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シックキッズニュース 2月号 No57 こどものコロナワクチン接種どうする?日本小児科学会の考え方を深堀してみた

シックキッズニュース 2月号 No57 こどものコロナワクチン接種どうする?日本小児科学会の考え方を深堀してみた

2022年になっても、相変わらずコロナコロナでうんざりしていますが、皆様はいかがですか?もうコロナはいいかな、思っていましたが、ちょうど執筆にとりかかるころ、1月20日に、5歳~11歳児に対するファイザーワクチンが特例承認され、いよいよ「こどものコロナワクチン接種」が近づいてきました。コロナ騒動ですっかり減った来院患者さんのなかでも、こどもさんに対するコロナワクチンの関心は非常に高いようです。承認前日の1月19日にこの年代のワクチン接種に対する日本小児科学会の公式も出たことだし、それを踏まえ、こどもに対するコロナワクチン接種をどう考えているか、一開業医の個人的な意見も多く、炎上しないよう気を付けながら述べたいと思います。

今月のフォーカス こどものコロナワクチン接種どうする?日本小児科学会の考え方を深堀してみた

1.ワクチンがもたらしてきた恩恵

2.日本小児科学会の1月19日の「5歳~11歳小児への新型コロナワクチンに対する考え方」を深堀してみた

3.で、どうなの?日本小児科学会は5~11歳小児へのワクチン接種を勧めているのか?

4.で、こどもへのコロナワクチン、結局どうしたらいいの?

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1.ワクチンがもたらしてきた恩恵

ワクチンを前もって接種していると、体に免疫ができて、その病原体に感染しても感染症を発症しない、あるいは感染症を発症しても軽く済むことが期待されます。私たち小児科医は、乳幼児に対する予防接種により、乳児の細菌性髄膜炎、麻しん、風しん、水ぼうそうなど、30年前に医者になった時には普通にみられた重大な感染症が、10年前くらいから本当に消失してしまったのを目の当たりにしています。乳児結核やジフテリア、日本脳炎に関しては、30年以上小児の診療をしていますが、実際みたことがありません(もしかしたら、ウイルス性髄膜炎や夏風邪の一部には日本脳炎ウイルスによるものが混じっていたかもしれません)。ワクチンの偉大な効力の恩恵を受けているわけです。

一方、ワクチンといえども異物であり、もともと健康な人に投与し、無理やり免疫反応を誘導させるわけです。多くは軽度ですが、接種後に体調不良になることがあります。日本は1990年ころから、ワクチン接種後の体調不良がクロースアップされ、「ワクチン禍」として世論に認識されるようになりました。新たなワクチンをどんどん開発している他の先進国をしり目に、日本ではワクチン開発や接種を積極的に行われなくなりました。2,000年の初めのころには、例えばインフルエンザワクチン接種がほとんどゼロになり、1,990年後半から2,000年前半にかけてインフルエンザが大流行し夜間休日外来がパンクして医療ひっ迫が起きたとか、インフルエンザ脳症の問題が起きました。また、集団接種から個別接種メインになり、予防接種率、特に麻しん・風しんワクチン接種率がガタ落ちしました。2,000年ごろには日本は麻しんの輸出国として厳しく批判されていました。そのころは日本のワクチン接種状況は、本当に「北朝鮮、アフガニスタン、アフリカなどの内乱地区なみに遅れている」と他の先進国から嘲笑されていました。2007年にアメリカで麻しんが突発的に流行した際に、同年アメリカ・ペンシルバニア州で開催されたリトルリーグワールドシリーズに参加していた2人の日本選手が感染源、と特定されたことで、大問題になりました。

この事件に先立ち、2007年の4月ころから「MRワクチンを1歳の誕生日にプレゼントしよう」キャンペーンを行っていましたが、より一層アメリカなどの外圧がかかり、国や市町村も本腰をあげてMRワクチン接種が8割以上達成して、麻しん、風しんは日本でも問題にならないくらいになり現在に至っています。現時点では、HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)と百日咳ワクチンが含まれているトリビック(いわゆる3種混合ワクチン)の小学校就学前と中学校入学前の追加の定期接種がいまだになく、世界に遅れているくらいで、だいぶんまともになりました。

2.日本小児科学会の1月19日の「5歳~11歳小児への新型コロナワクチンに対する考え方」を深堀してみた

日本小児科学会とは、ウィキペディアによれば、「日本の小児科学を発展させることを目的とする学術団体」ということです。私を含め日本の小児科医のほとんどは、医師免許をとって小児科学教室に入局した瞬間に、なんとなく日本小児科学会の会員になり、何気なく会費を毎年払い、学会にも参加して、おまけに特に特典もない専門医も私の場合、試験が簡単な認定医時代にゲットして専門医に自動更新の時代取得して漫然と更新中です。そんな日本小児科学会ですが、その権威は絶大です。小児科医もいろいろな考え方の人がいますが、学会員であろうとなかろうと、普通の小児科医は学会提言を最大限尊重します。日本を代表する最高レベルの小児科医の評議員の先生方の総意ですので、テレビで世間によく知られるようになった “マスコミ認定”専門家やご意見番タレントたちの戯言とは重みが違います。新型コロナワクチンに関しては、これまで「新型コロナワクチン~子どもならびに子どもに接する成人への接種に対する考え方」で提言しました。今回のワクチンに対する考え方以外にも、デルタ流行中の昨年8月に出した「現在の新型コロナウイルス感染流行下での学校活動について」、「乳幼児のマスク着用の考え方」、「子ども及び子どもにかかわる業務従事者のマスク着用の考え方」などコロナ関連の提言をしています。

