは小児専門病院などが中心となってデータを蓄積しているのです。その証拠に、現記載時点の4月2日の段階で、わずか5902例のコロナの報告しかありません(20歳未満)。一方、厚労省が集計している実際の20歳未満のコロナの感染者全数はすでに15万人を越えています

ということで日本小児科学会に登録されている6000名弱というのは全体の割合としては4%、25分の一以下となります。つまり、毎日新聞は、このデータは、けいれんを起こすくらい悪いこどものコロナを中心に(というか重いコロナだけといっても過言なし)集計されたものを使用したようです。当然、けいれんを起こすくらい悪い患者さんたちを中心に集積されているので、9.4%という数字をたたき出しても何の驚きはないです。ただ言えることは、デルタまでの時代は、熱が出る子供も少なかったし、熱が出てもけいれんをおこして登録されるおこさんも数パーセントとかゼロしたけれども、オミクロンになったら、普通に発熱して普通にけいれんもおこしますよ、しかも5歳以上でもけいれんおこしている子がいましたよということです(インフルエンザでは小学生のけいれん搬送は時にあることです)。ぶっちゃげていえば、コロナもオミクロンになってやっと熱性けいれんをおこすようなインフルエンザ(もしくは風邪)レベルになりましたね、ってことかもしれません。こどもにとっては、ですけど。これ以上は「開業医風情がコロナを甘く見やがって」と炎上しそうなので、もうこのへんにしときます

⑥ こどものコロナでは20~30人に一人くらいの割合で悪くなるかもと推定

こどもがたくさんかかるようになったオミクロンがでて、こどものコロナの実態が今後いろいろ報告されると思います。特に脳炎・脳症、心筋炎、肺炎、MIS-C(川崎病もどき)などの発症の可能性がどうなのかなど、詳細なこどものコロナのデータはこれからでてきます

実際私自身も、基礎疾患の有するお子さんでけいれん、脳症のコロナ陽性の事例を聞いたことがありますし、川崎病もどきになった年長者の方の話も小耳にはさみました。私自身、市の電話診療の担当を1週間ほどしましたが、1名熱性けいれんが起きた幼児と、他に熱が三日以上下がらない小学生がおり、保健所に二次病院受診を手配するよう強く勧めました

前項で述べたように、20歳未満のコロナ患者15万人中6000人は日本小児科学会に登録されていたことをみると、コロナで悪化して大きな病院などでの観察が必要なこどもの割合は、罹った子のうち20~30人に一人くらいかな、と推測しています。当院でみた60名の患者さんも数名はなかなか熱が下がらなかったようですし、こどものコロナではおおむねこれくらいの割合が中等症にあたるくらいに悪化するという見通しには矛盾はないと考えます

ということで、基本的にはこどものコロナは、少なくとも初診でインフルエンザのように顔面真っ赤にはらして着込ませて母親にだっこされて診察室に入って来るような重症感のあるこどもは皆無なので、今のところ風邪レベル、悪くてもインフルエンザのチョイ下くらいではないかという印象を持っています

コラム 今後のコロナ診療はどうあるべきか

今後、こどもでもコロナにふつうにかかって、家庭にウイルスを持ち込んで広げるパターンが増えてくると考えます。最初のころはワクチンも治療薬もなく、かかった高齢者がどんどん悪化して大病院の医療を圧迫、医療崩壊を起こしていました。けれど、コロナ騒動が始まり早2年。私たちはワクチンも手に入れ、中等症以上に使用できる治療薬もあり、そしてウイルスは確実に弱毒化しています。おかげで、第6波での検査陽性者数はこれまでの流行の波の比ではないにもかかわらず、幸いにも一部の論者が煽っていたような大病院の医療が立ち行かなくなっているというお話は聞きません。戦争とか物価高でコロナの話題におもしろ味がなくなり、以前のように取り上げて盛り上げるマスコミもなくなったせいかもしれませんが

しかし、いまだにコロナが指定感染症のままなので、県や市町村、特に保健所のコロナ関連業務の関係者の皆さん方は、陽性数がどんどん増えているのに、しかも多くは軽症や時に無症状にかかわらず、これまでと同じように対応しなければなりません。さすがに小児科医院では患者来院数激減もあって(当院だけかも笑)背に腹はかえられず、普通にみているところが大多数ですが、軽症者が増えても、いろいろな事情で診療をお断りしている医院もまだ目立ちます。そうなればコロナ患者さんはかかれる医院がないので、市が委託している電話診療に診療依頼するしかありません。保健所や電話診療の担当医の負担もますます増えます。実際私のケースでは、自分の患者を診ながらの電話診療となるのは覚悟していましたが、ワクチン集団接種会場でワクチンの問診をしている最中にもどんどん診療依頼の電話がかかってくる状態でした

やはり、普通の感染症と同じく、コロナでもなんでも、体調不良時に昔のように普通に近くの医院を受診して、適切な検査をして診断をつけ、診療医が責任をもって患者の健康観察などのフォローをする。医師の判断で入院が必要と判断したら二次病院に紹介して、病状に応じたケアをする、という当たり前の診療に戻す時が来ているように感じます。今のように、鼻ぐりぐりで診断だけして後は保健所に全部丸投げ、では、さっさと医師免許返上しろ、とみんなに言われそうで・・・もういい加減、24時間365日、心身ともにボロボロになりながら先の見えない戦いにあえいでいる保健所の方々を解放してあげてましょう。これからは私たち町医者がきちんと風邪をみてあげる時期に来ていると思うのですが・・・皆様はどう感じますか?

注意 ※コロナを風邪と馬鹿にしているのではないのです。そもそも医者は風邪を馬鹿にしていません。風邪の患者さんの中から重大な病気に進行させないよう、あるいは重大疾患がないかにきちんと見分けるのが町医者の一番の腕の見せ所、と偉そうなことを申し上げているのです

診療内容:小児科・アレルギー科・予防接種・乳児健診
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