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シックキッズニュース 11月号 No66 今月中に始まる生後6か月からの乳幼児コロナワクチンの個人的な考え

シックキッズニュース 11月号 No66 今月中に始まる生後6か月からの乳幼児コロナワクチンの個人的な考え

気持ちがいい天気が続いています。お子さんたちも運動会や修学旅行とか、コロナ禍で犠牲になってきた行事も再開され、少しずつ日常が戻ってきた感じでうれしいです

さて、またか、と思われる方もいるかと思います。今月もコロナワクチンの話です。今月後半にも接種が始まる生後6か月から4歳のファイザー製ワクチンについて、日本小児科学会の公式見解は、現段階では出ていません(追記:11/2に公式見解が出ました。接種推奨です)。その段階で個人的な考えを披露するのもどうかとも思いますが、皆様方の関心も高いと思いますので、この世代にmRNAワクチンを接種する必要性や疑念に思う点を述べさせていただきます。ご参考になれば幸いです。

今月のフォーカス 今月中に始まる生後6か月からの乳幼児コロナワクチンの個人的な考え

1.生後6か月~4歳用のコロナワクチンの概要

2.コロナの死亡率についてのおさらい

3.生まれたてのあかちゃんにこそ本当はコロナワクチンが必要である理由

4.オミクロンでこどもに大規模流行期に脳症脳炎発症例が報告

5.生後6か月からのコロナのmRNAワクチンの懸念点

6.個人的に6か月からの乳幼児コロナワクチン接種をどう考えているか

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1.生後6か月~4歳用のコロナワクチンの概要

ファイザー社がmRNAワクチンの乳幼児に対する治験が始めたのが2021年3月26日。そして1年3か月経過した2022年6月17日、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、ファイザー製とモデルナ製の新型コロナワクチンの接種対象年齢を生後6か月以降に拡大する緊急許可を出しました。すわ、アメリカ様の右へならえと10月5日に厚労省は生後6か月からのファイザー製の新型コロナワクチン接種を許可しました。ワクチン接種は10月24日から開始し来年3月31日までの予定で、地方に順次配送。大分市は11月中旬以降に接種権を配送する予定らしいですが、接種の予約は10月28日からすでに開始予定で、11月9日からは医療機関で接種が可能のようです

一番左が今回特例承認された乳幼児用ファイザー製コロナワクチン。12歳以上の真ん中の10分の一、5歳以上のこども用ワクチンの3割量を3回セットで接種

ファイザー社が行った数千人規模の生後6か月から4歳までを対象にした臨床試験によれば、3回セットで接種すればオミクロンによるコロナ発症予防効果は73.2%で、安全性に大きな懸念点はみられなかったそうです

ファイザー社製乳幼児ワクチンの有効性と安全性を掲載したプレスリリース。ファイザー社HPから抜粋
ファイザー製乳幼児ワクチンの有効性と安全性。厚労省のホームページから抜粋

2.コロナの死亡率についてのおさらい

コロナは年齢で重症化や死亡率が異なり、7歳前後がコロナになっても軽いといわれています。LANCETという有名医学雑誌に公表された、世界の下の図は強毒の従来株が流行していた頃の2020年、まだワクチン開始前の各年代別死亡率です

コロナの年代別死亡率。赤いラインのボトムが7歳(5歳から10歳)で0.0023%の死亡率

7歳(5~10歳)の死亡率がボトムの0.0023%(43,500人に1人)でした。大分市の9月末の7歳の人口が4,325人だそうで、7歳のお子さんが昔はやっていたコロナで死ぬのは、強毒株にかかったとしても10年に一人だそうです。7歳以下で一番死亡率が高いのが0~1歳児ですが、それでも0.0053%(19,000人に1人)。大分市の1歳児が3,661人。5年に1名の死亡でした。7歳を超えると年齢を重ねるほど死亡率は上がりますので、小児科がみる範囲では15歳児の死亡率が一番高くなるのですが、それでも0.0060%(16,700人に1人)。大分市の15歳児が4,519人なので、3年半に1名の死亡率ということになります。この死亡率は、全世界で算出されたもので、日本のように医療レベルがまともな国ばかりではなく、ひどいところも含んでいます。しかもオミクロンのような弱毒ではなく、強毒だった従来株時代の死亡率です。テレビでヤンヤンやっているので、コロナは怖いイメージがありますが、こどもに限れば、弱毒のオミクロンのようなコロナでこどもが死ぬことは例外的で、基礎疾患がある、熱が出てけいれん起こしたりクループ発作でせき込んでいるのに受診拒否にあわない限り、こどもがコロナで死亡することはめったにないと考えていいでしょう。

