ブログ
シックキッズニュース 9月号 (NO.40) 9歳の約75%がアレルギー検査で陽性!

シックキッズニュース 9月号 (NO.40) 9歳の約75%がアレルギー検査で陽性!

災害級の猛暑の夏でまだまだ暑い日々が続いていますが、皆様体調はお変わりないでしょうか?さて、近年日本の小学生にアレルギー性鼻炎が増えてきていることをご存知ですか? 8月5日、日本中がコロナ、熱中症で大騒ぎしている裏で、「日本人の9歳児の75%のこどもがアレルギー検査で陽性!」だったと、国立成育医療センターが行っている「成育コホート」で明らかにされました。今月はその成育コホートの結果と、減債進行中の食物アレルギー予防の為のアトピー性皮膚炎積極的治療の臨床研究「PACIスタディー」にフォーカスします。

 

今月のフォーカス 9歳の約75%がアレルギー検査で陽性!

 

1.「成育コホート研究」とは? 

まず、「成育コホート研究」とは何でしょうか? これは、東京の国立成育医療センターが、2013年から2年半にわたり、同施設で分娩した1701名の妊婦を登録、出生した1550人の児と母親について、半年から1年ごとのデータを質問票で長期間追跡調査している研究です。2009年から2011年には5歳児とその母親、そして4年後の2013年から2015年には9歳児とその母親の採血検査を含む健診と遺伝子データの収集をしました。病気で病院を受診したこどもではなく、成育医療センターで出産したいわゆる一般集団(大病院なので、偏りはあるかもしれません)

途中経過ですが、成育コホート研究から、アレルギーの原因の解明に関して、短期間の間に、これまでの常識を覆すような目を見張る研究結果が報告されています。その一例として、

① アトピーの両親から出生した児に、出生直後から保湿剤を塗布したら、アトピー性皮膚炎発症のリスクが3割抑えられ、世界で初めてアレルギー疾患の発症予防法を発見報告(2014年)

② 離乳食早期の卵を微量(卵黄1/4個程度から)摂取開始することで、卵アレルギーの発症を予防することができた(2016年:PETITスタディ)

③ 生後2歳までに抗菌薬使用歴があると、5歳の時にアレルギー疾患があるリスクが高い(2018年)

その他、成育コホートではなくエコチル調査からですが、2019年に100%の家庭のこどもの寝具から卵のアレルゲンの成分が検出され、ダニのアレルゲンよりも高濃度で検出されたことも報告されています。このシックキッズニュースでも以前、離乳期早期の鶏卵摂取の鶏卵アレルギー予防効果の話寝具の卵アレルゲン検出の話は紹介しました。

同施設からは、2017年からPACI(パッチー)スタディーといって、離乳食を始める前の湿疹を治すことで生後6か月の時の卵アレルギーが予防できるかを明らかにする研究を行っており、その研究成果が注目されています。

また今話題の新型コロナ関連では、気管支喘息を持っている人は新型コロナ感染者が優位に低く、アレルギー持ちの患者さんは、新型コロナウイルスが感染につかう受容体があまり出ていない可能性があることも報告しています。

このように、世界アレルギー機構から中核的研究機関(center for excellent)に指定されている東京の国立成育医療センターのアレルギーセンターは、成育コホート研究やエコチル調査をもとにアレルギー関係のためになる研究成果をどんどん出しており、その流れで今回の「9歳の日本人の4人に3人がアレルギー検査陽性」という驚くべき報告につながったのです。

 

2.日本人の9歳児の75%が何らかのアレルギー検査で陽性

下の図をみて下さい。成育コホート研究によれば、5歳児のアレルギー検査で何らかの検査陽性のこどもがすでに57.8%と半数以上もいましたが、9歳になるとその値は74.8%と4人中三人の確率に上がりました。うち、ダニ・スギ陽性者が最も多く、5歳児で42.1%、9歳児で54.3%と半分をこえています。日本で特に問題になっているスギも、5歳児で32.8%、そして9歳児ではダニより多い57.8%の確率で陽性でした。

