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シックキッズニュース 10月号 (NO.41)10月から予防接種ルールが2つ変更されます。そのポイントは?

シックキッズニュース 10月号 (NO.41)10月から予防接種ルールが2つ変更されます。そのポイントは?

大分県では台風10号が通過していった9月9日を最後にコロナ陽性者は出なくなりました。GoToトラベルもあり、シルバーウイークには観光地も人であふれたと報道ではありました。秋に流行する喘鳴、鼻汁、微熱を伴うライノウイルス様の感染症のこどもさんも感染対策のおかげで例年ほどではありません。引き続き疲れない程度に感染対策頑張りましょう。

さて、10月からお子さんの予防接種のルールが変わります。一つは待望のロタウイルスワクチンの定期接種化。もう一つは、これも待望の接種間隔の簡素化です。今月は予防接種の変更にフォーカスを当てて解説いたします。

 

今月のフォーカス 10月から予防接種ルールが2つ変更されます。そのポイントは?

 

今回の予防接種ルール変更のポイントは2つです。

  • 1.今年8月以降に生まれた赤ちゃんのロタウイルスワクチンが定期接種化されました。
  • 2.予防接種間隔のルールが大幅に簡素化されました。

 

ロタウイルスワクチンが定期化されます

ロタウイルスは、主に乳幼児に感染して、「ロタウイルス胃腸炎」という激しい胃腸炎をおこします。主に冬から春にかけて流行し、頻回の嘔吐と米のとぎ汁様の激しい下痢を引き起こします。昔、コレラが日本でまだ流行していたころは、コレラを疑い便のコレラ菌の分離・培養を試みて、検出されない場合、「仮性コレラ」という名前を付けられていました。コレラに負けずとも劣らないくらい激烈な米のとぎ汁様の下痢を起こす感染症です。秋から冬にかけてこれからの季節、おなじみ「ノロウイルス胃腸炎」も流行しますが、こどもにおいては、正直、ノロとか全く相手にならない印象があります。

実際ロタウイルスワクチンが開発されるまでは、世界中で5歳になるまでにはほぼすべてのこどもがロタウイルス胃腸炎に罹患。その5人に1人は病院受診し、そのうち約10人の1人(全体では60人に1人)が入院加療を必要とし、罹患者の300人弱に1人が死亡すると推定されました(もちろん死亡例の多くは開発途上国ではあります)。自分の印象ではロタウイルス腸炎を診断された場合、経口補水療法でのりきれるような甘いものではなく、多くのこどもは輸液療法は最低必要で、輸液しても最後にはやっぱり入院しましょうか、となっていた記憶があります。ロタが流行していた時は、入院病棟はロタウイルス胃腸炎のこどもであふれていました。嘔吐・下痢、脱水だけではなく、胃腸炎関連けいれんを起こすこともしばしばです。私の実際経験したところでは、大分こども病院・大みそかの当直の夜、除夜の鐘が鳴るころ、病棟でけいれん起こした、外来でけいれんを起こした・・・と、病院のあっちこっちでけいれんが発生。拘束業務を終えてようやく帰宅しようとしていた同僚にも手伝ってもらい、階段を上ったり下りたり、大ごとだったことも経験しています。けいれんで済めば御の字。場合によれば脳炎も発症することもあり、つい最近までは大変恐れられたウイルスでした。

2011年11月に単価のロタウイルスワクチン「ロタリックス」が、2012年7月からは5価ロタワクチン「ロタテック」が日本でも使用できるようになりました。経口生ワクチン(弱毒化したロタウイルスを甘いシロップに混和したものを飲む方法)で、生後2か月くらいから1か月ごとに2回から3回接種します。9月までは任意接種だったので、いずれのワクチンを選択しても3万円以上の料金がかかっていました。

接種料金はかかる分、その有効性は高く、ロタウイルス胃腸炎による入院や救急部受診のリスクを検討した30の観察研究の結果から、時間外の予定外受診や入院などのリスクを82%も減少させたといわれています。感染を完全に防ぐことはできないかもしれませんが、かかっても軽い嘔吐下痢症状で脱水症を伴うことがなくなり、明らかに重症化を減らしてきました