小児の年齢別死亡率(2020年)。7歳が一番低く、1歳が0.0054%、15歳が0.0060%

3.生まれたてのあかちゃんにこそ本当はコロナワクチンが必要である理由

今年から始まったオミクロンによる第6~7波では、保育園や幼稚園に通っているお子さんだけでなく、生まれたての新生児や0歳までの乳児にも多くのCOVID-19(以後簡単に新型コロナとします)に患者さんが出ました。これまでに私自身4名の3か月未満の早期乳児、3名の3~5か月児のコロナ抗原検査陽性を確認させていただきました。全員高熱を認めましたが、全員今年になってからは弱毒のオミクロンのコロナだったことが幸いし、7人全員大事にならずに済んだようです

本来生まれたての新生児は、お母さんのおなかの中にいるときに、病原体に対する免疫(中和抗体といいます)を十分もらってから生まれるので、ウイルス感染に強い、つまり風邪をひかない、といわれてきました。ところがコロナに関しては、出てからまだ数年しかたっていないので、母体にコロナの免疫を持っている方がまだ少ないです。つまり、母親がコロナになったことがない、もしくは妊娠中にコロナワクチンをしていない場合、お母さんのおなかの中にいるときにもらうべき新型コロナの抗体がそもそもない。だから生まれたての赤ちゃんには新型コロナの免疫がないケースがほとんどです。免疫を持たない場合、新生児はその病原体に対してほとんど抵抗力がありません。新生児が新型コロナになれば重症化するのではないかと容易に想像がつきます

生後2か月の早期の段階からヒブワクチン、肺炎球菌ワクチン、4種混合ワクチンが必要な理由も同じようなものです。ヒブや肺炎球菌、百日咳菌のような細菌(ばい菌)は、ウイルスと違い構造が複雑なため、免疫抗体ができにくいといわれています。母体にそれらばい菌に対する十分な中和抗体がなく、胎児にも十分な中和抗体をあげることもできません。つまり、乳児期にヒブや肺炎球菌、百日咳菌に感染すると、菌血症や細菌性髄膜炎、百日咳のような危険な感染症を発症する可能性があります。抗菌薬があるとはいえ、治療は困難を極めます。それで生後2か月~3ケ月という極めて早い時期からワクチン接種を開始します。一方、日本脳炎に対する免疫は、母体が蚊に刺されて不顕性感染を何度も繰り返して母体に十分な免疫があるので、生後すぐから打つ必要はなく、母親からもらった免疫が失活してくる生後6か月くらいから始めてもおそくありません。 つまり、早期乳児期、できれば新生児から安全に接種でき、有効性もそこそこあるコロナワクチンが存在するのであれば、むしろ早期乳児期こそワクチン接種して免疫をつけるべきではないか、と考えます。母親にコロナの免疫がない人が少ないので胎児が母体から免疫をもらえない子が多いから。個人的には定期接種に組み込んでもいいと思います。くどいですが、早期乳児には新型コロナに関しては、安全性さえしっかりしていれば接種しておいた方がいいと個人的には思います

4.オミクロンでこどもに大規模流行期に脳症脳炎発症例が報告

一方、生まれて半年すぎれば、お母さんのおなかにいたときにもらった免疫は失活してきます。しかし人間の体はうまくできているもので、生まれて半年もすれば、ウイルスに感染して感染症を発症しても、十分対応できるように乳児の免疫の力はついています。もちろん可能性は低いですが、感染すれば脳炎を発症する可能性のある日本脳炎ウイルスに関しては、生後半年を過ぎれば早い段階で数回のワクチン接種で免疫をつけることは必要です。例えば、実際に日本で生後半年からワクチン接種が行われている日本脳炎。蚊などに刺されて日本脳炎ウイルスに感染した場合、その発症率は100人から1,000人に一人ではないかといわれています

