夏休みも終わり、だいぶん涼しくなってきました。コロナ第7波のほうもようやく引き潮フェースになりました。コロナで祭りやイベントなどへの影響も心配されましたが、高校野球も1校の辞退もなく全日程観客いれて行われ、各地の祭りも3年ぶりに開催され、本当に本当に良かったです。一方、コロナ患者急増に伴い、地方の拠点病院の診療停止や縮小も報じられ、交通事故や心筋梗塞、脳卒中、けいれん、出産など、より重要な疾患の受け入れ制限などを余儀なくされてしまいました。もうコロナ騒動が始まって2年以上になるのに、この国の医療体制はどうなっているのか、疑問に思われている方も多いのではないでしょうか。何を隠そう、私もその一人です
さて、8月10日、日本小児科学会が「5~17歳の小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方」の提言を行いました。同学会は1月にもこどものコロナワクチン接種は「意義がある」と提言していましたが、今回の改定は、5歳からのコロナワクチンを「推奨」する、と接種を促す方に大きく舵を切る提言のため、先月に引き続き、今月もこの年代、特にワクチン接種率が上がらない5歳から11歳でのコロナの病状とワクチン接種の意義についてフォーカスを当ててみました。なお今回のコロナのお話もこどものオミクロン限定の話です。ご注意ください
今月のフォーカス 小児科学会のワクチン推奨を受け、再びオミクロンのこどもへの影響を考えてみた
1.日本小児科学会の「5~11歳小児への新型コロナワクチン接種の考え方」のまとめ
2.こどものコロナ感染状況のアップデート
3.オミクロンではこどもの重症者も週に10名程度でていた
4.こどものオミクロンの重症度、コビレジジャパンのデータ解析ではどうか
5.コビレジジャパンのデータでみるコロナワクチンの有効性
6.アメリカでのオミクロンの重症度、コロナワクチンの入院阻止効果はどうか
7.ワクチン接種を終えたこどものコロナ入院阻止率はどうだったか
8.こどものmRNAワクチンの安全性はどうか
9.結局、こどもでワクチンは打つの?打たないの?(今回のニュースも長いのでせめてここだけでも目を通されてください)
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1.日本小児科学会の「5~11歳小児への新型コロナワクチン接種の考え方」のまとめ
詳細は、同学会ホームページの該当記事をお読みください。
まとめると、
●オミクロンによる第6~7波でこどもにも普通にコロナに感染するようになり、重症例や死亡例の報告が増加してきた
●新型コロナワクチンの重症化予防効果はオミクロンでも40~80%程度認められる
●ワクチンの安全性も12~17歳の思春期青年で成人と同程度、5~11歳ではより軽い傾向
という知見が集まった(しかし40~80%の効果というのはあまりにアバウトすぎ、当たらずとも遠からず的で・・・)
以上、日本小児科学会としては、5~17歳のすべての小児に新型コロナワクチン接種を推奨する、となったようです。ワクチン接種回数も、5~11歳は2回ですが、12~17歳は2回接種後5か月以上あけて3回目の追加接種を推奨しています
今のところ5~11歳の小児にはいわゆる「努力義務」は適応されていませんが、8月8日の報道によれば、厚労省の専門家会議は十分知見がえられたとしてこの年代の新型コロナワクチン接種を保護者の「努力義務」とする方針を了承しました。9月中にも努力義務となるでしょう
2.こどものコロナ感染状況のアップデート
本ブログでも、コロナの感染状況について、これまでしばしば言及してきました。8月までのこどもの感染状況はどうなのでしょうか?