このため、2019年3月の時点で、すでに97か国が定期接種の導入をきめていました。日本でも遅ればせながら今年の9月までは任意接種で多額の接種費用を要していましたし、例えば腸重積症などの副作用が出ても、国は直接関与しなくても済むようなシステムでした。大変有効性が高いので、こどもの数が少なくコストがあまりかからない地方では、公的助成が受けられるところも増えてきました。それに全く公的助成がない大分市でも、地域クーポン券を利用していただき、ほとんどのあかちゃんが自費でロタウイルスワクチンを接種していただけるようになりました。おかげで、ロタウイルスワクチン導入後からロタウイルス発生報告数は激減(下の図参照)。昨年くらいから報告数はなくなってきました。ロタウイルス胃腸炎でこどもや小児科医が苦しんでいた時代は過去のものとなりました。

この度、10月から日本でもようやく他の国と同様、ロタウイルスワクチンの定期接種化となります。対象は今年の8月以降に生まれた赤ちゃんです。ワクチンが定期化されると、接種費用はすべて公費、何か副反応が起きたとき、ワクチン接種の因果関係があると認められれば、任意接種に比べて大変優遇されて保証されることになります。いづれにしても喜ばしいことだと思います。残念ながら7月末までに出生された赤ちゃんは、ロタウイルス接種が終了するまで任意接種となり、接種費用は自費となります。

 

予防接種間隔が他の国と同様に簡素化されます

御子さんを持たれた方は感じておられることと思います。予防接種の種類、量ともに増え、複雑煩雑で何がなんだかよくわからない。普段から予防接種を打っている小児科医でさえ、こんがらがることが多い。しかも市町村からの委託業務であるため、医師の裁量が入る余地が全くありません。ちょっとでも間隔や年齢、接種量などを間違えると、たとえ医学的には何の問題がなくとも、過誤接種とマスコミに通告され、市民に無用の心配をあたえることとなります。例えば3歳の誕生日のこどもさんに日本脳炎ワクチン0.25mLを接種した(3歳からは0.5mL接種。2歳11か月のこどもに接種する量が0.25mL。医学的に見てどこに問題があるのか)など、取るに足らないことでも報道されてしまいます。

そもそも、人間の体は生まれた瞬間から毎日ウイルスや細菌をはじめ微生物にさらされており、ワクチンも(かなり大雑把になりますが)それら病原体と同様と考えると、医学的にはこれまでみたいに分刻み、ミリ単位のようなくだらないルールは無用なのです。特に予防接種が煩雑になってから、小児科学会は、接種間隔を他国のように早く簡素化するよう前から強く国に要望していたことですが、ようやく今回、他国と同様に接種間隔が簡素化しました。

簡単に言えば、注射生ワクチン同士でなければ間隔に制限がなくなりました。注射生ワクチンどうしの間隔はこれまで通り27日以上は開けます。もちろん、不活化ワクチンや注射・経口生ワクチンを問わず、同じワクチン同士の間隔や接種開始時期はこれまで通りのルールです。下の図は堀向健太先生の記事から分かりやすいので転載させていただきました。

これまではどうだったのでしょうか?注射・経口を問わず、生ワクチンを接種したら次のワクチンの種類にかかわらず絶対に27日間以上の間隔が必要でした。また不活化ワクチンをしたら、次のワクチンの種類にかかわらず絶対に6日間以上の間隔が必要でした。

これからは、まず不活化ワクチンを接種した場合、別のワクチンであれば連日接種をしてもいいことになりました。注射生ワクチンを接種しても、次が不活化ワクチンやロタウイルスのような経口生ワクチンであれば連日でも行えることになりました。注射の生ワクチンを接種するときだけ、直近の4週間に注射の生ワクチンをしていないかを注意して確認後に接種すればいいことになりました。下の図は厚労省からの資料から転記させていただいています。