さて、オミクロンによる新型コロナで、特に日本をはじめ東アジアで注目されているコロナ脳炎(脳症)。急性脳炎は第五類感染症で、全例報告の感染症です。少し古いデータになりますが、日経メディカルにコロナ脳炎が増えている、という記事がありました。8月28日(第34週)までの急性脳炎のデータによれば、急性脳炎の全報告226にうち、11%の26例がコロナ脳炎で、すべて10代以下のこどもだったようです。少なくとも現在の日本では日脳ワクチンによる免疫で守られている日本脳炎よりも明らかに発症数は多いです

今年の週別の脳炎発症数。こどものコロナ脳炎の症例数(赤)が増加

今年オミクロンが出るまでは、コロナ脳炎の報告は2021年第41週(10月11~17日)に4歳の幼児1名だけの報告だったので、オミクロンでこどものコロナが激増して案の定、脳炎報告が増えたようです。同記事で、日本集中治療医学会小児集中治療委員会がまとめた「新型コロナウイルス関連小児重症・中等症例発生状況速報」(2022年9月6日現在、152件)のデータも紹介しており、オミクロンの新型コロナで入院となった重症、中等症の理由として、やはり脳症脳炎疑い(25%)、けいれん(16.4%)が多くを占めていました。一方、デルタまでの主役であったCOVID-19肺炎(19.7%)や懸念された川崎病もどきのMIS-C(多系統炎症性症候群2%)、心筋炎(2%)はこどもでは意外に少なかったようです

オミクロン流行下での入院児の原因疾患の割合

このように、新型コロナでも脳症脳炎をおこすリスクはあり、日本脳炎ワクチンのようにそのリスクがワクチンで下がるのであればもちろんいいので、新型コロナ用の安全性に優れたワクチンがあれば、生後6か月以上の乳幼児にも打ってあげたいですものです

5.生後6か月からのコロナのmRNAワクチンの懸念点

接種スケジュールの違い

今回特例承認されたファイザー社製乳幼児用mRNAワクチンには懸念点がたくさんあるようです。まず、今回の生後6か月~4歳用のコロナワクチンは5歳以上用とはやり方が全然違います。これまでの5歳以上のコロナワクチンの初回接種は3週間あけて2回だったものが、今回の乳幼児用ワクチンでは初回接種が最初から3回となります。具体的には、1回目から3週間間隔をあけて2回目、2回目から8週間以上あけて3回目、と3回セットで接種しなければなりません。初回接種が3回セットなので、1回目の接種が4歳までならば、2回目、あるいは3回目の接種時点で5歳こえていても、最初の乳幼児用のコロナワクチンを接種しなければなりません。5歳以上の小児用ワクチンであれば、初回接種は2回ですので、2回目に12歳超える場合も、最初の小児用のワクチンですが、その5か月後の追加接種(3回目)に12歳こえていたら、成人用ワクチンとなります

ワクチンの希釈の違い

Ready-to-use製剤ではないので、ワクチン使用前に希釈が必要ですが、これもこれまでとは希釈法が微妙に違います。接種する量は1回0.2mLの3μg。これは成人用が30μgですので10分の一、5歳以上の小児用が10μgなので3割量となります。小児医院で小児用も乳幼児用もどちらもやる施設で特に気を遣うのは、ここではないかなと思います。なんと、乳幼児用も小児用も摂取量は1回0.2mLなのです。つまり、濃度が異なるのです。5歳以上の小児用ワクチンの3割しか打たないので、同じ濃度だったら、0.2mLの3割の0.06mLの接種となってしまい、今の注射シリンジやニードルではとても正確に薬液をとれないので、やむを得ずこうなったと思います。インフルエンザワクチンのように年齢によって摂取量が違う場合は、明らかに量が違うので接種時の間違いにも気づきやすいですが、異なる濃度の製剤を同じ量を引いたシリンジ2本を見せられても、色も白濁して同じだからどっちかわからなくなり、ここで接種過誤が起きやすくなるでしょう