上の図は、厚労省の「データからわかる新型コロナウイルス感染症情報」からデータをもとに作図した10歳未満と10歳台の新型コロナウイルス感染症の週別の新規感染者数です。オミクロンBA.1、BA.2の流行後の今年1月から6月までの第6波では20歳未満だけで全国で週5万~15万人の新規感染数をだし、完全に収束することなくBA.5による7月に入り第7波に襲われ、週30万人以上の新規感染者を記録しています
数だけではなくこどもがコロナに感染する割合も確かに増えています。デルタが流行するまでは10歳未満が占める週別の新規感染者の割合はせいぜい5%、デルタ流行期の昨年の夏のオリンピックで10%程度でした。ところが今年に入りオミクロンが出現した第6波では10歳未満の割合は20%にはね上がりました。たしかに日本小児科学会が言及しているように、オミクロン以降、こどもでも普通に感染するようになったことはデータでも裏付けされました。ただし不思議なことに、7月以降の第7波では、なぜか10歳未満、20歳未満の占める割合は急激に減少に転じ、最大週から約半減しております。(8月終盤には10歳未満で約10%、20歳未満で38%から22%へ)。まさか多くのこどもさんが知らないうちに感染してすでに免疫を持っちゃったという都合のいいことにはなっていないと思いますが、おそらくはインフルエンザ同様、長期休園休校の影響でしょう。つまり夏休みでこども同士の接触が減ったためでしょう。2学期学校再開後のこの年代の新規感染数の割合の変化に注目してゆく必要がありそうです
3.オミクロンではこどもの重症者も週に10名程度でていた
厚労省の「データからわかる新型コロナウイルス感染症情報」では、重症コロナの定義は、原則、①人工呼吸器を使用、②ECMOを使用、③ICUなどで治療のいずれかの条件に当てはまる患者と定義されています。かなり呼吸機能の状態が悪い患者さんですね。このようにコロナの重症度の判定は呼吸機能障害を中心に評価しています。なので、肺炎などの呼吸機能障害があまり起きないといわれているオミクロンでの重症化の定義自体にそもそも問題があるという指摘があります。しかもきちんと厚労省に報告している自治体もあるかと思えば、日々のコロナ業務に追われてか、まったく報告をしていないと思われる自治体もあり、そんな問題あるデータで重症化がどうだとか議論すること自体に意味があるかどうかは別として、とりあえず厚労省の「データからわかる新型コロナウイルス感染症情報」でデータを抽出してみました
まずは全重症者の推移をみてみます。昨年夏のデルタ流行時に週800人近い重症者がいましたが、デルタ終息とともに重症者数も年末には週10人にまで減少しています。そしてオミクロン第6波襲来とともに増えてきて3月には最大で週700人を超す重症者をだしました。6月までに週20人程度にまで減りましたが、7月からの第7波で週300人近くの重症者がでています
この棒グラフの下の青い部分が20歳未満ですが、20歳未満の重症化した割合があまりにも小さいためにほとんど見えておりませんので、下に20歳未満の重症者と全年齢に占める割合の推移を、縦軸の感度を50倍にして20歳未満だけ抜き出しました(下の図参照)
昨年までのデルタまでは20歳未満の重症者はいないか、いても1~2人でしたが、オミクロン蔓延してこどもにふつうにかかるようになってからは週8~9人重症者が出ています。こどもに感染が激増した第7波に入ってからは、週10人を超す20歳未満の重症者が出ていることがデータで示されています。20歳未満が週に30万も感染を出しているなかで重症者が週に10人そこそこで多いのか少ないのかは一概には言えないとは思いますが、その大部分が10歳未満というのも気にはなります
ちなみに厚労省のこのデータをみる限り、我が大分県は一名も重症者を発表していません。表をみると多くは☆マークのブランクか少数の0でした。実際に厚労省の重症者定義に会う人がいないとは考えにくいし、実際次にのべるコビレジジャパンの集計には大分県も8月末時点で成人子供を含めて165人の入院患者(内20歳未満12人、酸素投与67人、侵襲的機械換気5人、ECMO1人)が登録されており、おそらくはデータを厚労省に送る余裕がない模様です。同様の道府県が多数あることから、あんまりデータの信用性に欠けると思われますが、傾向はつかめるかと考えご紹介しています