では何か注射生ワクチンなのでしょうか?生後5-6か月で行うことが多い結核予防のBCG(いわゆるハンコ注射)。1歳の誕生日と年長時に2回接種が推奨されているはしかと風しんの予防のMRワクチンとおたふく風邪予防のおたふくかぜワクチン、1歳の誕生日と1歳半前後に2回接種することが推奨されている水ぼうそう予防の水痘ワクチンの4つです。あまりいたがらないワクチンで高い予防効果が期待できるもの、と考えればよいでしょう。値段も高いですが、幸いにも定期接種なので無料です。

今回の改定でさっそく恩恵を受けるのがインフルエンザワクチンを受ける乳幼児です。インフルエンザワクチンは「不活化ワクチン」です。なので、インフルエンザワクチンどうしの間隔を最低1週間あけることだけを考えれば、他のワクチンをいつ打ったかどうか全く考慮しなくてよいことになりました。

たくさんのワクチンを接種しなければならない6か月以上の乳幼児には、他のワクチンの兼ね合いがあり、インフルエンザワクチンの接種を逃してしまうこともありました。またところによっては予防接種過誤が怖くて乳児には接種お断り、というところもあったようです。これからは前後に他の種類のワクチンを接種したことがあっても、する予定があっても無関係にインフルエンザワクチンができるようになりました。いままで乳児には接種を控えていた医療機関も、今回の改定を機会に積極的にインフルエンザワクチンを勧めるようになるでしょう。乳児でもインフルエンザ脳炎や肺炎など、恐ろしい合併症が起きえますので、乳幼児こそ予防接種で守ってあげないといけません。そういう意味でも、待望の改定となりました。

 

あとはおたふく風邪ワクチン定期化と子宮頸がんワクチンの積極的勧奨再開を

ワクチンに対する濡れ衣、マスコミたちのあおり、ワクチン被害者訴訟の影響もあり、2000年代くらいまでは、ワクチン後進国の御三家は「日本、北朝鮮、アフガニスタン?」で、そのうちどこが筆頭家老か??と世界に物笑いにされてきた我が国のワクチン事情ですが、2000年後半から、2006年MRワクチンの中学生(3期)と高校生(4期)を設定しMRワクチン2回接種化、2009年乾燥細胞培養ワクチンによる日本脳炎ワクチンの再開、2012年ポリオ不活化ワクチンへの変更後、4種混合ワクチンとして定期接種化、2013年ヒブワクチン・肺炎球菌ワクチン・子宮頸がんワクチンの定期接種化、2014年水痘ワクチン定期接種化、2016年B型肝炎ワクチン定期接種化と、一気に先進国レベルのすぐそこまで追い上げてきました。それとともに麻疹、風しん、水痘、細菌性髄膜炎、菌血症などなど、ワクチンで守れる感染症(VPDといいます)の発症が激減しました(下図:水痘ワクチン導入前後の水痘発生数の変移)。素晴らしいことです。

あとはおたふく風邪ワクチンの定期接種化子宮頸がんワクチンの積極的勧奨の再開です。おたふくかぜワクチンに関しては、MMRワクチン(おたふく風邪ウイルスは卜部株使用)で無菌性髄膜炎を多数(10万人のこどもに接種されに16発症して1991年に接種中止された痛い経験があります。今のおたふく風邪ワクチンには安全な星野株や鳥居株が使用されており、副作用に関してはまず心配ないといわれています。しかし訴訟になったことも影響して、国はしばらくはかかわりたくないと考えていると思われます。しびれを切らした自治体は、おたふくかぜ任意接種費用を助成するところも増えてきました。大分市も2019年4月から1歳のお子さんに1回目だけ3000円助成してくれるようになりました。子育てクーポンも使えますので、実質数百円で接種できるようになり、接種率は徐々に上がってきました。子宮頸がんワクチンの濡れ衣騒動に関しては、今年の6月号のシックキッズニュースに歴史を含め詳細に記載していますので、ここでは触れません。眼を通していただけますと幸いです。

診療内容:小児科・アレルギー科・予防接種・乳児健診
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