成育医療センタープレスリリースホームページより

もちろんワイドショーで喧々諤々やっているコロナのPCRと同じですが、アレルギー検査が陽性だからといって症状があるわけではありません。5歳児と9歳児で、過去1年に実際の鼻炎症状が出た割合は、下の図のように5歳児で10.6%、9歳児では31.2%でした。しかし、小学校に上がるころには立派なアレルギー性鼻炎の子が10人に1人、小学校中学年ですでに3人に一人、3倍に増加しているとは驚きです。小学生で、「かぜだよ」といわれてだされた薬飲んでもなかなか治らない、やめたらすぐに繰り返す場合、アレルギー性鼻炎の可能性は十分に考えなくてはなりませんね。

成育医療センタープレスリリースホームページより

 

3.アトピー性皮膚炎の経過には4つのタイプがある

先月8月に発表された成育コホート、2つ目の成果ですが、アトピー性皮膚炎は4パターンの経過をたどることが明らかになりました。すなわち、

  • アトピーがほとんどないタイプ:62.7%
  • 乳幼児期のみで終わるタイプ:17.6%
  • あとで出てくる遅発のタイプ:9.5%
  • 乳幼児に発症したものが治らずに後々まで続くタイプ:10.1%

です。日本人でアトピー性皮膚炎と診断されるこどもは、38.3%と3割を超えますが、その半分弱は2-3歳までになおるタイプでした。一方、大人になってかも問題になる子も、アトピーの診断を受けたこどもの半分はいるということになります。アトピー性皮膚炎は、かゆみなど大変苦しい病気ですが、食物アレルギーや気管支喘息、アレルギー性鼻炎など他のアレルギー疾患の先駆けとなりアレルギーマーチをひき起すといわれています。

 

成育医療センタープレスリリースホームページより

4.喘息症状も5つのタイプに分かれることが明らかになった

アトピー性皮膚炎だけでなく、ぜんそくの経過も複数のタイプがあることがわかりました。喘息がない割合が43.7%、乳幼児期早期だけであとはゼコゼコ言わないタイプが32.2%、幼児期に発症してその後改善する人が8.6%だった一方、乳児期に発症してそのままずっと持続して症状が残るタイプが9.2%、学童期に発症するタイプが6.2%でした。この9.2%+6.2%で全体の15%強が、いわゆる気管支喘息として後々まで残るとの結果でした。

成育医療センタープレスリリースホームページより

5.日本のこどもでアレルギー疾患増加が改めて明らかに

21世紀に入り、日本人、特にこどもでアレルギーの疾患が大変増えているのではないか、と予想はされていましたが、今回の成育コホート研究の貴重な研究結果で、あらためて日本人のこどもにアレルギー疾患、特にアレルギー性鼻炎が激増しているエビデンスが示されました。しかも、各アレルギー疾患の経過も、たとえばアトピーは赤ちゃんの時だけ、といった単純ではなく、こどもによって経過がさまざまであることも明らかになりました。

今後、この研究をもとに、どうしてこどもによってアレルギーの経過が違うのか、どうすればアレルギーをこどものうちに改善できるのか、すでに2017年からPACIスタディ―が始められていますが、はやく明らかになることを期待します。

 

6. PACIスタディーとは

これまでの研究で、新生児からの積極的な保湿剤によるスキンケアがアトピー性皮膚炎をかなり予防できること、日本の赤ちゃんの寝具からダニよりも多い卵の成分が検出していること、生後6か月から卵黄1/4個レベルを食べていくことで1歳の時の卵アレルギーの予防ができること、など重要な知見が成育コホート研究やエコチル調査から得られました。これらのことから、湿疹や乾燥肌で皮膚バリア機能の低下している赤ちゃんは、寝具などに含まれている食べ物の成分が荒れた皮膚を通して食物に感作され、食物アレルギー発症要因になっていることが示唆されます。ということは、赤ちゃんの皮膚の乾燥や湿疹などによる肌荒れを、早期に徹底的に治療することで、アトピー性皮膚炎だけでなく、その後に起きる食物アレルギーや喘息、アレルギー性鼻炎などを予防できるのではないか、という仮説が成り立ちます。逆に言うと、食物アレルギーや喘息、アレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患の始まりは、出生後の湿疹、アトピー性皮膚炎から出発して「アレルギーマーチ」が進行してゆく、という仮説です。