乳幼児期の他の定期接種との兼ね合い

生後6か月以上の乳幼児にはまだ大事なワクチンの定期・任意接種が残っています。日脳、MRワクチン、水痘、おたふくです。ここで問題となるのは、ほかのワクチンとの接種間隔の問題です。コロナワクチンだけは他種のワクチン接種は2週間以上間隔をあけなければいけません。コロナワクチン同士は3週間・8週間の間隔となります。どのように調整してワクチンを接種できるのか。生後6か月以上の乳幼児ではインフルエンザワクチン接種も可能ですが、インフルエンザワクチンだけはコロナワクチンとの同時接種も可能だし間隔もきにしなくていいそうで、なんでインフルだけよくてほかのワクチンはいけないのか、そこには医学的な理由はありません。しいて言えば、コロナワクチンで意外な副反応が起きるかもしれない懸念があり、他のワクチンと同時、同日、接種間隔無制限に接種したら、どのワクチンで副反応が出たのか判断に苦慮するからでしょうか。やはり重篤な副反応が出たときのことをお国は大変心配しているのではないかと邪推しています

もし生まれたばかりの赤ちゃんがいて、その子に乳幼児コロナワクチンを計画されて入れる方は、特に、注意していただきたいのですが、生後5か月の初めまでに、できればロタ・ヒブワクチン3回、肺炎球菌ワクチン3回、4種混合ワクチン3回、B型肝炎ワクチン2回、そしてBCGは済ませておくことをお勧めします。生後6か月から7か月にかけて日本脳炎ワクチンン2回と3回目のB型肝炎ウイルスワクチンを済ませて最低2週間あけて、生後8か月くらいから3か月かけてコロナワクチンを3回されるか、生後6か月になってすぐにコロナワクチンを3か月かけて行い、生後9か月からB型肝炎ウイルス3回目と2回の日本脳炎ワクチンをするかは、新型コロナの流行状況蚊の発生しやすい時期かどうか、個々の条件で変わってしまうと思います。乳幼児新型コロナワクチンが始まる前に、アメリカのようにコロナワクチンも他種のワクチンとの同時接種や間隔制限撤廃を認めてほしかったと切に望んでいました

乳幼児への筋肉注射の問題

筋肉注射は海外ではワクチン接種のスタンダードですが、ガラパゴス日本では特に小児科医ではあまりなじみがありません。高齢者ワクチンでは筋注製剤がありますが、小児科医院で扱うワクチンではコロナワクチンが出るまでは、HPVワクチンが唯一筋肉注射でした。それでも一般診療(というかこっちのほうが大事でしょう)もしなければいけない小児科医自身がワクチン接種会場に接種員として動員されることになると思います

恐怖で飛び跳ね逃げ回る3~4歳の筋肉量の少ない子供にスムーズに筋肉注射できるか。固定のために数名の補助員を要するかもしれません。0歳までは肩の筋肉ではなく太ももの外側に接種するように勧めているようです。ちょうどアナフィラキシーのときに使用するエピペンの要領ですね。本来はこれがいいのでしょうが、3歳くらいの子になると、太ももでは接種の様子がちょうどよく見えるので、恐怖で足をばたつかせてしまい、太もも接種は困難なので、どうしても肩の筋肉になるでしょう

そんなこんなで、取り扱いに非常に気を遣う乳幼児用のファイザー製mRNAコロナワクチン。おそらく過誤接種や接種時の事故がある一定の確率で起きてしまうのもやむをえないと考えます。「医療にミスは絶対あってはならない」。それは理想ですが、人間がやる以上、一定のミスや事故は想定内です。しかしこれまでなされてきたように、マスコミやSNSの格好のネタになり、このような状況にもかかわらず接種に手をあげてくれている心ある医院がさらされ吊し上げられることになるのでは、と大変不安です。ただ、これら同時接種不可や接種間隔の問題で、乳幼児用コロナ接種から手を引く医院が出ていることは現実に起きているわけで、5歳以上の接種には使命感から手をあげていただいていた小児科医院も、今回の6か月~4歳用のコロナワクチン接種となるとずいぶん様相がちがっているようです。現段階の大分市のホームページからの情報ですが、20件もあった大分市の小児用コロナワクチン接種医院(5歳以上)が、乳幼児用コロナワクチン接種医院になると15件に減っているようです。それでもまだ大分市だけでも15件の医療機関が使命感に燃えてやっていただいているわけで、心から敬服しているところです