4.こどものオミクロンの重症度、コビレジジャパンのデータ解析ではどうか
先の厚労省のデータでは、こどものオミクロンによるCOVID19(いわゆるコロナ)がどれくらい悪いのかわからないので、規模は厚労省よりも小さいながら、比較的症状が重いと考えられる「入院患者」に絞ったデータでみてみたいと思います。日本小児科学会の小児患者データは、残念ながら引用に許可がいるので、ここでは引用しません。国立国際医療研究センターは独自で進めていたコビレジジャパンという全国規模の入院を必要としたコロナ患者の疫学データを分析してその結果をホームページ上に公開しています。そして8月11日、小児コロナ入院患者の症状を、昨年後半のデルタ流行期(第5波)と今年前半のオミクロンBA.1,BA.2流行期(第6波)で比較検討をした結果を日本感染症学会/日本化学療法学会の英文機関誌に発表。翌8月12日にその要旨をプレスリリースしています
コビレジジャパンに登録している全国の小児入院施設からデルタ流行期458人、オミクロン流行期389人のコロナ入院小児例を比較検討したところ、現オミクロン小児患者では2歳から12歳での発熱やけいれんが、13歳以上では咽頭痛がデルタ入院小児例に比べて優位に多かったそうです。一方6歳以上で検討した味覚嗅覚障害は、オミクロン流行期で優位に少なかったそうです。この研究で登録されたコロナ入院児で熱性けいれんを起こしたのは、デルタ流行期で9人(2%)、オミクロン流行期で24人(6.2%)でした。痙攣をおこして入院管理となるコロナ児は意外と少ないと感じました
ちなみにこの研究で登録された第5波のデルタ、第6波のオミクロンのコロナ死亡児はいずれもいませんでした。酸素吸入を必要とした割合はデルタ3.7%、オミクロン7.2%で優位にオミクロンに多く、入院平均日数はデルタ7日、オミクロン5日でオミクロンが有意に短いようです。そのほか、人工換気はデルタ0、オミクロン0.5%(有意差なし)、ICU管理は両者1.5%(有意差なし)、肺炎はデルタ0.4%、オミクロン1.8%(有意差なし)、髄膜炎・脳炎デルタ0、オミクロン0.3%(有意差なし)、複雑型熱性けいれんはデルタ0.4%、オミクロン1.5%(有意差なし)、心筋炎・心筋症はデルタ0.2%、オミクロン0.3%(有意差なし)でした
前述の厚労省「データからわかる新型コロナウイルス感染症情報」によれば、オミクロン第6波の期間今年の1月~3月)は、20歳未満の新規コロナ患者発生が週10万人以上出ていました。3か月でざっと100万人の新規コロナ発生者が出たということとして、この時期にコビレジジャパンに登録された18歳未満の入院が必要な比較的症状の重い小児は2,500人に1人(0.04%)ということになります。登録者のうち、酸素吸入が必要な呼吸機能障害を起こした児の数が28人、けいれんを起こした児24人、ECMOを含む人工呼吸器管理が2人、死亡はゼロ。この数字だけ見ると、オミクロンではこどもでも確かに重症化する人がいたのは確かですが、他のインフルエンザ、RSウイルス細気管支炎、アデノの咽頭結膜熱、ロタウイルス腸炎などど比べれば軽い印象ですが・・・その辺はこのニュースの最後に考えてみましょう
5.コビレジジャパンのデータでみるコロナワクチンの有効性
コビレジジャパンにもどります。小児のコロナ入院患者847人のうち、コロナワクチン接種歴の有無がはっきりしている790人に着目したところ、酸素投与、ICU管理、人工呼吸器管理を必要とした、いわゆるコロナ重症児43人(5.5%)はいずれもワクチンの2回接種を受けていませんでした
一方、本研究に登録された入院児でワクチンを2回接種していたのは50人(デルタ1人、オミクロン49人)で、オミクロンで入院になった389人中12.6%の49人はワクチンを2回していたにも関わらずコロナ感染後に残念ながら入院治療が必要となったということです。それでもこの2回接種終了児の50人には一人も重症者はおらず、一方、ワクチン2回未終了の747人中、5.8%の43人が重症になったようなので、ワクチンには確かに入院抑制効果やその後の重症化予防効果はあるようです
6.アメリカでのオミクロンの重症度、コロナワクチンの入院阻止効果はどうか