1/19に日本小児科学会がホームページに示した子供へのコロナワクチン接種の考え方

日本の小児科学権威の頂点である日本小児科学会が表明した「5歳~11歳小児への新型コロナワクチンに対する考え方」は我々日本のすべての小児科医に指針を与えてくれるはずなので、まず「現時点の感染状況とワクチンの知見」を参照文献など含め解説し、それを踏まえ、学会の総意としての「ワクチン接種の考え方」をどう考えればいいか考えてみました。まずは簡単に実際の提言にネットでアクセスし一読され、そのうえで以下の深堀解説に目を通していただければ幸いです。

① 国内の小児コロナ感染症のこれまでの現状について

昨年12月にアメリカの小児感染症学会の公式雑誌である小児感染症学会雑誌(JPDIS)に投稿された「小児における入院COVID-19の臨床的特徴:日本のCOVID-19レジストリからの報告」に発表されたデータをもとに、「国内における5~11歳の新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)症例の大多数は軽症ですが、感染率が同年代人口の1~2%にとどまるなかでも、酸素投与などを必要とする中等症例は散発的に報告されています。今後、全年齢において感染者数が増加した場合には、ワクチン未接種の小児が占める割合が増加し、小児の中等症や重症例が増えることが予想されます」と警告しています。では引用された論文を見てみましょう。

本論文掲載の雑誌

この論文で対象になった患者さんは2020年1月から2021年2月(デルタ出現前ですので注意が必要)の14か月の間にCOVIREGI-JP(コビレジ・ジャパン)という全国の医療機関が参加しているデータベースに登録されたコロナPCR陽性の18歳未満の入院患者さんです。

ちなみにこの研究期間中、全国527施設のコロナ感染症(COVID-19)の合計36,430人の患者さんがコビレジ-ジャパンに登録されました。うち、18歳未満の入院患者さんは1,038人でした。年齢の中央値は9.0歳、2歳未満が169人(16.3%)、男性571人(55.0%)でした。入院児しか解析していませんが、入院時に308人(29.7%)は症状がなく、念のための入院か保護者の付き添い入院など、医学的には入院の必要がない児が3割も含まれています。その入院時に無症状だった308人のうち、入院中に46人が38度以上の発熱や酸素飽和度が96%未満に下がる、頻脈・頻呼吸の症状を呈したようです。

基礎疾患のある児はわずか60人(5.8%)。基礎疾患の内訳は、喘息が36人で最も多く、肥満8人、先天性心異常5人、合併症のない糖尿病4人、染色体異常3人、高血圧2人、その他が7人でした。その他には幸いにも、心筋梗塞、認知症、慢性閉そく性肺疾患、肝障害、合併症のある糖尿病、リンパ腫、転移性固形がん、AIDS患者はいませんでした。

それで一番の関心事項である中等症から重症例ですが、たった15人が酸素吸入を必要としましたが、デルタ出現前ですが人工呼吸や体外式膜型人工肺(いわゆるエクモ)を必要とした患者は一人もいませんでした。もちろん経過は良好で、この調査では死亡例は1例もありませんでした。入院期間の中央値は8日間で、症状のありなしで入院期間に統計学的な有意差が出ることはありませんでした。

ということで、昨年12月31日付で公表された今回のコビレジ-ジャパンの研究結果をみると、デルタ前のデータでデルタ以前の話にはなりますが、日本ではこどもに限れば、COVD-19は、少なくともインフルエンザ、RS、ヒトメタニューモ、百日咳やマイコプラズマ肺炎などありふれた疾患と比べても問題にならないくらい軽いということがわかります。デルタはともかく、今流行中のオミクロンとか、実際に多くの診療をされている先生たちも、武漢やアルファに比べても驚くほど軽いと発言されています。肥満や心臓病、悪性疾患、糖尿病、免疫不全などの基礎疾患がない、いわゆる一般のこどもにとっては、コロナはやはり風邪としていいようです(気管支ぜんそくなどアレルギー疾患はコロナでは基礎疾患にならないようです)。今は普通にこどももコロナにかかって当院のような街の開業医も普通に何人も診ていますが、いまのところ、オミクロンならば、こどもにとってはやっぱり昔からある風邪コロナの印象です。お子さんがコロナといわれても、基礎疾患がなければ「重症化するんじゃないか」などと過度に恐れる必要はないようです。

② 今回ワクチン接種の対象には含まれない2歳未満(0歳から1歳児)と、基礎疾患のある小児患者で重症化リスクが増大する恐れがある

厚労省作成の「新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き第6.0版」を引用しています。この手引きのp20に、「小児例の特徴」の欄があり、【小児の重症度】について述べています。イタリアの報告をもとに考察しています。イタリアの小児コロナ死亡例は4人いましたが、すべて6歳以下で、心血管系の異常や悪性腫瘍の基礎疾患があり、コロナ感染症が原死因とは想定されていませんでした。小児コロナの臨床像を年齢別で比較すると、2歳未満の無症状率が20.2%と低かった一方、入院率が36.6%と高かったそうです。このイタリアの報告をもとに、2歳未満児と、基礎疾患のある小児患者で重症化リスクが増大することがある、と警戒しています。ただし2歳未満に対しては、日本で認可されているコミナティなどのmRNAワクチンは日本だけでなく世界中どこでも認可されていません。