本当に有効性があるのか

いよいよここからが大事なこと、有効性と安全性の話に移ります。肩透かしになりますが、生後6か月~4歳までのファイザー社製の乳幼児コロナワクチン接種の臨床試験ですが、有効性や安全性の論文は、今のところありません。しかしファイザー社が行った1,100名あまりの臨床試験は公表されています

まず有効性ですが、6か月から4歳児にコロナワクチン2回接種したあとのデルタによる新型コロナの有効性は70.2%と高い有効性を示しました。一方、想定通りオミクロンによるコロナには2回接種ではわずか21.8%の有効率と、有効性はありませんでした。しかし8週間後に3回目を接種することで、オミクロンによる有効性は80.3%に上昇したとのことでした。つまり、乳児用コロナワクチンは従来株用のワクチンですが、「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」ではないですが、さすがに3回セットで打てば、オミクロンにも有効と結果が出ました。実際にはワクチン3回接種したこども992名のうちコロナになったのが3人、ワクチンをうたなかったこども466人では7人がコロナにかかった模様です。ワクチンを打たなくても1.5%しかコロナにならなかったので、数が少なすぎてなんかビミョ~な感じですが、統計学的には高い有効率があるのでしょう。6月から先行接種しているアメリカの市販後調査の結果など、現時点ではまだみつけられませんでした。今後、日本を含めた乳幼児ワクチン本格的開始後の市販後調査でいい結果が出る展開に期待しましょう

デルタは2回で十分な効果を示したが、オミクロンには2回接種では不十分で、3回接種で十分な効果を得た

安全性はだいじょうぶなのか

次に安全性です。これが一番大事です。ファイザー社が臨床試験で接種後7日までに出た症状の出現率を公表しています。1,000人余りの治験では、不機嫌や発熱、接種部の腫脹といった軽いもので、重症例はありません

ただ、我々が知りたいのはこんな7日後のどうでもいい症状ではなく、もっと長期的で重大なものがどれくらい出たかです。アメリカは6月から乳幼児の接種が始まっていますが、10月半ばまでに5歳未満の接種はすでに140万あまりが最低1回は接種されているようです

10月中人までのアメリカの5歳未満が最低1回接種しているのは1.4M

ところが、米国疾患予防管理センターCDCのサイトで5歳未満の詳しいデータをみようとしても、まだデータを公表していないようで接種率さえでてきません。5歳以上の接種率は公表しており、例えば5歳から11歳では初回ブースター接種(2回接種)までおえたこどもはわずか約15%ほどとデータがあるのに・・・

アメリカではCDCがワクチン安全性管理システム(VAERS)といって、ワクチン接種して具合が悪くなった人が、自分でサイトにログインしてデータベースに症状などを登録するシステムがあります。10月14日までにコロナ乳幼児用ワクチンを接種して登録された6か月から5歳(サーチ条件で4歳までとはできなかったので5歳までの条件設定をしています)のまでで副反応などにより登録があったのは総数3,243人、少なくとも1回接種がこの段階で140万回なので推定最大45万人接種でしたので0.7%ほどが接種後副反応の登録した感じでしょうか。

VAERSで行ってみた6か月児~5歳の副反応報告のサーチ結果(10/14まで)

これらの乳幼児がどんな状態だったか、詳細なデータは公表しているようですが、コロナワクチン以外の全ワクチンも含んだ生データをエクセルで列記しているだけなので、短時間には抽出して評価検討できませんでした。アメリカでも6月にやっと乳幼児用コロナワクチン接種が始まったばかりなので、仕方がないかもしれませんが、他の年代のように接種状況だけでもちゃんとデータのサマリーを開示してほしいと思います。疫学の専門家の皆さん、「第8波で800万人!」とか語呂合わせで煽るのも結構ですが、どなたかアメリカの乳幼児のVAERSのデータをまとめていただけたら幸いです

6.個人的に6か月からの乳幼児コロナワクチン接種をどう考えているか

以上のことを踏まえ、一開業医の私見を述べます。日本小児科学会がまだ公式な見解を出していない段階(追記:11/2に公式見解が出ました。接種推奨です)での個人的な意見(多分少数派)ですので、ご参考までにとどめてください。発言に間違い、見当違いがあっても多めにみてください。こどものコロナワクチン接種してない医院の開業医の話とかいらんやろ、と思う方はここまでで。興味のある方だけ読みすすめてください