ファイザー製のmRNAワクチン(小児用のコミナティ)の有効性を評価したアメリカの論文に、こどものコロナの重症度も評価しておりましたのでご紹介いたします。2021年7月から2022年2月の半年の間に、アメリカの31の小児病院にコロナで入院した5歳から18歳の1185人の病状を、ファイザー製ワクチン2回接種の有無で比較検討しています。ただし、デルタとオミクロンを分けてその重症度を比較はしておりません。が、アメリカでも5歳~11歳のワクチンが始まったのは11月初め。11月くらいまででデルタの流行は終わり、12月からオミクロンに置き換わっているので、5歳から11歳のこどもに関しては、オミクロンだけの重症度とワクチン効果の評価解析となっていると考えてよいと思われます。コロナで入院となった児は5歳~11歳が267人、12歳~18歳が918人。そのうちファイザー製ワクチン2回接種群は142人、ワクチン非接種群1043人でした
入院患者1185人のうち、重症コロナとして管理したこどもの数はどうか。この論文で重症コロナと定義されている状態は、①集中治療室での治療が必要な状態、②人工呼吸器管理、ECMO、昇圧剤などの治療を要する致死的な状態、③死亡退院です。ワクチン接種の有無にかかわらず、5歳から11歳267人のコロナのうち、コロナで集中治療室治療を要したのは60人(23%)、致死的なコロナが42人(16%)、死亡例は1人でした。12歳から18歳の918人では、集中治療室治療を要した人は326人(36%)、致死的コロナは249人(27%)、死亡例は13人でした
このアメリカの入院時に占める重症コロナの割合は、日本のコビレジジャパンのデータと比べ、かなり高いなと感じる方が多いとお感じでしょう。それは日米の医療制度の違いによる影響が強いと思います。医療費が保険扱いで様子見入院、社会的理由による入院が横行している日本と違い、アメリカの入院管理においては、軽症者はまずいないと考えてよいでしょう。アメリカは軽症者の入院は保険会社が許さないか、そもそも保険がないのでお金が出せずに病院にかかれないか。こどもが病院にかかるのを許してくれるのはワクチン接種くらい。そもそも風邪で病院にはかかりません。症状が重篤になるまでは普通病院にはかかれません。重症化したあと救急外来を受診するか救急車で運ばれるかくらいです。ということで、ここにエントリーされたコロナの入院小児患者は、想像以上にすでに重い患者だと考えられます
ワクチンの入院阻止効果はどうだったのか。ワクチンを接種してコロナで入院した群1185人と、ワクチンをしてコロナ以外の病気で入院した群1627人(コントロール群)で比較してみました
上の図のように、12歳から18歳の思春期青年では全期間で82~83%、デルタ流行期では92~93%と高い有効性を示していましたが、残念ながらオミクロン流行期では入院阻止効果は38~43%に激減していたようです。5歳から11歳児はワクチンの承認が下りたのが昨年11月からの関係で、基本的にはオミクロン流行期のみで、入院阻止効果は68%でした
7.ワクチン接種を終えたこどものコロナ入院阻止率はどうだったか
同論文ではファイザー製ワクチンの入院阻止率や致死的コロナ阻止率も評価しています。18歳以下でコロナワクチン接種後に致死的コロナになってしまった142人(5~11歳20人、12~18歳122人)をみてみると、集中治療室入室が25人(18%)、致死的コロナ21人(15%)、死亡例2人でした。5歳から11歳はオミクロン流行期のみで検討。その年代でみてみると、集中治療室入室はワクチン接種済み20人中5人(28%)、ワクチンしていない群247人中55人(16%)、致死的オミクロンはワクチン接種済みで4人(22%)、ワクチンしていない群38人(16%)でした。あまりに数が少ないので統計学的解析はできておりません。死亡例1名はワクチン未接種児で、幸いにもワクチン接種済では1名も死亡した児はいませんでした