イタリアの各年齢のコロナ患者の症状などの比較

この手引きには、デルタ流行中の昨年9月22日時点の日本小児科学会が登録しているこどものコロナ3,435例のデータも紹介しています。それによれば、ICU管理が14例(0.4%)、9例にレムデジビル(0.26%)、41例(1.2%)にステロイドの全身投与を受けたそうです。また厚労省が9月22日までの発表をまとめたデータも紹介していますが、コロナ検査陽性全160万例のうち、20歳未満が25万5468例(15.4%)。うち死亡例が2例、入院例は7,689例(3%)で、重症例の報告はありませんでした

③ 長期化する流行による行動制限が小児に与える直接的及び間接的影響は大きくなっています

これに関しては、とくに引用文献は紹介されていません。「厚生労働特別研究・新型コロナウイルス感染症に関連する母子保健領域の研究報告シンポジウム」というものが昨年3月15日に開かれ、「新型コロナウイルスの小児への影響の解明のための研究」という題で発表され、その資料がWEBで閲覧できます。

それによれば、こどもにとってコロナは、感染しにくく大多数は軽症ですみ、脅威ではないにも関わらず、こどもはコロナ流行で大変影響を受けている可能性がある、としています。例えば、「一斉休校」「修学旅行中止」「友人と遊べない」「入学式卒業式の中止」「部活動の停止」「学業の遅れ」「予想外の重症化」「体力の低下」をあげています。

このような過度な日常生活制限は、子どもの遊ぶ・学ぶ権利を奪い、心身の発達へ影響する、と強い懸念を表明しています。その結論を導く詳細なデータ(日本小児科学会のデータベース)を紹介しています。まず、感染した子どもが誰から感染したか、と解析しています。少なくともこのシンポジウムが開催される昨年春までは、75%は家庭内、それも半数は父親から感染していました。そして学校関係者からは4%、幼稚園・保育園関係者からは5%でした。そして実際のコロナに感染した子どもがどうなったか、ですが、2021年4月27日現在では87.9%は無治療で軽快していました。このころは変異体アルファが少しずつ入り込んでいましたが、子どもには感染しやすいのかもしれないが、イギリスのデータからは子どもで重症化が進んだ事実はない、としています。

重症化もまれにあるそうなので油断はできませんが、コロナは子どもには脅威ではないが、大人が家庭に持ち込まないことが大事であり、正確かつ迅速で継続的な疫学情報に基づいて、子どもの心身の発達への影響を考慮しつつ、子どもに対するコロナ対策を講じることが重要と結論付けています。

④ 国内で5~11歳に承認されたワクチンは「ファイザー社製」のみで、mRNA量は1/3の製剤であり、使用に際しては注意が必要であること。こどもでもコロナ発症予防効果は90%以上と報告されている。しかしオミクロンを含む新しい変異ウイルスへの有効性を示すデータは十分に得られていない

ここでは、今回5歳~11歳に承認されたファイザーワクチンについて紹介しています。12歳以上で使用されていたファイザー製ワクチン「コミナティ」に比べてmRNA含有量は1/3になるのに伴い、名前も「コミナティ」ではなくただの「ファイザー・バイオンテック社コウビッド-19ワクチン」で、キャップはオレンジ色でケースにもオレンジ色のラインが入っています。

今回5歳から11歳のこどもに認可されたファイザー・バイオンテック社COVID-19ワクチン。12歳以上のコミナティとは違います

90%以上の有効性のもとになった論文ですが、ニューイングランド・ジャーナルに発表されたアメリカのC4591007 Clinical Trial Groupが行った治験です。以下に内容を紹介します。

11月9日、ニューイングランドジャーナルに掲載された5歳から11歳のこどもに対するファイザーワクチン治験論文

まず容量設定試験の第1相試験ですが2021年3月24日から4月14日まで5歳から11歳までの48人のアメリカ在住のこどもを登録。人種は様々(白人は79%と最も多くアジア人は10%で2番目です)で平均年齢は7.9歳。48人の子どもを16人ずつ10μg接種群、20μg接種群、30μg接種群(12歳以上投与量)の3つのグループに分け、まず10μg接種で安全性を確認した後、20,30μg接種群にも段階的に接種を行いました。しかし成人量30μg接種群では、2回うたれた参加者4人すべてが発熱したので、残り12名は2回目は21日ではなく1か月あけて、10μg接種に変更されました。

1/3量の10μgでも安全に十分な免疫を得られる結果が得られたので、第2、第3相試験では、10μg用量を使用して行いました。6月7日から6月19日まで、アメリカ、スペイン、フィンランド、ポーランドの81か所で無作為に集め、合計2,268人のこどもの参加者を得ることができました。男性52%、人種は様々ですが、こちらも白人が79%と最大で、21%がヒスパニック・ラテン系、黒人・アジア人が6%ずつでした。その参加者をランダムに1,517人のワクチン接種群と751人の偽薬(生理食塩水)接種群に分け、21日間隔で2回それぞれ投与、数か月間追跡調査しました(追跡機関の中央値2.3か月)。参加者の99%以上が2回接種を終わらせることができました。接種者も非接種者もどちらを打たれたのか知らされていない二重盲検試験です。