こどもに関しては、他の年代に比べ、重症化しにくいとはいえ、確かにオミクロンになって感染者が爆増して、それに伴いけいれんや脳症、肺炎患者も一定数でている状況です。確かに他の風邪のウイルスでもけいれんや脳症、肺炎が起きないわけでもないし、実際多くのコロナのこどもをみてきて、インフルエンザやRS、百日咳、ロタ腸炎なんかに比べると、小児に限れば「はぁ?」と思うくらい肩透かしを食らい、コロナだけを特別視して「ワクチンが絶対いる」とか思わなくてもいいんじゃねと個人的にはちょっと考えてはいます。それでもワクチン接種で脳炎脳症患者が限りなくゼロに近づくのであれば、そして現行の定期接種されているワクチンのように十分時間をかけて臨床試験をされて誰が見ても安全性には格段の問題や不安はないよね、というワクチンであれば打った方がいいとも感じています

特に今回対象になった6か月から4歳までの乳幼児期は5歳以上のこどもよりも優先率は上がると考えます。多くの人にコロナウイルスが感染して免疫を持つようになれば、妊娠した母体もコロナに対する免疫があるので、出生したばかりの赤ちゃんも母親から十分量のコロナの免疫をもらうので、新生児から生後5、6か月の早期乳児がコロナにかかることはないでしょう。しかし現実は、コロナが大流行したといっても、せいぜい全人口の2割程度くらいしか実際には感染していないでしょうし、ワクチン打っても中和抗体は半年も持たないようですし、まだ多くの赤ちゃんは母親からコロナの免疫をもらっていない状態で出生します。前に記載した通り、乳幼児、とくに体力のない3か月くらいまでの早期乳幼児にとってはコロナといえども「ただの風邪でしょ」といいづらい面はあります。だから、安全性の高いワクチンがあれば、B型肝炎ワクチンのように新生児から使用したいくらいですし、できれば乳児の定期接種のように生後2か月からワクチンをしてあげたいくらいです。乳幼児コロナワクチンの必要性は、5歳以上のこどもよりある、と思っています。が、健康上問題ないこどもがコロナになって重症化する率が極めて低いことを考えると、努力義務を課すまではないのではないかと考えます。日本小児科学会も、乳幼児へのワクチンに関しては、今のところ正式な見解は出していないようです(追記:11/2に公式見解が出ました。接種推奨です)

「日本小児科学会より」と学会からのメッセージ付きの厚労省の乳幼児コロナワクチンパンフ

問題は、現時点で乳幼児に認可されているワクチンが、mRNA製剤しかない、ということです。mRNA製剤のワクチンは、昨年のデルタまでのコロナがまだ危険な感染症だった時代に緊急の承認という特例でやむを得ず始まったものです。当初は医療関係者や高齢者、重症化因子保持者が接種対象でした。その後、1年程度の観察では幸いにも接種を中止しないといけないような重大な副反応は稀にしかおきていないようです。安全性には特段の問題がない、なによりコロナを早く終わらせないと、という方針のもと、接種対象を重症化することが稀なと思われる一般成人、12歳以上、5歳以上と拡大してきました。そして10月、いよいよ生後6か月~4歳へと特例承認が拡大されました。何事につけても「判断が鈍い」と評判の現内閣ですが、コロナワクチン特例承認検討のスーパー加速感は「あっぱれ!」をあげざるを得ません。が、待望の不活化ワクチンや蛋白組み換え型のワクチンの乳幼児期への承認は待てどもありません。前首相がファイザー社に頭を下げてせっかく調達した大切なワクチンを無駄にしたくない気持ちは理解できますが・・・mRNAワクチンの在庫処理が終わるまではお預けか、と勘繰りたくなります