12歳から18歳までのコロナワクチンのデルタ及びオミクロンの重症化阻止効果はどうか。まずはデルタの重症化阻止効果について。デルタ流行期682人のコロナ入院者のうち、コロナワクチン接種済の入院は5%の33人。一方、コロナ以外の入院患者でコロナワクチンをしていた人は1161人中442人(38%)なので、デルタ期の入院阻止効果は92%だったことになりました。うちデルタ期に致死的コロナになった人が198人。そのなかでコロナワクチン接種を終わらせていた入院児はたった3%の6人。致死的デルタの阻止率は98%ということになり、デルタでは大多数の致死的コロナになってしまった人はコロナワクチンをしていなかったということになりました
一方、オミクロン流行期ではどうだったでしょうか。12歳から18歳の思春期青年しか評価できていませんが、234人のコロナ入院児のうちコロナワクチンを接種していたのは89人(38%)とワクチンの入院阻止率が一気に低下。この時期のコロナ以外の同年代の入院者は196人でワクチン接種者は51%の100人。オミクロンの入院阻止率はわずか40%に低下してしまいました。ただし、致死的オミクロンになった51人ではワクチンを済ませていた数は22%の11人しかいなかったので、致死的オミクロン阻止率は79%に改善しており、3回4回とどんどん接種を増やせばもしかしたらオミクロンにも何らかの効果をするのではないか、とわずかな光明はさしてきました
8.こどものmRNAワクチンの安全性はどうか
現在接種率がなかなか上がらない5~11歳対象で認可されているワクチンは、今のところファイザー製のmRNAワクチンだけです。2022年6月12日までに国内で5~11歳に約250万回弱のファイザー製ワクチンが接種されましたが、副反応疑いとして報告されたのが1回目が62件、2回目が38件。幸いにも心筋炎疑い例もわずか6件です
厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会で作られた資料、「予防接種法に基づく医療機関からの副反応疑い報告状況について」がネット上に公開されています。2022年4月13日の第78回から5歳から11歳のファイザー製ワクチンの副反応疑い事例がリストアップされており、最新のものは8月5日開催の第82回のものです。それによると6月13日から7月10日までの計42例の副反応疑い事例がリストされています(うち7人は接種後新型コロナウイルス感染症を発症し、薬効不足となっているので副作用からは事実上除外できるので35例)。それによれば、心筋炎や不整脈、あるいはその疑いが7人、けいれん3人、アナフィラキシーショック1人、その他、血小板減少性紫斑病、肝炎、無菌性髄膜炎、筋炎、関節炎、蕁麻疹などなどでした。もちろんここに報告されていないけれど1日程度の発熱や接種部の数日程度の腫脹などはまあふつうに起きるとは思いますが、少なくとも短期的な重篤な副反応が起きる可能性は限りなく低いものと考えていいようです。ちなみにワクチン接種後の5~11歳の死亡事例ですが、4/28に基礎疾患のある女児が2回目の接種翌日に死亡した1例が報告されています
余談になりますが、8月に昨年10月にコロナワクチン接種当日、入浴中に死亡した中学生のニュースが出て、皆さんも驚き不安になったのではないでしょうか?しかもニュースによると、因果関係不明と判定され、何の補償もなく、保護者の方は納得できないと訴えておられるとのことでした
昔はワクチン接種後の入浴が禁止されていた時代がありました。私が医者になってしばらくはそうだったような気がします。実はこの方以外にも、コロナワクチン接種後に「浴室内の死亡として報告された事例についての検討」が第78回厚労省の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会の資料として公開されていました。この名古屋の13歳の死亡事例もこの資料にあると思われます。ここで書かれているように、ワクチン接種の有無にかかわらず入浴中の死亡というのは一定数発生しており、ワクチン接種群の浴室内死亡の頻度が非接種群を上回ることはないようですので、入浴自体は特別問題はない、と結論付けられています。厚労省の新型コロナワクチンQ&Aにも「接種日の入浴は体調不良でなければ差し支えない」としっかり掲載されています。もちろん、体調が悪い時は、接種日を含め、入浴を控えることも検討してください、と言及されています。ワクチン接種された後は十分に健康管理に気を付け、もし体調不良の時は絶対に無理をしないようにした方がいいです
9.結局、こどもでワクチンは打つの?打たないの?