安全性ですが、投与1週間の電子日誌を使用しています。心筋炎や心膜炎を含む有害事象は最初の投与から2回目の接種後1か月間、重篤な有害事象であれば、2回目の接種後6か月まで収集しています。当たり前ですが、こどもへの接種で一番気になる年以上、将来にわたる副反応については今回も検討できていません。

2回接種後1か月までの有害事象は、ワクチン接種群で10.9%、偽薬群でも9.2%報告されました。重篤な有害事象はワクチン接種群、偽薬群、ともに1人ずつ発生しましたが、いずれも損傷に伴う腹痛や膵炎(偽薬投与群)、および骨折(ワクチン投与群)なので、ワクチンや偽薬接種とは因果関係はないと判断されました。

接種部が発赤した、腫れる、あるいは痛みなど局所反応、また発熱、全身倦怠感、頭痛、嘔気などの全身的な反応は、図にあるようにワクチン接種群と偽薬群で大きな違いはないようです。倦怠感、頭痛、悪寒に関しては、1回目の接種では、ワクチン接種群と偽薬群に発生率にほとんど差がなかった一方、2回目の接種ではやはりワクチン接種群に多く発生したようです。

重度の副反応は、接種部の重度の痛みがすべて接種群で0.6%認められました。重症な全身反応は、倦怠感0.9%、頭痛0.1%、筋肉痛0.1%に発症しました。発熱はワクチン接種群で8.3%に発生。2回目の接種後に解熱剤を使用する例が多かったようです。ワクチン接種群の1人に40度の高熱が出ましたが、解熱剤投与で翌日解熱しました。

第2~3相試験の副反応のデータ

リンパ節が腫れた子どもは、ワクチン接種群で10人(0.9%)、偽薬群に1人報告されました。心筋炎、心膜炎、アレルギー反応、アナフィラキシーは1名も報告されませんでした。ただ、ワクチン接種群で接種1週間以上たってから軽度の発疹が出た子どもがいましたが、軽度ですぐに消失しました。

次に、ワクチンの効果ですが、5歳から11歳までの子どもに10μg(成人の1/3量)投与した後どれだけ中和抗体ができたか、264人の2回目のワクチン接種の1か月後の血液中の中和抗体価を16歳~25歳の30μg接種群253人のデータと比較してみると、5歳から11歳のワクチン後は1,106.1~1,296.6(平均1,197.6)GMT(幾何平均力価)だったのに対し、16歳~25歳のワクチン後は1,045.5~1,257.2(平均1,146.5)GMTと、そん色ない抗体価の上昇を得られました。なお、今巷でうわさされて、中和抗体以外の免疫(例えば吉村昭彦慶応大学教授も注目されているTリンパ球など)への効果については検討されていません。感染は抑えられなくても重症化予防は十分あるのは、おそらくTリンパ球など中和抗体以外の免疫細胞への影響だと考えられます。

ワクチンの中和抗体は10μgの1/3量でも十分上昇していた

さて、実際のコロナ感染症の発症阻止はどうか、つまり有効性は、というと、なんと有効率90.7%でした。実際に下の図の第2~3相試験のコロナ累積発生率をみてみましょう。下の赤い線がワクチン接種群、どんどん累積数が増えている青い線が偽薬です。ワクチン初回接種後からフォローが始まり、約4か月間経過をみました。偽薬群は初回接種後20日経過した後か経時的にコロナ検査陽性者が経時的に増え、最終的な累積発症率(陽性率?)は約2.5%でした。一方、ワクチン投与群は50日過ぎてようやく陽性者を確認。その後90日を過ぎたあたりにポツン、112日ごろにポツンと陽性者が出ただけ。累積発症率はわずか0.25%と10分の一程度に抑えました。その後もどんどん差が広がることを考えると、ワクチン接種群の圧勝です。ホント、mRNAワクチンの効力にはただただ脱帽です。

ワクチンの発症予防効果。mRNAワクチンはいつもながらすごいデータをたたき出してきます

この治験はデルタが猛威を振るい始めたころに行われており、オミクロンに関しては残念ながら発症抑制効果に関するデータはありません。成人ではファイザーワクチンの2回接種ではオミクロン発症抑制効果は不十分、とされていますので、おそらくは子どもでも、重症化予防はともかく、発症予防効果は期待できないとみていたほうがいいでしょう。しかし最近の南アフリカでのオミクロン流行前後のファイザーワクチン「コミナティ」2回接種の入院抑制効果を調べた論文では、オミクロン流行前が93%抑制できたのに対し、オミクロン流行後は70%に下がった、ということでした。オミクロン株は弱いとは言われていますが、下がったとはいえ70%も入院抑制、つまり重症化抑制効果が残っていたのはグッドニュースです。

 論文中の表をソフトで和訳。オミクロンでもファイザーワクチンの入院抑制率は70%押さえた

 