さて医薬品としてのmRNA製剤のどこに問題があるのでしょうか。いろいろな学者がいろいろな説を唱えており、如何わしさいっぱいで本当に不安いっぱいです。いろいろな説を要約すれば、「安定化されたmRNA製剤がヒトの細胞内で一定期間、制御なくウイルスのたんぱく質を産生し続けること」、「mRNA由来の大量につくられた人工物による中長期的に及ぼす影響、特に免疫への影響がまだ完全に解明されていない」、「人造のmRNA(すべてのウラシルという塩基をRNAの安定化のために全部シュードウリジンに変えている)がヒトの生殖細胞のゲノムに逆転写でインテグレートする可能性が完全に否定されていない(ここまでくるとメルヘンチックなおとぎ話感半端ないですが)」。これらの懸念点は、コロナのインパクトが強かったため、本来なられるはずの十分な検証を経ずになし崩し的にmRNA製剤の承認が広がったことに起因する如何わしさから来ていると考えます

mRNAはたんぱく質の設計図として合成されますが、ウイルスやヒト由来の自然界のmRNAは体内のRNaceという分解酵素ですぐに分解されてしまいます。このため体内であるたんぱく質だけがどんどん作られることがありません。しかし投与したとたん、分解されるのであれば、mRNAを医薬品として使用できません。mRNA製剤を開発した学者たちは、この問題を解決するため、mRNAの構成塩基の全てのウラシルを人工的に変えたもの(シュードウリジン)にして、分解しにくいmRNAに変化させました。分解されにくいトランスファーRNA(tRNA)の一部のウラシルはこのシュードウリジンで構成されているそうです

アミノ酸を運ぶトランスファーRNA(tRNA)。AGCUの塩基の中の一部にシュードウリジン(φ)。mRNAワクチンはすべてのウラシルをシュードウリジンに変換している

これでmRNA製剤はすぐに分解されることなくうまく筋肉の細胞に取り込まれ、コロナのスパイク蛋白を大量に発現させることに成功しました。確かにこの仕組みは、コロナに対する免疫をつけることには成功しています。自然界にあるコロナ由来のmRNAであれば、ヒトのRNaceで直ちに分解され、長期間細胞内に残存することはありません。ところが、mRNAワクチン製剤のケースは異なります。すべてのウラシルをシュードウリジンに変換して分解しにくくなった人工的なmRNAが細胞内で変なことを起こさないのか、またこのmRNAで細胞に大量につくらせたスパイク蛋白がヒトの体で悪いことを本当におこさないのか(免疫細胞により攻撃を受けないのか)、ヒトが本来持つ免疫能に影響がないのかは、かなりの研究者が懸念しているところです。とくに、ワクチン接種後の免疫力の低下、逆に腎炎など自己免疫疾患の発症、体に潜む癌の発育促進などなど・・・あるいは全身に拡散され、もし卵巣内の卵細胞にとりこまれた人工的で安定的なmRNAが逆転写され、ゲノムに取り込まれることは本当にないのか?そうなればワクチン由来の核酸がゲノムにインテグレートしてしまい、子孫に代々受け継がれることになりそうで・・・どうなんでしょう。小説家先生がSF物語のねたにでもしそうな感じですが、いろいろと懐疑的にみている学者が少なからずいるのも確かです。お笑いのネタで済めばいいんですが。「何が起きても全責任は私が持つ」とおっしゃられた元ワクチン大臣がいまだ逃げずに現閣僚にいてさぞ心強いことではありますが、一方、最近では「最終的な接種の判断は保護者の自己責任で・・・」とか投資系ユーチューバー達の常套句もちらほら聞かれており・・・そもそも本当に何か起きたらどう責任をとってもらってもしょうもない話ですよね

コロナ感染リスクが高い医療従事者や、こどもであっても肥満や基礎疾患のある重要度の高い方、すでに生殖年齢を超えてコロナが重症しやすい高齢者ならば、これらのリスクがあってもベネフィットが大きいので接種すべきです。別に医療体制とか周りを守るためではなく自分自身のためにやるべきです。だけど、かかっても「風邪ですね」で終わることが圧倒的に多い健常なこどもや乳幼児に、有効性や安全性が公表されているデータも社内で行ったわずか1,000例あまりの臨床試験程度、副反応に関しては接種後7日程度しかないような新薬のmRNA製剤を本当に大規模に接種するのは疑問や不安が払しょくできないのも無理はないです。本来、乳幼児に投与するべき医薬品は、これまでは本当に慎重に取り扱いされていました。例えばとてもいい抗菌薬や抗アレルギー剤の新薬が開発されても、特に2歳未満の乳幼児は臨床試験さえ最後の最後にしか行わないほど慎重です。どうみても、新しい医薬品のほうが効果もあり副反応も少ないはずなのに、使用経験がないとか臨床試験をしていないという理由で使えません。それほど慎重であるべきなのです