ここまで、日本小児科学会の「5~17歳のコロナワクチン推奨」の提言、「厚労省のデータでみる新型コロナウイルス感染症」、コビレジジャパンのコロナ入院患者のデータ、そしてアメリカのデルタ・オミクロン流行期の5歳~18歳のコロナ入院患者とワクチンによる入院阻止効果と致死的コロナ阻止効果の論文をみてみました
まとめると、1月からのオミクロンBA.1と2による第6波、7月からのオミクロンBA.5による第7波により、日本でもこどもが週に10万から30万人規模で感染するようになり、流行の中心はむしろこどもに移動してきたこと、それに伴い、これまで全然みられなかったこどもの入院患者数や重症コロナ、それに死亡する例もそれなりに出ていることが明らかになりました。といってもコビレジジャパンのデータでは、致死的コロナ児は43人で、コロナワクチンの副反応事例数と比べても微妙な感じではあります。そのコロナワクチンですが、デルタ流行までは有効だったコロナワクチン2回接種の効果が、オミクロン流行期になり感染予防効果、発症予防効果ともに明らかに劣化してきたことも明らかになりました。12歳から18歳に限れば、アメリカのデータでは入院阻止効果も40%と低下してきていました。接種回数が2回ではやはり不十分であることが示唆されました。つまり何度も接種する必要があるということです。一方、オミクロン流行期でも2回ワクチン接種の致死的コロナ阻止率は12~18歳では80%弱を保っており、一定の効果はありと評価されました。接種率の低下が懸念されている5歳~11歳のワクチンの安全性は、アナフィラキシーショックや自己免疫性をおもわれる心筋炎や髄膜炎、血小板減少性紫斑病、蕁麻疹などないわけではありませんが、12歳以上の副反応の頻度に比べるとむしろ少ないようです
そこで5歳から11歳のお子さんにコロナワクチンを接種すべきか、です。健康な乳幼児、児童のオミクロンによるコロナをたくさんみせていただいた一町医者の個人的な見解ですが、これまで一開業医がみてきた少ないけれども貴重なコロナ患者の状況を2度ほど当シックキッズニュースでも紹介してきたように、多くのオミクロンでのコロナのこどもさんは、小児科でおなじみのインフルエンザやRSウイルス細気管支炎、アデノの咽頭結膜熱、ロタウイルス腸炎やノロ腸炎などに比べたらだいぶん弱いと感じています。コロナでこどもがなくなったとニュースがありました。もちろんオミクロンのような風邪みたいなもので健康な子供までがなくなるのはたしかにおどろきで大変残念なことだと思いますが、コロナワクチン接種後でも子供が1人亡くなられています。また子供だからといって残念ながら死なないわけではなく、他の感染症、例えばインフルエンザですが、2009年の新型インフルエンザウイルス大流行では、国内で41人の子どもが命を落としているのです
奈良県立医大公衆衛生学教室が2017/18年シーズンと2018/19年シーズンのインフルエンザ関連死亡数とオミクロン流行期のコロナ関連死亡数を比較検討。その結果を8月4日に大学のホームページ上でプレスリリースを行っています。
それによると、インフルエンザと比べた COVID-19 の人口 1,000万人あたりの年間死亡者数は、0~9 歳で は 30 人少ないこと(しかもこの年代でのコロナワクチン接種は2割も満たない状況でです)、もちろん70歳以上の高齢者ではコロナの方が死亡数が多いが、69歳以下ではコロナがインフルエンザに比べて死亡数が多いとは想定しがたい、だからやはり高齢者に優先づけたコロナ対策が必要なのではないか、と結論付けています。現在いまだに日本で行われている、こどもに給食での黙食の強制(大人はぺちゃくちゃマスクなしで会食しているのに)、手荒れのある子までへの徹底した手指消毒やマスク強要(マスク手指消毒なんかで感染コントロールできるわけないでしょ、相手はエアロゾル感染メインのウイルスが相手だよ)、クラブ活動の禁止(大人はもうすでに相撲や野球、コンサートなんか客入れてガンガンやっているのに)、一人でもコロナが出たら修学旅行は禁止とおどされ(盆休みにはみんな久しぶりにお里帰りしたでしょ)・・・など、訳のわからない感染対策などを強いている現在の状況をあざ笑うかのような結果でした。