⑤ 米国では、2021年11月3日~12月19日までに5~11歳の小児に約870万回のファイザー社製ワクチンが接種され、42,504人が自発的な健康状況調査(v-safe)に登録されました。2回接種後、局所反応が57.5%、全身反応が40.9%に認められ、発熱は1回目接種後7.9%、2回目接種後13.4%に認められました

⑥ 上記と同期間に、米国の予防接種安全性監視システム(VAERS)には、4,249件の副反応疑い報告がありました。このうち97.6%(4,149件)が非重篤でした。重篤として報告された100件(2.4%) の中で最も多かったのが発熱(29件)でした。11件が心筋炎と判断されましたが、全員が回復しました

アメリカは昨年10月29日に5歳から11歳のファイザーワクチン10μgの2回接種を拡大承認し、11月3日から12月19日現在の約1か月半ですでに870万回接種されたもようです。早速、子どもへのワクチンの安全性について米国CDCから昨年末の12月31日に市販後調査が発表され、その報告をもとに安全性のデータを示しています。

VEARSで監視されたデータ

アメリカは、ワクチン有害事象報告システム(VEARS)が完備され、ワクチン接種後に何かあれば、スマホで自主的に健康被害などを報告できるシステムがあります(v-safe)。

それによると、870万回接種が行われましたが、接種後、v-safeに自主的に登録したこどもが42,504人いました。有害事象報告は4,249件。うち4149件(97.6%)は深刻なものではなかったそうです。最も多い有害事象報告は、接種用量間違いなど投与ミスで、これは十分想定されたことだったそうです。なぜなら12歳以上と投与量が異なるから。そのことによる健康被害はほとんど見られなかったそうです。表題にあるように、2回接種後、局所反応が17,180件(57.5%)、全身反応が12,223件(40.9%)に認められ、発熱は1回目接種後7.9%、2回目接種後13.4%に認められました。これは、12歳から15歳の子どもやそれ以上の若年青年の発症率よりも少なかったようです。とはいえ、こどもが倦怠感や頭痛、痛みを訴えるかっていうと・・・? すこし割り引いてみる必要はあります。

また、1回目接種の約5.1%と、2回目接種後の約7.4%のこどもは接種翌日体調不良のため通常の日常生活を送れなかったようです。体調不良のため病院受診をしたのは441件(0.6%)。うち14人(0.02%)が入院治療を受けたようです。入院時病名は5件から情報を得られ、虫垂炎2件、嘔吐・脱水症1件、呼吸器感染症1件、咽後膿瘍1件だったそうです。1例1例を詳しく精査したわけではないので、接種との因果関係のことは特に触れていません。

一方、100件(2.4%)に深刻な問題が発生していました。発熱(29件)、嘔吐(21件)、それに心筋梗塞などの時に上昇するトロポニン上昇(15件)でした。またけいれん発作が12件の報告がありました。心筋炎が15件報告され、うち11件は詳細に検証され、心筋炎の確定診断がなされたそうです。11人すべて回復したそうです。このワクチンの、稀ですが重大な有害事象は「心筋炎」の発症といわれています。以前のシックキッズニュースでコロナワクチンの特集で触れましたが、これまでの知見からは12歳から29歳の男性の発症の報告数が多いようです。幸いにも、これまでの5歳から11歳までのコロナワクチンでは、心筋炎の報告は今のところ少ないようです。

5歳と8歳の女児2名が死亡したそうですが、ワクチン接種前から重大な健康問題があり、死亡とワクチンの因果関係を示唆するデータは認めませんでした。つまりもともとの基礎疾患が悪化して死亡されたと考えていいでしょう。

⑦ 5~11歳の小児では16~25歳の人と比べて一般的に接種後の副反応症状の出現頻度は低かったと報告されています

同じく米国CDCがファイザー製ワクチンを承認した直後の11月12日に発表した週報(MMWR)から引用していますが、11月5日にアップデートされたCDCのホームページ「Pfizer-BioNTech COVID-19 Vaccine Reactions & Adverse Events」を参照したほうが良いかと思います。

また、このデータをよりわかりやすくまとめたものが、新潟大学小児科学教室のツイッターで出回っています。この記事でもそのデータを拝借させていただきます。だまってこのグラフを眺めればいいと考えます。

局所反応に年齢で大きな差はでない
特に発熱は5歳から11歳のほうが出にくい傾向がある
心筋炎は12歳から15歳男性で注意が必要だが、11歳以下のこどもの発症は稀

3.で、どうなの?日本小児科学会は5~11歳小児へのワクチン接種を勧めているのか?

以上、新型コロナワクチンがこの年代に特例承認された経緯を長々と述べてきました。では日本小児科学会としては、5歳~11歳児へのワクチン接種についてどう考えているか、です。一番最初に何が書かれているか、といきって読んでみたら、なんと、1)子どもに関わる業務従事者など周囲の成人への新型コロナワクチン接種が重要、とあり・・・子供のワクチンの話じゃねーのか、と大きく肩透かしを食らってしまいました。

気を取り直して、次へすすみましょう。と、次を読んでみたら、2)基礎疾患のある子どもへのワクチン接種により、コロナの重症化を防ぐことが予想される・・・とか、「それ当たり前でしょ」って感じで、またアゴが外れそうになりました。