乳幼児期といえば、コロナだけではなく、さまざまな風邪のウイルスに初めてかかって免疫をつける一生の中で一番大切な時期です。この感染防御や免疫に大切な乳児自らが持つ防御能力や免疫に、果たしてこのmRNAワクチンは本当に影響を及ぼさないのでしょうか?ファイザー社の乳幼児用mRNAワクチンは臨床試験からわずか1年3か月で特例承認していますが、きちんと時間をかけて乳幼児に引き起こす影響などを十分に検証していただけたのでしょうか? そんなに急いで承認する必要性はなんですか?今後勇気ある親御さんのお子さんたちに、ワクチンを打ちながら人への影響についての検討を加速してゆくのであれば、もしもワクチン接種後に体調を崩したこどもたちがいたとして、ワクチンの影響が完全に否定できない場合は、ちゃんと「健康被害救済制度」を適用してくれるのですか?大人では万が一のことが接種後に起こっても、検討に検討を重ねた形跡なく「ワクチンの因果関係が明確でない」で否認されていないようですが、本当に大丈夫ですか?

コロナで有名になったある感染症専門医が、大阪の有名大学の教授に昇進した後、テレビでやらかしたのを皆様方ご存じでしょうか。「こどもにとってコロナはたいした問題ではないかもしれないが、大人に広げないためにワクチンしましょう」という内容の発言をして大炎上しました。本音がポロリと出てしまい、他のゲストコメンテーターは激怒したり呆れはてたり。反論の集中砲火を浴び、教授はお気の毒におろおろ半泣き状態で返答に窮していました。私はこの映像をツイッターでみて、これが大人たちの本音だなと感じました。今年になりこどもが広げるようになったコロナ。こどもたちにワクチンを勧めることで、経済を回している大人や選挙の票に直結する高齢者たちを守るために、なんでもいいので今あるワクチンをつべこべ言わず打っとけみたいな・・・。

そもそもコロナウイルスは、2019年末に新型コロナが出るずっと前から、こどもには「普通の風邪のウイルス」として存在していたものです。幸い現時点では新型になってもこどもではSARSみたいにならないことも確認できました。コロナの発熱外来、とかかっこつけても、駐車場に全身防御服にお面のいでたちで出てきて、いきなり手に持った綿棒で「はなぐりぐり」抗原検査だけで白黒をつけ、解熱剤処方、が推奨されるスタンダードなコロナ発熱外来診療。「赤ちゃんにワクチン接種を」とかいう前に、これまでずっとやってきたようにちゃんと病気のこどもと目の前で向き合い、話を聞いて、聴診器をあてて心音や呼吸の状態を聞いて、のどの粘膜をしっかり診て、こどもの病状を評価する。そして、コロナに限らず、きつそうなこども、特に熱性けいれんやひどいせき込み、頻回嘔吐で脱水症があり、二次病院での受診や院内観察が必要と思われる患者さんを、オンライン診療とかでお茶を濁すのではなく、キチンと受診してもらい手当するのが先です(そもそもけいれんを起こしている重症者をオンライン診療することは認められていなかったはず)。「個人情報のため詳しい経過は言えないが、コロナの脳症やクループで不幸になくなったこどもさんたちも、受け入れ拒否にあわずにすぐに診療してもらえれば死なずに済んだはず」と長崎大学の小児科教授森内浩幸先生も公開討論会で話しています(この動画の41:00くらい)。それでもおじいちゃん、おばあさんやお父さん、お母さんたちのために「思いやりワクチン」しましょう、というのなら、せめて安全性に定評のある開発中の不活化製剤(KMBなどが臨床試験中)、蛋白組み換え製剤のワクチン(ノババックス社製)を、十分に臨床試験した後に安全性に問題ないことを確かめた後に接種してあげたらどうかと個人的には心から思う次第です

診療内容:小児科・アレルギー科・予防接種・乳児健診
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