そしてこんな大事なプレスリリースなのに、ネットでみても8月20日に関連記事が毎日新聞ででているだけ、こともあろうか奈良県のホームページにはなんと、「70歳以上のコロナの死亡率が高かった」という、当大学の意図を完全に曲解、ミスリードを狙うかのような見出しで紹介されていたもようです
話はまたそれてしまいましたが、ここまでこどものコロナが弱体化していることを眼近にみると、そんなオミクロンみたいなものに本当にmRNAワクチンのような強力なワクチンがいるのか?と個人的には正直すっきりしません。しかしテレビとかにでてくる医療関係者や専門家たちをみてもわかるように、医療関係者の大部分はワクチン接種推進派であり、そもそも9月には国はこの年代にも保護者がお子さんへのワクチン接種を受けるように努めなければいけない、いわゆる予防接種法第9条の「努力接種」規定が適応されます。そうなれば強制接種に違和感を感じている私でも保護者の皆さんやお子さんに受けさせるように努めなければなりません。せめてこどもへのワクチン接種は有効性とかよりも安全性を重視していただきたいと、個人的には思います。すでに有効性に陰りがでたmRNAワクチンのような強力すぎるワクチンを努力接種にするくらいであれば、できれば乳幼児の定期予防接種で使用されている不活化ワクチン(KMバイオが開発中)やすでに認可されている遺伝子組み換えたんぱくワクチン(ノババックス社・武田製「ヌバキソビッド」や塩野義製薬なども開発中)の乳幼児・児童に対する治験を早くやって使えるようにしていただきたいと思います。そして国においては、ワクチン接種後の副反応疑い事例の徹底的な解明と、疑い事例にも積極的に予防接種健康被害救済制度の申請受理をしてあげて、できるだけ認定していただきたいと思います。現在のように関連性がはっきりしないので申請却下、とかどんどん食らわされていたら、我々接種者もお子さんたち非接種者も安心してワクチンできません。そのこともありmRNAワクチンの頻回接種にすこしでも違和感を感じている私がmRNAワクチンを自分のかかりつけのこどもさんに自分の病院内でやることはないですが、不活化ワクチンや遺伝子組み換えワクチンであれば違和感も薄れるし、管理もたやすいので、接種の検討をしたいと思います
私が敬愛し、現時点では国内の免疫学の世界では最も実力がある学者として知られておられる慶応大学の吉村昭彦先生も、自身の教室のホームページのブログで、「ワクチンは逆説的になるが感染しないと効果を発揮しない。ワクチンは感染しないように打つのではない」と力説されています。私自身、医療関係者として3回のコロナワクチンの優先接種を早々としていただき、そのうえで日ごろの診療でコロナを含む感染症のこどもさんたちから常にいっぱい雑多なウイルスの暴露を受け、免疫が落ちないようにブーストしていただいているからこそ、メタボですがコロナ診療をしていても風邪一つ引いたことがありません。吉村教授のこのお話は「さればこそ」と納得できました
以上より、現時点では、できれば安全性の高く不安も少ない不活化ワクチンか遺伝子組み換えタンパクワクチンを使い、ワクチンをこどもで2回~3回完了した数週間後、あるいはコロナ感染歴がある人達から順次感染対策を緩めてゆく。ワクチンをしたらコロナに感染しても重症化しないと専門家もテレビやツイッターで力説しているので、それを信じてワクチンでコロナに対する免疫をプライミング後にコロナに自然に何度か軽くかかってブーストする。そのようにして国民全体がコロナに対する抵抗力をつけていった暁には、ほかの国のように日本からコロナ禍がなくなり、コロナ以前の世界が戻る。これが一町医者の希望です