それでも這うような気持ちで次に進んでみたら、ようやくありました。3)5歳から11歳の健康な子どもへのワクチン接種には意義がある・・・しかも接種のメリット・デメリットを子ども本人と養育者が十分理解して、とか・・・意義のある根拠は、1.「現時点の感染状況とワクチンの知見」をきちんと読んで理解して、ということでしょうか。なんかここまで歯切れが悪い声明も珍しい。おそらく予防接種・感染症対策委員会会員の間でも、オミクロンみたいな弱毒コロナが大半になってきた今、本当に健康なこどもにワクチンが必要なのか???意見が分かれているのでしょう。他の年代で課せられているコロナワクチン接種の「努力義務」ですが、少なくとも日本小児科学会は努力義務については全くコメントなしです。

1月26日の厚労省専門部会で、それまでなかった妊婦へは努力義務を課す方針を了承しましたが、11歳以下に対する努力義務は、この時点では見送られた模様です。そして1月28日、政府分科会会長の尾身茂先生が国会で、「基礎疾患のある子などは重症化しやすいと分かっているので、義務ではなく希望者を募り接種をすればいい」と、事実上11歳以下のこどもへコロナワクチン接種の努力義務は必要ないとの個人的見解を示しました。2月中には政府専門部会も努力義務を課すかどうか結論を出すらしいです。政府分科会や日本小児科学会は、重症小児患者がどこまで増えるか、またコロナがこどもへ感染の広がることで医療や社会への影響がどれくらい出るか、もう少し様子を見たいのでしょう。これまでのところオミクロンであればしょぼそうなので、おそらく11歳以下の子どもには努力義務はでないでしょうが・・・現政権は「聞く力」が強すぎて世論の動向次第でどうでもなりそうなので、努力義務を課したほうが支持が伸びると判断されれば努力義務が課されることになるでしょう。逆に、努力義務を課した後に炎上したら、すぐにそれを引っ込めるかもしれません。どちらにしろ努力義務がないからといって、ワクチンを打たなくていいという意味ではないのでご注意を。

4.で、こどもへのコロナワクチン、結局どうしたらいいの?

専門でもない一開業医の考えなど意味ないよ~という声は言われなくても聞こえてきます。ただ、国や日本小児科学会の話を聞いても、重症化しやすい基礎疾患がある人はしたほうがいい、その他はよく考えて希望したら打ってください、という感じで、正直大多数のお子さんについてどうすればいいか、接種の最終的な判断は自己責任で、というスタンスです。でもこれではかかりつけとして頼ってくれる一人一人のこどもさんの保護者の方の中には、本当に迷っておられる方もいらっしゃると思います。それで、接種する立場の私も小児科学会が提示した論文などを調べて、私自身どう考えているのか、自分にもし今5歳のこどもがいたら受けさせるのか、考えてみました。まとまりがない話になりますが、ご披露させていただきます。

ただし、ここから先は完全に私個人の考えで閲覧注意。読む人を選びますので、いやならば読まないようお願いします。もし一開業医の戯言ではなく専門家のお話を参考にされたい場合は1月25日付けのBuzzFeedの岩永直子さんの記事「子どものワクチンどうする? 我が子にうつかどうか決める時、考えるべきこと」でこびナビ副代表の峯宗太郎先生、こびナビ代表で小児科医の岡田玲於奈先生、日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会理事の森内浩幸長崎大学教授や斎藤昭彦新潟大学教授のたちのいろいろなトーンのご意見を紹介しています。ますます混乱してしまうかもしれませんけど、行動を決めるときにいろいろな情報は大事です。そちらを参照ください。

そのうちのひとり、ワクチン推進論者で高名な長崎大学小児科学、森内浩幸教授。この方は、ほかのテレビに出て小銭を稼ぎしているなんちゃって専門家らとは違い、しっかりした臨床や研究のバックグラウンドのある方で、おそらく一番まともな専門家のおひとりと思われますが、あの森内先生でさえ、昨年末まではこどもの接種、「迷ったら待っていい」とお話しされていました。ただ、日本小児科学会の声明がでた1月20日以降は、ややトーンが変わり、「重症者リスクのあるこどもには早く接種を」と歯切れの悪い路線に変わってしまいました。NBC長崎放送で答えたインタビューもまだみれるようですのでご参照ください

前置きが長くなりました。では個人的な意見、始めます。最初に述べたように、我々小児科医はワクチンの偉大さが身に染みてわかっています。どういうことか。最近、細菌性髄膜炎、麻しん、風しん、水ぼうそう、ロタ腸炎、B型肝炎、インフルエンザを診ていません。これらこどもの代表的な感染症が消えてしまったのは、すべて赤ちゃんへの予防接種の賜物なのです。乳児結核やジフテリア、日本脳炎などは、30年以上小児科医やっていますが1例も見たことがありません。まだコロナの完全武装の中でも普通に診ることがあるマイコプラスマ肺炎やRS,ヒトメタ、パラインフルエンザ、手足口病やヘルパンギーナなどのエンテロ・ライノなんかはまだワクチンが開発されていません。ときどきおたふく風邪や百日咳を時々まだ見ているのは、日本のワクチン行政がまだまだ遅れているだからでしょう。またいうか!しつこいぞ!と思われるかもしれませんが、他国ではもういなくなってきた子宮頸がんも、日本のワクチン行政失敗のつけで、日本人だけ若いお母さんたちがいまだに子宮頸がんで苦しんでいます。話を戻して、もう一度言います。多くの感染症が消えたのは、すべて赤ちゃんへの予防接種の賜物なのです。まともな小児科医で反ワクチンとか、ダークサイドに落ちている人はいないでしょう。