この仮説を検証するために、国立成育医療センターが中心となり、PACIスタディーを、乳児期早期発症するタイプのアトピー性皮膚炎の乳児に、保湿剤(ヒルドイドソフト軟膏)だけでなく、積極的に抗炎症外用薬で皮疹を治療することで、生後6か月時点の食物アレルギー発症を予防するかどうかを検証する多施設での共同研究です。国立成育医療センターアレルギーセンターでは2017年7月31日から開始。国立成育医療センター以外にも、全国の15施設が参加。目標650名登録を目指しています。2020年8月初めまでに全国の633名の赤ちゃんが登録されました。九州には参加施設はありません。

パッチースタディーホームページより

簡単にながれを説明します(上の図)と、生後3か月ぐらい(生後13週)までの時点で、乳児早期発症タイプのアトピーと診断された赤ちゃんが主な対象です。参加希望の方は、国立成育医療センターにメールでお問い合わせします(おそらくもうすぐ申込終了)。全部で650人登録して、半分の325人は積極治療群、半分の325人は標準治療群にコンピューターでランダムに分けます。どの群に分けられるのかは、患者や医師は希望できずにコンピューターによる無作為選別です。どちらにも毎日2回全身に保湿剤は塗ります。積極治療群は、保湿剤に加え、最初から湿疹がないところを含めて全身にステロイド軟膏を1日2回追加で塗布します(顔面:アルメタ軟膏、頭皮:リンデロンVローション、他の首から下の湿疹:リンデロンV軟膏)。最初の2週間は毎日ステロイド全身塗布、その後は生後28週までステロイド軟膏塗布を週に2回に減らして全身に塗ります。もし2週間たったあとも湿疹があれば、その部分にはステロイド軟膏を1日2回消えるまで毎日ぬります。ない部分には週に2回ステロイド塗布となります。

いっぽう、標準治療群に分けられた赤ちゃんは、現在のアトピー性皮膚炎診療ガイドラインに沿った治療を行います。つまり毎日の全身の保湿剤2回に加えて、湿疹部位にはステロイド軟膏1日1回を消えるまでぬります。

参加者には毎週のアンケートと毎日の治療日誌を記載してもらいます。初診の時と最後の生後28週の負荷試験を合わせて計5回、共同研究施設の研究外来に受診していただき、アンケートや日誌の回収、診察、保湿剤やステロイド軟膏などの追加を行います。初回と最後に採血検査もあります。最後の生後28週に鶏卵負荷試験(全卵の約1/4個)を行います

PACIスタディーは生後28週で終了予定ですが、その後、このスタディー参加者で引き続きの研究に希望される方は、6歳まで食物アレルギーだけでなく喘息やアレルギー性鼻炎の発症も予防できるかを6歳までフォローするPACI ONスタディーも計画されています(下の図)。PACIスタディーのエントリーはほとんど済んでおり、5か月ほどで食物負荷試験にもってゆけるので、早ければ来年早々には結果の速報が出るとか思います。アトピー性皮膚炎の積極治療群に有意なアレルギー疾患発症の抑制効果がみられれば、どんどん増えてきているアレルギー疾患にたいして、乳幼児期の保湿剤+ステロイド軟膏の全身塗布という新たな戦術が加わることになり、日本発信の良質な臨床研究の結果が今から待ち遠しい気持ちです。

パッチースタディーホームページより

診療内容:小児科・アレルギー科・予防接種・乳児健診
tel.097-529-8833
診療時間
9:00~12:00
14:00~18:00
休診日:火曜日・日祝日

予約