もう一つ、逆説的ですが、大事な事実を一つ。私のようなオジサン小児科医とかマスクとか手洗いとか消毒とかしなくてインフルエンザや下痢とかの病気なんかしたことがありませんでしたよね。なぜか。答えは簡単です。毎日こども達からいっぱいいっぱいいっぱいいっぱいウイルスやばい菌をもらって感染して常に高レベルに免疫レベルをつけていましたから。もちろんインフルエンザワクチンやB型肝炎ワクチンをきちんとしたうえで、です。あと、私くらいのオジサンになると、1960年代が子ども時代でしたので、そのころはワクチンといえば種痘かBCGかDPTくらいしかなかったです。だから、どこかで水ぼうそう、風しん、麻しんが出たと聞けば、母親たちがわざとその病気の子どものところに連れて行ってもらって感染済みです。本能的に子どものころにかかれば軽くで済む、と知っていたからです。もちろん今そんなことを勧める医者とかいたら大変なことになりますが、そういう時代もあったのです。

この2つの事実の前では、コロナなど感染症を制圧するには2つの方法しかありません。ワクチンをするか感染してしまうか、どちらかです。さらに踏み込んで言えば、「ワクチンで免疫を付けた後に繰り返し感染して免疫を維持するのが自然で、コロナも早く消えるような気がする」のですが、こういうとみんなに「医者のくせにコロナを甘く見るな」と誤解されて炎上するので、そこまでは言いません。手洗いとかアルコール消毒とかマスクとか三密回避とか、そんなちょろい感染対策なんかで感染症が消えるとか、大空襲にバケツリレーで対抗するくらいの効果はあるかもしれませんが、基本幻想でしかないような気がします。それどころか、感染がなくなれば免疫も発動しないので、本当に感染したときに防御する免疫機能が落ちてくるような気がします。もう一度言います。人間として社会生活を営む以上、ワクチン接種するか、感染するか、いずれかで自分の中に免疫をつけないとコロナ、というかコロナ騒動は永遠に残るでしょう。

で、どちらにするか、の話です。こどもを含め「ワクチン接種を選択する」の一択の具体的なケースを列記します。

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① 体力のない高齢者糖尿病肥満症など重症化リスクのある人、妊婦さん

② 医療従事者介護保育に関わる人、警察自衛隊公務員政治家など、いわゆるエッセンシャルワーカー。医者は感染したらミイラ取りがミイラになってしまいますので打つの一択ですが、医者や政策決定者の政治家はみんなに接種を勧める立場上、毒見の役割もある

③ 受験を控えている受験生の皆さん。ちなみに今年の医師国家試験はコロナ検査陽性で受験資格喪失、アウトだそうです。再試験もないそうです

④ 同一生計している家族の中に、生後6か月以内の赤ちゃん高齢者重症化リスクのある持病を持っている、妊婦さん、エッセンシャルワーカー受験生など絶対に感染させたくない人がいる

⑤その他(今は思いつきませんが、国から努力義務が課せられたらやっぱりやる方向になるのでしょうか)

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④についてですが、このケースは、感染しても軽く済むといわれているこどもでもワクチン接種を勧めてしまいます。なぜか。今回のオミクロンは弱虫のくせに、インフルエンザのように普通にこどもも知らない間に感染して家族にウイルスを持ち込みます。確かにこども本人やワクチン接種済のご両親は「風邪やろ」で済みますが、④のケースの場合は「ただのかぜ~でしょ」で済みません。ツイッターとかで「オミクロンは症状がない、もしくは軽くていつの間にか感染している恐ろしいウイルスだ~(涙)」とツイートして危機を煽っている医療従事者に、有名なインフルエンサ―が「それって完全に風邪でしょ(笑)」とかリツイートして笑っちゃいましたが、④に該当する場合には笑い事ではすまないですよね。正直、注射を嫌がるこどもに大人の都合でコロナワクチンを勧めるのは気が進みません。「小児科医はこどものアドボケーターたれ」の掛け声が泣きますが、家族あってのこどもということもあります。これがインフルエンザワクチンとかであれば、こどもがいくら泣き叫ぼうが心を鬼にできるんですが・・・

一方、上記の①から④までケースに属さず、且つ同一生計している家族がワクチンを2回から3回済ませている、且つ弱虫オミクロンレベルのコロナであれば、気が進まなければ急いで接種する必要はないのかな、12歳になってからすればいいのかな(この先も接種料が無料である限りにおいてですが)と思います。オミクロンならばワクチンでシールドしても、どっちにしろ感染自体の防止効果はあまり期待できないでしょう。況やワクチンで守っていなければオミクロンを周囲にうつしまくり、とは思いますが、私の貧弱なコロナ診療を顧みても、こどもでしかもオミクロンに限れば、ワクチン接種後の副反応とあんまり変わらないくらいに弱い症状のようです、今の段階では。私の数少ない診療で得た感触を一般化するのは確かに問題ですが、同様にテレビなんかでオミクロンでも重症化する人がいた、という比較的まれと思われる話もまた一般化できません。事実、南アフリカの第4波、つまりオミクロン流行では、これまでと違い明らかに軽症ですんでいたとJAMAInternational Journal of Infectious Diseaseという一流雑誌に発表されています。もちろん日本ほどではないにしろ、南アフリカでも高齢者はワクチンの恩恵もあるので、単にオミクロンの病原性が弱毒していると結論図けるのは早計かもしれませんが。

そもそも感染しても重症化がめったにおこらないといわれているオミクロンみたいな弱いコロナ対策に、mRNAワクチンのような必殺兵器はいらないでしょう。アリをやっつけるのに原爆を使うようなことはしませんよね。ちょっと例えが不適切になりましたが、あれなら、私のような先にmRNAワクチンを接種した人間たちが将来どうなるのか、見届けてからでも遅くないような気もします。そのうち開発中の不活化ワクチンや生ワクチンみたいな、これまで十分に使用経験があるものが出てくる気もします。オミクロンだったらワクチンの効果は90%とかなくてもどうでもいいんです。別に中国製の不活化ワクチン「シノバック」とかあんまり効かないものでもいいような気がします。安全でさえあれば。とにかくワクチンをしたよ、の接種証明書さえあれば日常生活には不自由しないでしょう。オミクロンクラスならば安全性の方が重要ですよね。

医学的には以上のように考えていますが、日本に限ればこれだけではすみません。いわゆる「人の目のこわさ」です。ワクチン接種してあげないと差別やいじめが起きそう、と心配な方も多いのではないでしょうか?だいたいコロナが屋外の大気中にゆらゆら漂っているわけないし、外ではマスクはいるのか疑問にもかかわらず、外で歩いているときでさえマスクをしていないと睨まれそうで生きづらい日本人。もしもコロナにこどもさんがかかった時に、ワクチンしていればまだ言い訳できますが、もしワクチンをしていなかった場合・・・目も当てられません。「おまえ、何でワクチンを打たせなかったんだ」とか、「お前の子どものせいでみんな濃厚接種者と認定されちゃったよ、どうしてくれるんだ」と直接非難する人はあんまりいないでしょうが、陰では絶対いろいろ言われます。お偉いさんがたは「ワクチン接種を無理強いしないように」などと口では言っているようですが、わかってないよな、と思います。「差別をやめよう」といってもやめられないのが人間のサガなんですよね。マスコミとかも「SDGsだ~みんな違っていいんだ、差別をやめよう」とか言っていますが、テレビなんかでコロナが何万人出たとかあおってるからかえって差別が起きるんじゃないの、と思ってしまいます。

また話がそれてしまいましたが、5歳のこどもにmRNAワクチンとかする必要性は医学的にはあんまり高くないと思うんですが、「ワクチンをしていないと遊びに行けない」「マスクを外して給食できない(どうやって食えばいいんや)」「電車に乗れない」「修学旅行に行けない」「受験できない」「なになになになにできないできないできないできない」「学級閉鎖になって誰々がコロナげな~とばれる」とかなれば、こどもは生きてゆけないので、しかたないけどワクチンを受けてもらうしかないかな。でもこどもには努力義務までは今のところ課せられたいないようなワクチンですので、ワクチンしないと決めたこどもさんの保護者の考え方も尊重しなければなりません。況や差別や偏見でみるようなことは絶対にないようお願いします。

もし自分にいま5歳のこどもがいたと仮定すれば・・・不活化ワクチンや生ワクチンが開発されるまでぎりぎり待ちたいけど・・・可能ならば年齢を4歳とかごまかしたいけど・・・銭湯や遊園地、キセルじゃあるまいし、無理ですよね。日本人として生活している以上、打つしかないですね。医者は他人様のお子さんに打つ立場でもあるので、いわゆる毒見の役割もあるだろうし、自分の子にはやっぱ打つしかないかな、と思います。でもこどもが小さい時にコロナ騒動とかなくて本当によかったと心からそう思います。今の子どもさんや親御さんたち、それに奔走しているコロナ病棟の先生方、保健所や役所、保育園幼稚園学校関係者の皆さん、マンボウで自由に店を開けられない飲食店の皆さん方。みんなみんな本当に気の毒でたまりません。

ちなみに当院では、mRNAワクチンのうちは、接種医療機関として手をあげることはないでしょう。集団接種の問診医・接種医として協力を求められれば、協力しないわけにはいかないけれども。ワクチンの保全在庫管理が難しいこと(ミスすればネタとして報道されます)、自院でmRNAワクチン接種後に体調不調になったこどもさんの診療にまだ自信がもてないこと、他のワクチンのようにいろいろ確固たる自信をもてないことが多い(ほんとにオミクロンをはじめ変異体に感染を防ぐ効果があるのか、長期的な副反応は本当にないのか・・・理論的にはありえないとは思うけど)などの理由です。自分自身が他人様の大切なお子さんに接種する場合は、やはり慎重にならざるを得ないというのは正直な気持ちです。子宮頸がんワクチンとかならばガンガン勧めて打つのですけどね。

新潟県医師会が12歳から15歳のこどもに新型コロナワクチンを推奨した時のポスター。オミクロン流行で5歳から11歳へも推奨する自治体がでるか、注目しています
診療内容:小児科・アレルギー科・予防接種・乳児健診
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